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関東リーグ初の得点王&アシスト王…インカレ最注目の明治大3年FW中村草太「Wタイトルがある中で違いを見せる」

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明治大FW中村草太(3年=前橋育英高)

[12.13 インカレ3回戦 明治大 2-0 仙台大 ブリオベッカ浦安競技場]

 数字としては残らなかったが、真価を発揮した。明治大FW中村草太(3年=前橋育英高)は後半22分から途中出場。同39分には縦パスに反応して敵陣に入り込み、相手GKの飛び出しを誘発する。こぼれ球をDF阿部稜汰(4年=日章学園高)が決めたことで中村自身のゴールとはならなかったが、持ち味が光った場面だった。「自分が後半から入る意味は言われていた。ずっと意識していたし、そういう準備があったらからこそ追加点に絡めた」(中村)。今大会注目のアタッカーは短い時間で見せ場を作った。

 中村は2回戦・関西学院大戦はスタメンで入ったが、仙台大戦ではベンチスタートとなった。栗田大輔監督は意図を語る。「相手も太田(龍之介)と中村の2トップを予想していたと思うが、どういうゲームになるかわからなかったので」。太田と2トップでコンビを組んだのはFW真鍋隼虎(2年=名古屋U-18)。新人戦でも得点を挙げていた真鍋が最初から後半にかけて相手をかく乱し、後半途中から中村を投入する策だった。

 明大は前半22分にFW太田龍之介(4年=岡山U-18/岡山内定)のゴールで先制する。しかしその後は追加点を奪えない。1-0で迎えた後半22分、満を持して中村がピッチに立った。

 中村は持ち味でもあるスピードでハイプレスを仕掛け、攻撃時には相手の裏を突く。そして、後半39分に決定機が到来。太田が右サイド中盤から縦に長いスルーパスを出すと中村が反応。「相手の運動量が落ちてきた中で自分のスピードが生きてくる」。相手選手にも反応されていたが、その後ろから一気に追い越してボールごと敵陣PA右から中央に食い込んだ。たまらず飛び出した相手GKに倒されるが、主審はプレー続行を示す。こぼれ球を阿部が決め切り、2-0と点差を広げた。

 得点にもアシストにも絡む形にはならなかった。しかし、中村の突破からPA進入という一連の流れがゴールを演出。「もともと背後が空いているとスカウティングしていた。そこは自分の武器でどんどんついてやろうと。それが自分の生きる道だと思っているので、その結果が得点につながってよかった」。チームの助けになり、安堵の表情を浮かべていた。

 今シーズンは飛躍の年となった。中村はリーグ戦16得点で得点王に、また12アシストでアシスト王にも輝いた。関東大学リーグ1部でのダブル受賞は2005年度に12チーム制が始まって以来、初の快挙だ。

 リーグ戦最終節後に話を聞くと、成長要因に2つのポイントを挙げていた。ひとつはサイドハーフからFWに移り、よりゴールに近いポジションになった点。「1、2年生のころはアシストを好むというか、自分で決めずにパスを選択するシーンが多かった」。さらに栗田監督から叱咤されたことでゴールへの意識が大きく変化。「怖い選手になれと、自分で試合を決められる選手にならないと上に行けないと口酸っぱく言われた。それを意識してゴール数も伸びた」(中村)。メンタル面での変化が類まれな決定力を生み出した。

 もうひとつは、動き出しの向上だ。中村はJリーガーのOB、FW小柏剛(札幌)やFW藤原悠汰(鳥栖)といった自身と似たスタイルの先輩たちを参考。そのうえでシュート練習は、動き出しからフィニッシュまでの流れを極めた。「前を向いた瞬間に背後を取るところが一番特長としている部分」。自身の持ち味を磨き続けた結果、大学屈指の点取り屋となった。

 仙台大戦では、さらにハイプレスの一番手として違いを見せた。本来は一番手が相手を誘導して同サイドで奪う形が多い明大だが、中村はすばやい動きでボール奪取からカウンターを敢行。「自分のスピードを生かしながらチェイシングする。ファーストディフェンスは意識している」。後方の味方がプレーしやすいように、最前線での猛プレスも心がけていた。

 ここまで2試合を終え、自身の出来は「全然だめ」。結果を残すという点に課題を挙げる。「毎試合得点に関わるところは意識している。関東リーグでダブルタイトルを取った中で、もっと違いを見せていかないといけない。もっとチームを引っ張っていかないといけないと思っている。そういうところでまだまだ足りない」。だからこそ、次戦は成長を示す試合になる。

 21日の準決勝では関東王者・筑波大と対戦する。リーグ戦では1分1敗と未勝利。中村も2試合で結果を残すことができなかった。頂点を目指すため、筑波大に雪辱を果たすとき。「リベンジの相手。とにかくトライして、明治のやるべきことを、明治のサッカーをして勝ちたい」と気を吐いていた。

(取材・文 石川祐介)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集
石川祐介
Text by 石川祐介

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