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北野先制、千葉連続ハット。U-19日本代表が要警戒のパレスチナを8-0で圧倒

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前半26分、U-19日本代表はMF佐野航大(岡山、手前)のヘディングシュートを最後はMF北野颯太(C大阪)がゴールへ押し込んで先制

[9.16 U20アジアカップ予選 U-19日本代表 8-0 U-19パレスチナ代表 ラオス]

 予想外の展開からのゴールラッシュとなった。「AFC U20アジアカップウズベキスタン2023予選」(ラオス)グループCにおいて2連勝と波に乗るU-19日本代表は16日、U-19パレスチナ代表と対戦。前半半ば過ぎまで無得点の難しい流れとなったが、選手の配置転換がハマる形の先制点から大量8得点を奪っての大勝となった。

 パレスチナは1998年にFIFA(国際サッカー連盟)に加盟した中東の新興勢力ながら、近年は3大会連続でアジアカップ出場を決めるなど急速に力をつけている代表チームの一つ。この代のチームも、エジプトやアルジェリア、モロッコといったアフリカの強豪も参加したアラブカップU-20で4強入りするなど地力の高さを感じさせる結果を残してきた。日本側が大会前から要警戒チームと見なしていたのも当然だろう。

 メンバーもアラビア語圏はもちろん、ドイツやスウェーデン、ブルガリアなど欧州各地に散らばっているが、東南アジアの気候にフィットするのは逆に難しかったのかもしれない。酷暑の連戦を経て迎えた日本戦、パレスチナは本来のアグレッシブなスタイルを封印。5-4-1の守備的な布陣で臨んだ。

「正直に言うと少し残念でした。彼らの推進力あるサッカーと戦ってみたかったのはあります」

 冨樫剛一監督は試合後、こう言って苦笑いを浮かべた。もちろん、同じ監督としてパレスチナの選択は理解できるもの。予選突破を第一に考えれば、日本戦でのダメージは避けたかったはず。「実際、(本来の4バックではなく)5バックで失点を少なくすることを狙うやり方で、前半の半ばまで僕らは0得点に抑えられたわけですから」(冨樫監督)。

 これは日本の選手たちが事前の情報とパレスチナの戦いぶりの差にやや戸惑っていたことも原因の一つ。「5-4-1のブロックで固めてきていて、試合の入りは難しくなった」(FW坂本一彩=G大阪)。日本がボールを支配して押し込みつつも、ゴールは遠い。そんな流れだった。

 ここで日本ベンチが早めに動く。「ウチの優秀なコーチから提案があって、『よしそれでいこう』と思ってね」。冨樫監督がニコリと笑って振り返る策は、左ウイングの北野颯太(C大阪)とインサイドハーフの佐野航大(岡山)のポジションを入れ替えること。元々4バックの相手を想定し、二人の個性を活かそうとしていたゆえの配置を、対5バック仕様で入れ替えた。

 この策が面白いようにハマったのが前半26分のことだった。佐野の展開を起点とした攻めから右SBの中野伸哉が早めのロングクロスを入れると、これを佐野がファーサイドにて頭でしっかりとミート。ヘッドでのシュートが相手GKを襲い、ボールはゴールへ。ここに抜け目なく詰めた北野が最後のワンタッチを決めて、待望の先制点となった。

「先制点で相手が攻めないといけなくなってやりやすくなった」と坂本が振り返ったように、ここからは完全な日本ペースに。直後の28分にはDF松田隼風(水戸)のCKからMF福井太智(鳥栖U-18)がゴールを奪う。「昨日のミーティングで話が出たので狙っていた」(福井)というプレーが実った形で追加点を奪い取る。

 さらに前半終了間際の45分には、再び中野のクロスから北野がヘッドで狙うと、相手GKが防いだこぼれ球に坂本が詰めて、3点目。「北野が打つとき、こぼれてくるなと思っていた」と言う嗅覚の冴えるゴールで試合の大勢はほぼ決まった。

「だいぶ気持ちが落ちているように見えた」と福井も語ったように、暑さによる疲労に加えて士気も落ちた相手を後半から日本は圧倒。後半開始早々に坂本のPKから4-0と点差を広げると、交代出場のFW千葉寛汰(今治)のハットトリック、同じく交代出場のMF熊取谷一星(明治大)のミドルシュートなどがパレスチナゴールを揺らして、8-0と大きく差を広げた。

 後半アディショナルタイムにパレスチナが意地の反撃を見せて決定機を作られる場面もあったが、そこもGK木村凌也(日本大)がビッグセーブで阻止。3試合連続の完封勝利で、勝点を9に伸ばすこととなった。


(取材・文 川端暁彦)
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