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アジア杯得点ランク暫定首位の5発記録…U-20日本代表の不敵なストライカー、FW熊田直紀が“燃える”逆境の条件

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今大会5点目を挙げたFW熊田直紀(FC東京)

「1-0とかのときに途中交代で入るのは好きじゃないんですよね。何をすればいいか分からなくなる」

 そう語っていたU-20日本代表FW熊田直紀(FC東京)は、こうも続けていた。

「でも、0-1とかで入るのはいいんですよ。それは燃える。同点でもいいし、こっちがピンチの状況のほうが自分的には好き」

 不敵なストライカーは、そう言ってニヤリと笑った。

 AFC U20アジアカップ準決勝終了後、同じ話を向けてみたところ、返ってきた答えはやっぱり「ビハインドなら」という条件付きでの「途中出場歓迎論」だった。

 そしてイラクとの準決勝はまさに「0-1での投入」というシチュエーションである。「前半は相手にまったく圧を掛けられなかった」(冨樫剛一監督)という試合内容を踏まえてのハーフタイムでの投入。ギラギラとした闘志を漂わせつつ、ピッチに立った。

 逆境ウェルカムなストライカーは、「プレッシャーの掛かる試合のほうが好き」とも言っており、日本代表のユニフォームを着て臨む初めての公式国際大会を楽しんでいるようでもあった。「緊張する試合のほうがいい」とも言っていたから、そういうタイプなのだろう。

 そして数字も残してきた。グループステージ第1節の中国戦では「0-1」からの途中出場で2得点、続くキルギス戦は先発で1得点、そしてサウジアラビア戦でも途中出場で1得点(このときはリードした状況での投入で「難しかった」そうだが)、さらにイラク戦でも「0-1」からの投入。そして、相手にビハインドを負った延長で起死回生のヘディング弾を突き刺した。

「(アシストした永長鷹虎とは)後半始まる前にもクロスのタイミングについて結構話していた。あの場面に限らずボールは来るって信じていたので、信じた通りにボールが来て良かった」(熊田)

 同点に追い付いた後のPKでは1番手に指名され、堂々と成功。「緊張はそこまでしなかったけど、まあ、しないわけはない。自分が最初に決めさえすれば(PK勝ちが)あるかなと思っていた」と言うようにプレッシャーのかかる場面だったが、見事なキックを披露した。

 しかし、チームとしての結果は4強での敗退。悔しさもにじませる。後半には決定的なパスを受けながらも決め切れない場面もあった。「ビデオで見返したい。他に良い選択肢があったかもしれない。やっぱり最後に決め切らないといけない」と振り返る。

 5月の世界大会まで代表活動の予定はないだけに、いまは「チームで結果を残す」こと以外に考えていることはない。

「日本に帰ってしっかりチームで試合に出て、それで結果を出してW杯に行きたいと思っています。結果を出して信頼を掴みたい」

 逆境ウェルカムの燃えるストライカーは、そう言って笑顔を浮かべた。青赤のユニフォームに着替えても、何より「結果」にこだわる考えだ。

(取材・文 川端暁彦)
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