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[大学選手権]「我々はチェルシーでいこう」福岡大が高さ、強さ、速さで“バルサ”明治大を沈める

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[12.22 大学選手権準々決勝 明治大2-4福岡大 川口]

 平成24年度 第61回全日本大学サッカー選手権大会は22日、準々決勝を行い、九州王者の福岡大と関東2位の明治大との一戦は、FW田中智大(4年=福岡U-18)の2ゴールなど前半に4得点を奪った福大が4-2で勝利。阪南大と戦う準決勝(24日)へ進出した。

 ボールを常に支配していたのはMF三田啓貴(4年=F東京U-18、FC東京内定)らJ内定4選手を擁する明治大だった。だが、前半だけで4ゴールを叩きだしたのは九州の雄・福大の方。それも初戦で負った足首の負傷によってエースFW清武功暉(4年=大分U-18、サガン鳥栖内定)がベンチだったにも関わらずだ。

 乾真寛監督は「明治さんのボールの回し方だったりというのは、いわゆるバルサスタイルであるので、我々はチェルシーで行こうと。(巧さがなくても福大には)高さと強さと速さと違う要素で勝負できるものはある。それがきょうは鋭い形で出た。Jリーグを見渡してもウチくらい大きな選手が揃っているチームはない。今年はこれだけ高さがある。スケールの大きさとか、高さとか日本にない良さを持っている。それを全面に出して戦っていきたいと思います」。

 前半6分、先制点はロングスローからだった。右ロングスローをMF田村友(2年=九州国際大付高)が後方へそらすと、中央の田中が右足ボレーで先制ゴールを叩き込んだ。2点目もセットプレー。今度はMF平田拳一朗(3年=高川学園高)の右FKから田中が頭で合わせて2-0と突き放す。明治大は怯まずにボールを動かして反撃するが、福大は3点目もセットプレーからもぎ取った。27分、平田の右CKをGKがパンチングでクリアするも小さく、これをFW岸田和人(4年=大分U-18)がクロスバー直撃の右足シュート。跳ね返りを拾ったCB大武峻(2年=筑陽学園高)が豪快な右足ボレーで決めて3点差とした。

 福大は先発メンバーの半数以上が180cm超の長身で、OBのMF藤田直之(現鳥栖)のように、35m級のロングスローを投じる選手も188cmの大型CB大武ら3、4人いるという。その身体能力の高さを最大限に活かしたサッカーで3点先取した。そして42分には前線からプレッシャーをかけた岸田和が相手ボールをチャージ。こぼれ球を判断良く左足で振りぬくと、ボールはGKの頭上を越えてゴールへと吸い込まれた。パスで崩して奪った華麗なゴールではない。それでも相手を落胆させるに十分な一撃で強豪対決は意外な点差がついた。

 後半のシュート数は明大の9本に対して福大は1本だけ。守備を固める福大に対して明大は三田やMF岩渕良太(4年=F東京U-18、松本山雅FC内定)、MF和泉竜司(1年=市立船橋高)がダイレクトのパスを交えながら左右へボールを動かすと、右の小川大貴(3年=磐田ユース)と左の八塚利朗(3年=東京Vユース)の両SBが絡んでクロスまで持ち込んでくる。だが「持たれても最後やられなければ勝てる。自分たちの勝ち方は泥臭いですけど、今、自分たちの力を出すことが大事」というCB牟田雄祐主将(4年=筑陽学園高、名古屋グランパス内定)と大武の両CBら福大の砦は高く険しく、簡単に跳ね返されてしまう。

 明大は圧倒的にボールを保持していたが、懐に切れ込むようなパス、楔を入れることができず、1点を取るまでに時間を要してしまった。後半34分、三田の絶妙な左クロスをDFを振り切って飛び込んだMF上松瑛(3年=洛南高)が右足で合わせて1-4。そして後半アディショナルタイムには三田がPAへ斜めに飛び込んできた八塚にスルーパスを通す。ようやく見せた相手DFのギャップを突く攻撃から、最後はラストパスをFW阪野豊史(4年=浦和ユース、浦和レッズ内定)がワンタッチでゴールへ沈めて2点差とした。だが反撃もここまで。福大がFW永井謙佑(現名古屋)や藤田らを擁した09年度以来3年ぶりの準決勝進出を決めた。

 福大の現4年生にとっては3年前の決勝で敗れている明大とのリベンジマッチ。乾監督は「前日にマンUが強い気持ちでシティに借りを返すという(マンチェスターダービーの)映像を見せて、ぐっと力が入ったと思う。そのへんの勝負強さは痺れるくらい。高い集中力だった」。選手たちにとっては技術で上回ることよりも勝つためにひたむきに戦い、そして勝ち切ることへ向けたメッセージとなった。牟田は「(普段)映像見るのもチェルシーとかマンチェスター・ユナイテッドとか見ているので。(自分たちは)そこですよね。理想ばかりを追い続けてもしょうがない。関東や関西の上位とやったとき、相手の方が上手いのは分かっている。ただこれが自分たちの形といえば形ですし。日頃九州リーグで大差で勝っても課題を見つけて、厳しい練習をやっていますし、それがこういうところで出ていると思います。関東・関西相手にもビビることなくやれていると思う。その1年間やってきたことが自分たちの土台となっていると思います」。高さ、強さ、速さにただ頼るのではなく、全国で勝つための武器としてきた。それを大一番で発揮した福大の準決勝の対戦相手は夏の総理大臣杯全日本大学トーナメント2回戦でPK戦の末に敗れている阪南大。「泥臭く」相手を上回って、再びリベンジを果たす。
 
(取材・文 吉田太郎)
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