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[MOM4512]修徳FW田島慎之佑(3年)_1年生から10番を背負うレフティが「6年分の阿吽の呼吸」で3戦連発弾!

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修徳高が誇る不動の10番、FW田島慎之佑(3年=修徳中)は3戦連発弾で決勝進出に貢献!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.5 選手権東京都予選Bブロック準決勝 修徳高 2-1 大成高 味の素フィールド西が丘]

 1年生から10番を背負ってきたレフティが、いよいよアクセルを強烈に踏み込んでいる。集大成となる最後の選手権で3試合連続ゴール。これまでの感謝を結果という明確な形で示し続けているが、いよいよやってくる一番大事な試合でこそ、自分が誰よりも輝いてみせる。

「チームのみんな、修徳のみんな、監督から家族から、全員が関わってきてくれたからこそ、ここまで来られたので、そこはみんなに感謝しつつ、しかも10番でずっと試合に出てきたのはチームメイトのおかげだと思っているので、最後は思い切り楽しんでやりたいです」。

 10年ぶりの東京制覇を狙う修徳高が誇るナンバー10。FW田島慎之佑(3年=修徳中出身)のさらなる躍動は、みんなで目指してきた最大の目標を達成するためには絶対に必要不可欠だ。

 それはチームメイトと6年を掛けて積み重ねた“阿吽の呼吸”が呼び込んだ一撃だった。大成高と激突したセミファイナル。幸先良く前半11分にMF大畑響道(3年)のゴールで先制した修徳は、そのままゲームリズムを掌握すると、20分には左右に揺さぶる形から追加点のチャンスを創出する。

 右サイドでボールを持ったDF山口春汰(3年)が左へ素晴らしいサイドチェンジ。「慎之佑が斜めに走ったら、自分が空くのはわかっていたので、練習通りに受けるというところで良い形でもらえました」と振り返るのは左サイドバックを務めるキャプテンのDF島田侑歩(3年)。まずは、イメージ通り。

「自分が内側に入って、島田が外で受けた時点で、自分はもう『中に入ろう』と思って、この前の大森学園戦で、自分の中でクロスボールからのシュートが気持ち良くなっちゃったので(笑)、『ここは行けるな』と思ってニアに入りました」(田島)「トラップした時点でキーパーとディフェンスラインの間にスペースがあったので、少し速いクロスを上げました」(島田)。ここも、イメージ通り。

 田島が得意の左足で合わせたボレーは右のゴールポストにいったん弾かれたものの、こぼれてきたボールに再び食らい付いた10番は、冷静にゴールネットへ流し込む。「あれこそいろいろ言わなくてもわかってくれる関係ですよね」と島田が話したように、修徳中時代から6年間を積み重ねてきた“左サイドの左利き”同士が織り成す、イメージ通りの一撃。貴重な2点目が修徳に記録される。

 1点差で迎えた終盤。ベンチサイドにいた田島には、吉田拓也監督からしきりに指示が送られていた。「もう最後の時間帯でどうしても失点したくなかったですし、『後ろを5枚にして、全員で守り切る』ということをずっと言われていましたし、個人的には『1対1で縦に行かれないように』という指示がありました」。

 スタンドからの応援もあって、ベンチからの声はピッチに届かない。アディショナルタイムの残り時間も指揮官から伝えられ、田島は懸命に声を振り絞って、チームメイトへ意図を伝え続ける。そして、タイムアップ。「終盤はキツかったですけど、全員がまとまってやれていたイメージだったので、失点する感じはなかったです」。全員で戦い抜いた修徳は2-1で逃げ切り、準決勝を突破。10番の攻守に渡る高い貢献度が、西が丘のピッチで際立った。



 今大会はこれまでになかったような得点も奪えている。前述した準々決勝の大森学園高戦では、右サイドからMF豊田海晟(2年)が上げたクロスを頭で合わせ、鮮やかなゴールを奪ったが、田島はヘディングが大の苦手。中学時代からのチームメイトでもある島田も、「自分も6年間一緒にやっていて、あんなヘディングのシュートを見たのは初めてでした(笑)。でも、慎之佑が凄く練習していたのも見ていましたし、一番近くにいたからこそ決めて欲しいという想いもあったので、前回ああやって決めてくれて、今回も決めてくれたので、頼りになると思います」と笑顔で言及する。

 準々決勝では右から、この日の準決勝では左から、クロスに合わせる形での得点。「自分の中でクロスボールからのシュートが気持ち良くなっちゃったので」という言葉には、この選手権での好調ぶりが窺えて、何とも頼もしい。

 田島にとって吉田監督は中高と指導を仰いできた言わば“恩師”のような存在。「ちょっと見た目的に怖いので、喋りかけづらい部分はあるんですけど(笑)、話したら面白い監督ですよ」と笑いながらも、「自分は修徳中から監督と6年間やってきているので、そこには強い気持ちがありますね」と言及するなど、もちろん感謝の気持ちは強い。決勝での“胴上げ”の可能性を問われると、「したいですね。面白いので、やってみたい感じはあります」とのこと。このあたりにも長い時間を重ねてきた信頼関係が透けて見える。

 指揮官の“胴上げ”を実現させるためには、もちろんあと1つの勝利が必要だ。ファイナルへ向けて、田島は力強くこう言い切った。「ここまでずっと得点を決めているので、最後に決勝でも決めて、自分がチームを全国に導きたいという想いはありますし、どんな形でも得点に絡むことができればいいと思っています」。

 泣いても、笑っても、あとは決勝の晴れ舞台のみ。10番を背負い続けてきた3年生アタッカーの東京ラストダンス。西が丘の左サイドを華麗に舞う田島の一挙手一投足は、絶対に見逃せない。




(取材・文 土屋雅史)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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