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[選手権]悪夢の総体初戦敗退から「変わった」V候補、青森山田「毎試合毎試合強くなっていくチームに」

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 優勝候補の一角、青森山田に油断はない。21日、第90回全国高校サッカー選手権の組み合わせ抽選会が東京都内で行われ、15年連続出場の青森山田(青森)は高知県代表の土佐と初戦を戦うことが決定。09年度全国大会準優勝でMF柴崎岳を擁した昨年は3回戦で涙を呑んだ「北の優勝候補」が悲願の選手権日本一に挑戦する。

 悪夢を糧にしたチームは全国で戦う準備ができている。同じく優勝候補に挙げられていた今夏の全国高校総体では武南(埼玉)に0-1で敗れまさかの初戦敗退。MF差波優人主将(3年)は「自分たちで崩れて、やったことのないようなプレーをしてしまった。フワフワした気持ちで入ってしまった」と悔しがる。明らかな油断。その後、大黒柱の差波に頼り過ぎていた感のあったチームに対して黒田剛監督は、差波をBチームに落として他の選手たちの自立を求めた。一週間後、Aチームに復帰した差波は姿を変えて黙々とトレーニングに励むチームメートたちの姿を目にする。「みんなでいい緊張感をもっていて、自分も驚きました。ビックリしたと同時にうれしかった。負けてよかった訳ではないけど、あの負けは大きかった」。自滅して墜ちた強豪は受け入れ難いような屈辱の敗戦をきっかけに変化した。

 元々実力の高さは疑いようがない。昨年の柴崎や清水入りしたGK櫛引政敏、一昨年のMF椎名伸志(現流通経済大)のようなずば抜けたタレントはいないが、高校年代の全国リーグ、高円宮杯プレミアリーグイーストでは日本クラブユース選手権優勝の東京Vユースや浦和ユースに黒星をつけるなど静岡学園や流通経済大柏を上回って高校チーム勢トップの4位につけている。これまではプリンスリーグ東北で絶対王者として君臨。緊張感の高い試合を経験することが少なかったが、高円宮杯の形式の変わった今年は春先からJクラブユース勢など強豪に揉まれて、格上相手の試合で勝利と敗戦を繰り返しながらその成長の度合いを早めている。

 特に自信を持っているのが高速カウンター。「嫌というほどにやってきた」(差波)というほど徹底してきたカウンターで強豪たちのゴールをこじ開け、差波はボランチながら同得点ランキング首位タイの10ゴールをたたき出している。昨年の経験者であるCB舛沢樹(3年)やU-17W杯日本代表DF室屋成縣翔平(ともに2年)らの堅い守りから差波やFW林雄紀(2年)、石井大樹(3年)らが相手ゴールへとなだれ込む。「ここぞ、という感覚ができているというか、トップスピードで狙ったところにボールが出てくるようになった」と手ごたえを口にする武器、そして油断のない今回こそ全国舞台で勝利を重ねるつもりだ。

 差波は今大会に懸ける思いを口にする。「昨年は岳さん(柴崎)がいて、岳さん目当てにいろいろな人が見に来てくれた。大観衆の中でのプレー、歓声は気持ちよかった。そして1年のときはベンチで国立を経験して、(後半ロスタイムに追いつかれた準決勝の)関一(関西大一)戦のどよめきや歓声は忘れたことはない。今年はスーパースターが山田にはいないけれど、全員でスライディングしていっぱい走ってみんなで勝てればいい。準優勝というすばらしい結果に満足することなく、もう1個上の優勝、これへ向けて、毎試合毎試合強くなっていくチームにできれば優勝へ近づいていけると思う」

 初戦の対戦相手は今夏の全国高校総体にも出場している高知の好チーム、土佐に決定。攻守に粘り強く接戦を制して勝ち上がってきた相手だ。対して差波は「相手は気にしていなかった。自分たちは毎年出ているけれど、受け身にならないようにしたい。やってきたことを貫けばどの相手にも絶対に勝てる」と前を向いた。夏に見せた姿はもう見せることはない。苦い敗戦をきっかけに成長した青森山田が今回こそ頂点に立つ。

[写真]V候補・青森山田のMF差波主将(左)と土佐GK志和主将

(取材・文 吉田太郎)
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