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重圧はねのけた5人制サッカー日本代表「ピッチではいつものみんなだった」、次戦はパラ“唯一”の優勝国ブラジル

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全員出場で勝利を掴んだ5人制サッカー日本代表

[8.29 東京パラリンピックGL第1節 日本4-0フランス 青海]

 5人制サッカー(ブラインドサッカー)日本代表の高田敏志監督曰く、試合前に選手に緊張しているか聞いたところ、全員が挙手したという。だが、「ピッチに入ったらいつものみんなだった」(GK佐藤大介)。プレッシャーを跳ね除けた日本は、初出場のパラリンピックで初白星の快挙を達成した。

 開催国枠で初出場となった日本だが、5月から6月にかけて行われた国際大会「Santen IBSA ブラインドサッカー ワールドグランプリ 2021 in 品川」では初の準優勝。着実に実力を積み重ねると、パラリンピック初戦でも4-0で初勝利を果たした。

 主将のMF川村怜は2得点を挙げ、勝利に大きく貢献。「パラリンピックの初戦で勝利するために準備をしてきたので、黒田(智成)選手とともにゴールを決めて、日本の勝利に貢献することができて、本当に嬉しく思います」と喜びを語る。緊張はしていたというが、「とても心地いい緊張感で、新たな境地に向けて、自分も成長を感じました」と躍進の糧にしてみせた。「こんなに素晴らしい会場でサッカーをすることができて、本当に幸せだなと思いました」と笑みを浮かべた。

 黒田と川村の得点で4-0とリードした日本は、猛暑を考慮して積極的に交代カードを切り、結果的にベンチの選手も全員がピッチを踏んだ。

 最初の交代枠は、17歳のFW園部優月。「出るまではすごく緊張もあった」と語るチーム最年少だが、「出てから最初にイメージ通りのプレーができていたので、緊張もほぐれて、思いっきりプレーすることができました」。投入2分後に決定機を創出し、試合終盤にはカットインから鋭い右足シュートでゴールに迫った。体格差があるフランス相手にも臆さず、「戦っていけるんだなっていう自信だけは持てた。その自信を糧にして頑張りたいと思います」と語る。「せっかくパラリンピックに出たというチャンスを逃したくない。1点は絶対に取りたいです」と意欲を垣間見せた。

 高田監督は万全の準備が功を奏し、序盤に勝利を予感していたという。「食事、体調管理、トレーニングの負荷、そのへんをすごく本当に細かく準備してきたんですけど、立ち上がりの2、3分の選手の動きを見て、上手くいった、勝てる可能性は高いなって感じました」。早い時間帯での連続得点で、チームは全員が交代出場を果たす。「責任感を持ってプレーしてくれた。そういうチームになったなと。ヨーロッパ選手権準優勝で、ロンドンでも銀メダルを取っているフランス相手に、全員が出ることができるチームに成長したっていうのは、すごく嬉しく思っています」と目を細めた。

 グループリーグ3試合のうち、重要な初戦を勝利した日本。3日連続で行われる中の第2戦は、ブラジルと相まみえる。世界ランクはアルゼンチンに次ぐ2位だが、2004年のアテネ大会から4大会すべてで優勝を果たしているパラリンピックでは唯一の優勝国。高田監督も「ちょっと想像の斜め上に行くと思う」とその圧倒的な実力を推し量る。

 初戦を勝利したことを最大限に生かしていく構えだ。「明日ぼろ負けしちゃうと後が大変。明日リズムを崩してしまうと(第3戦の)中国戦に引きずってしまう可能性もある。明日の試合はものすごく重要で、勝てたら勝つが、負けるとしても負け方、引き分け方がある。今日勝てたので、我々が盛り上がりすぎないように、落ち着いていきたい」(高田監督)。目標はブラジル戦の勝利ではなく、パラリンピック優勝。指揮官は冷静に先を見据えている。

(取材・文 石川祐介)
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