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[MOM4528]大手前高松FW山村音喜(3年)_キャプテンでエース。責任感を力に変える男が全国導く決勝ゴール!

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大手前高松高FW山村音喜(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.11 選手権香川県予選決勝 高松商高 0-1 大手前高松高 香川県総合運動公園サッカー・ラグビー場]

 どれだけ良いサッカーをしても、タレントがいても全国大会に行けなければ多くの人に知って貰えない。選手権出場を逃した昨年と一昨年は、大手前高松高はこの事実を痛感してきた。「この一週間、川上先生に『優勝かそれ以外しかない』という言葉を言われて大事にしてきた」と口にするのは、FW山村音喜(3年)。キャプテンとエースという2つを託された男が決勝の大舞台でチームにタイトルを引き寄せた。

 この日、対峙した高松商高は一昨年に0-1で敗れた相手。今年2月の新人戦も決勝で敗れており、相性は良くない。「相手は凄く頑張ってくるチームで、自分たちのシステムに対応してくる柔軟さもある。大手前は高松商業を苦手にしてきたので、絶対負けられなかった」。そう振り返る山村は1トップで中央に張るのではなく、スペースに流れてボールを引き出そうとしたが、相手の守備を崩しきれず前半はシュート0本に終わった。

 決定機に絡み始めたのが、後半半ばから。後半10分にMF洲脇海輝(2年)が入り、3-4-2-1にシステムを変更。「後ろを4枚から3枚にしたことで、上手く相手のリズムを崩せた」と振り返った通り、相手に傾き始めていた流れを引き戻す。山村としても中央が厚くなったのは好都合。17分には左サイドでのタメからクロスを上げるなど、スペースに流れた後の怖さが出始めた。

 25分には左サイドの高い位置から、DF東山諒大(3年)がゴール前にロングスローを展開。ゴール前にこぼれたボールを左足で押し込んだが、シュートはDFのブロックに阻まれた。29分には2度目のチャンスが訪れる。右中間で得たFKをDF林勇仁(2年)がゴール前に展開すると、こぼれ球からMF糸瀬勇哲(3年)がシュート。この一撃はDFに阻まれたが、「こぼれ球は練習でずっと意識してきた」という山村が素早く打ち返すと相手に当たりながらも、ゴールに吸い込まれた。山村の得点が決勝点となり、大手前高松が3年ぶり3回目の全国行きを掴んだ。

 前線で頼もしい姿を見せる山村だが、これまでは満足の行くプレーができていたとは言い難い。入学直後に腰の疲労骨折をしたため、1年目は半年以上プレーできなかった。2年目はAチームに関わっていたが、途中出場がほとんど。高松東高に敗れた準決勝はベンチからも外れ、涙を流す先輩たちを見守るしかできなかった。

 迎えた最終学年はキャプテンに抜擢。ポジションもこれまでの中盤から最前線にコンバートされた。狙いについて川上暢之監督はこう話す。「1トップは器用な選手でなければ務めらない。身体が強いだけでなく、スピードもなければいけない。山村は体格が良いし、平均値が高い。それに、一番FWらしい気質を持っている」。

 ドリブルやパスで攻撃のリズムを作るプレーが山村の真骨頂。FWになってからは筋トレにも力を入れてポストプレーを磨くだけでなく、裏へのアクションも増やしてきた。これまでは後半になると足をつっていたが、この日は後半32分にピッチを退くまで全力で走り続けるなどタフさも加わっている。自身もこの一年での成長に手応え十分だ。「この1年で責任感が一番強くなった。Aチームで試合に出ているし、キャプテンも任されているので色んな責任感を感じてきた。それがマイナスではなく、プラスにできたから良いチーム作りができたし、個人としても良かった」

「全国でも自分たちのスタイル変えずに、ピッチで躍動したい。自分たちのサッカーをして、ビビらずのびのびやりたいです」。そう意気込む山村が全国でも存在感を発揮出来れば、チームの勝機が見えてくる。

(取材・文 森田将義)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
森田将義
Text by 森田将義

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