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日々の成長とアジア、世界を目指す“08ジャパン”、U-15日本代表候補が初陣。連敗も適応力発揮し、ゴールも

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履正社高戦の3本目、U-15日本代表候補MF川端彪英(京都U-15)がPKを決める

[3.8 練習試合 U-15日本代表候補 0-7 神戸U-18、U-15日本代表候補 2-6 履正社高 J-GREEN堺]

 大阪・J-GREEN堺で合宿中のU-15日本代表候補は8日、ヴィッセル神戸U-18(兵庫)、履正社高(大阪)とそれぞれ40分×3本の練習試合を実施した。神戸U-18戦は0-7、履正社戦は2-6で敗戦。合宿は10日まで行われる。

 2008年生まれ以降で構成された“08ジャパン”U-15日本代表候補は、2025年のU-17ワールドカップを目指すメンバー。C大阪、岐阜、チャイニーズ・タイペイ、フィリピンの育成年代を中心に指導してきた平田礼次監督が指揮を執る。6日から開催されている今合宿からチームが正式に立ち上がり、この日の練習試合が初陣だった。参加36名を大きく3チームに分け、各チームにコーチが付く形で準備。神戸U-18戦の1本目と2本目、神戸U-18戦の3本目と履正社戦の1本目、履正社戦の2本目と3本目、とそれぞれのチームが80分間を戦った。
 
 GKは渡邊麻舟(FC東京U-15深川)、新堀恵太(FC東京U-15むさし)、内田康楠(清水Jrユース)、佐藤陸斗(山形Jrユース村山)の順に約60分間ずつプレー。対戦した神戸U-18は下級生のサブ組中心、履正社はスタート候補の11名を除くメンバーだった

 神戸U-18戦の1、2本目、U-15代表候補は右SB児玉一成(京都U-15)、CB宇南山新太(会津サントスFCJrユース)、CB渡邉春来(東京VJrユース)、左SB針生涼太(FCフォーリクラッセ仙台)、ゲーム主将のMF大野廉門(鳥栖U-15)、MF廣岡瑛太(柏U-15)のダブルボランチ、右SH姫野誠(千葉U-15)、左SH岩崎亮佑(横浜FCJrユース)、FW加茂結斗(柏U-15)、FW葛西夢吹(リベロ弘前SC U-15)でスタートし、MF神谷輝一(名古屋U-15)とFW山崎琉偉(新潟U-15)が途中出場した。

 1本目は神戸U-18のMF瀬口大翔(中3)に2ゴールを許す形で0-2。球際で厳しいチェックを見せる大野や広岡の奪い返しから速攻へ持ち込んだほか、宇南山らがGKからのビルドアップにトライしたが、多くの時間帯でボールを保持される展開だった。

 この日、U-15代表候補の各3チームは、1本目よりも2本目に攻守の内容を向上させていた。大野は「ハーフタイムのところでしっかり修正して、プレッシングのところもハマってくるようになったので、コミュニケーションのところはやっぱり大事かなと思います」と説明する。ハーフタイムにコーチ陣や、平田監督のアドバイスを受けた選手たちは確認し合いながら変化。ビルドアップの途中でロストするなど上手くいかないところも多かったが、チームのテーマである適応力を見せていた。

 昨年、U-16フィリピン代表を率いていた平田監督は選手たちの姿勢や適応力を評価する。「(これまで指導したアジアの地域・国と異なり)彼らは恵まれていて、それは分かっていて、その中で競争している。時間は守るし、気持ちはあるし、そういうところは日本人のDNAとして他のアジアでは絶対に無いと思う。きょうも適応力をテーマとして挙げている中で、適応していくんですよね。前半ダメでも、それも練習して数日の状態で。(A代表のように、自分たちも)適応しようとしてやるし、適応している場面がある」という。

 また、平田監督が感じていたのは選手たちの純粋に勝ちたい、選ばれたいという気持ち。「例えばフィジカルコーチとか、メディカルとか、トレーナーのアドバイスとかもすぐに反応してできるのは、本気だなと思います」。中学3年生の早生まれと中学2年生中心のU-15世代の選手たちは、すでに意識が高い。まだまだ声が出ておらず、特長や気持ちの強さを十分に表現できていない印象だが、試合が進むに連れて徐々に求められている切り替えの速さや圧力の強さ、グループでボールを奪う、攻めるといった部分も発揮していた。

 神戸U-18戦2本目は、巧みにボールを引き出す加茂がテクニックも活かして再三フィニッシュシーンに絡んでいたほか、児玉や姫野、葛西が果敢にゴールへ向かう動き。DF陣も踏ん張っていたものの、終盤にミスから神戸U-18FW渡辺隼斗(中3)に決められると、直後にも注目MF里見汰福(中1)のクロスバー直撃の左足シュートのこぼれを武石に押し込まれた。

 神戸U-18戦3本目と履正社戦1本目は2チーム目が出場。右SB田中遥大(FC東京U-15深川)、CB米湊勇弥(鳥栖U-15)、CB吉田遥翔(スプレッドイーグルFC函館)、左SB高橋温郎(浦和Jrユース)、ゲーム主将MF加藤孝一朗(松本U-15)と神谷のダブルボランチ、右SH平島大悟(鹿島Jrユース)、左SH塩尻哲平(C大阪西U-15)、FW安西来起(さぬき市立さぬき南中)とFW山崎でスタートし、MF野口蓮斗(ソレッソ熊本)、MF安井司(G大阪Jrユース)、右SB篠崎健人(鹿島つくばJrユース)、CB大島琉空(VIVAIO船橋Jrユース)もピッチに立った。

 1、2本目同様、ボールを保持される展開が続く中、U-15代表候補は吉田遥らが我慢強く守って食い下がる。なかなか個人の良さを出しづらい状況だったが、右サイドの平島が攻守に渡って一際エネルギッシュな動き。また、田中が球際で強さを示し、安西や塩尻が幾度も背後を狙おうとする。

 それでも、神戸U-18MF川井憂翔(1年)の右足ミドルとFW高村睦弥(1年)の2発で計3失点。終盤に平島が抜け出しから右足を振り抜き、CKから吉田遥がヘッドを放つが無得点で終わった。

 プレミアリーグ登録メンバー争いが佳境の履正社は各選手がアグレッシブな動き。U-15代表候補は序盤から押し込まれる時間帯が続いた。そして15分、履正社FW長谷怜(2年)に決められると、17分にも注目MF木村有磨(1年)のアシストからFW北浦雄飛(2年)に押し込まれて失点。けが人が出て数的不利の時間帯を突かれて点差を広げられると、ビルドアップのミスからMF山上耀弘(2年)にもゴールを奪われた。

 その中で野口が失点直後のファーストプレーでガチっと相手に寄せて奪おうとし、高橋が身体を投げ出してシュートブロックするなど、苦しい展開の中で前向きなプレーや責任感のあるプレー。決定的なシュートを連発されたが、諦めずに戦い続ける。また攻撃面では、野口の距離の長いスルーパスで安井が抜け出そうとするなど1チャンスを狙ったが、0-3で40分間を終えた。

 履正社戦2本目からメンバーを入れ替え、ゲーム主将の右SB篠崎、CB西村水岐(神戸U-15)、CB大島、左SB坂口佑樹(神戸FCJrユース)、MF野口、MF山縣優翔(千里丘FC)のダブルボランチ、右SH原湊士(広島Jrユース)、左SH小川直澄(浦和Jrユース)、FW安井、FW吉田湊海(FC多摩Jrユース)でスタートし、20分からMF川端彪英(京都U-15)、FW田中陽瑛(横浜FMJrユース)もピッチに立った。

 FW高平伊織(1年)のゴールで先手を取られたU-15代表候補だが、相手がメンバーを入れ替えたこともあってか、渡り合って見せる。DFラインで西村と大島が落ち着いてインターセプト。また、山縣や吉田湊が高校生の強度に負けずにボールをキープして攻撃に繋げ、安井は巧みな切り返しからシュートへ持ち込んだ。

 そして13分、右サイドから攻め上がった原がクロスを上げると、吉田湊が左へ流し、安井がスルー。ファーで詰めていた小川が右足ダイレクトでゴールへ叩き込んだ。待望の初得点を挙げたU-15代表候補は、その後も吉田湊が抜け出しからシュートを打ち切るなど追加点を狙う。続く3本目は3度4度とゴール前まで持ち込みながら、決定打を打てず。逆に履正社のMF桐畑優由介(1年)とFW古島優雅(1年)にファインゴールを決められてしまう。それでも、32分に推進力のある動きを見せていた川端がDF背後を突いてPKを獲得。これを自ら決め、2点目を挙げた。

 初陣を終えた大野は「今回の最初のミーティングでも話があったんですけれども、(2年後に)U-17のアジアカップがあって、そこに向けて国を背負っていくということを今回の合宿でも大きく感じたので、そこの舞台に立つためにもっと成長して、責任をしっかりと持って果たして行かないといけない」。選手たちからはアジア制覇、世界一という言葉が出ていた。ここから1人でも多く、A代表へ入っていくことも大きな目標だ。

 平田監督は始動時に「今までの生活習慣や練習の態度はアジア、世界では通用しません」と指摘。日常からさらに意識高く取り組んでいかなければ、目標には届かない。今回、U-15代表候補の基準を体感した選手たちがチームや地域に戻り、その基準を同世代の選手たちと共有、広めてくれることを指揮官は期待する。そして、「ジャパンズウェイの中の方針を軸として僕らも進んで行きたいなと思っていますし、僕の(特別なスタイルなど)サッカーはないんですけれども僕のアプローチはあるので、僕のアプローチの中で彼らの才能を開花させていきたい」。今回の合宿や各チームでアピールした選手が4月にスペイン遠征を実施する予定。“08ジャパン全体”で成長と結果を目指す。

(取材・文 吉田太郎)

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