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アジア横断大移動のW杯2次予選へ「国内組だけの編成も考えた」森保監督が“常連メンバー”を並べた理由

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森保一監督(写真は10月のもの)

 日本代表森保一監督が8日、北中米ワールドカップアジア2次予選に臨むメンバー26人を発表した。コンディション不良で10月シリーズの活動参加を辞退したMF三笘薫(ブライトン)に加え、10月は招集自体を見送られていたMF鎌田大地(ラツィオ)とMF堂安律(フライブルク)が復帰。攻撃陣の層がより厚みを増し、W杯予選の初陣に向けて盤石の体制が整った。

 10月シリーズの選出組ではDF板倉滉(ボルシアMG)、DF橋岡大樹(シントトロイデン)、MF旗手怜央(セルティック)、FW中村敬斗(スタッド・ランス)が招集外。いずれも所属先で負傷離脱中の選手だ。代役として初招集の選手が選ばれることはなく、目立った顔ぶれの変化は6月以来の復帰を果たしたMF相馬勇紀(カサピア)のみ。ほぼ現状のベストメンバーと言える構成となった。

 それでも森保監督は8日のメンバー発表会見の場で、今回の招集にあたり、さまざまな招集プランがあったことを明かした。

「いろんな選択肢を考えた中でチーム編成を考えた。たとえば1戦目は一つのチームで戦い、2戦目ではサウジアラビアでシリア戦に向けたチーム編成をすることも考えた。また国内組だけの編成、海外組だけの編成ということも含め、いろんなことを考えた上で今回の編成を決断した」

 その背景には欧州組の長距離移動があった。今月の日本代表は17日に大阪府のパナソニックスタジアム吹田でミャンマーと対戦した後、21日にサウジアラビア・ジッダでシリアと対戦するという日程。日々ヨーロッパで戦う選手たちはわずか10日間足らずの間にアジアを横断する移動を経て、2試合を戦うことを強いられている。

 さらに初戦で対戦するミャンマーはFIFAランキング161位。カタールW杯のアジア2次予選でも日本と同じ組に入ったが、ホームでは10-0の大勝を収めており、同組のシリアや北朝鮮に比べて力の落ちる相手だ。そうした対戦順も見据え、指揮官は欧州組の疲労を少しでも軽減させるという選択肢も考えていたという。

 ところが最終的には、招集可能な常連組を全員選出するという手堅いメンバー編成に至った。

 森保監督がまず強調したのは、軸を持ったチームづくりの重要性だ。「このW杯2次予選から最終予選、そしてW杯本大会に向け、目標を持ってチームが前進していく中で、よりチームの結束力が強まり、高まっていくと考えられる」。厳しい環境での練習や試合を強いられる2次予選を通じて、よりたくましいチームに仕上げていく構えだ。

 森保監督はこの日、主力メンバーとともに戦うメリットを「どんな対戦相手と戦っても成果と課題はあるし、どんな相手でも我々の成長につながる戦いはできる。これから我々が目標とする戦い、場所に向けて、一戦一戦でいろんなことを試すことをやっていく中で、いろんな経験ができて、そこを共有することで『あの時はこうだったよね、ああだったよね、だから今回はこうしよう』という話ができる。いろんな国に行った時、いろんな対戦相手と対戦した時に、より多くの選手がそれらを共有できていることは、何が起きても乗り越えていける、普段通りの対応能力を持っていけることにつながるし、チームとしての結束力につながるかなと思っている。そこが大きな目的になる」と説明した。

 一方、長距離移動を経てのプレーには、当然ながら負傷のリスクがつきまとう。森保監督も「怪我のリスクは皆さんも心配されていると思うが、我々も心配している。誰も怪我をさせたくないし、選手には少しでも良いコンディションで戦ってもらいたいと考えている」という姿勢を強調する。

 しかし、指揮官は「ただ、それと同時にこれまでの日本代表を考えても、厳しい中でタフに戦うから成長できているという部分もある」とも指摘する。「サッカーをやる上で、格闘技とも言える球技だと思うので、いろんなところに怪我のリスクはある」と受け止めつつ、「怪我のリスクはもちろん最大限に考慮した上で選手起用をしたい。起用する、休ませるというのは招集してからでも考えられる。考えた上で試合に向けてのメンバーを決めていきたい」と起用時点で配慮していく姿勢を示した。

 加えて森保監督は常連組が並んだメンバー選考にあたって、2次予選の厳しさがあることも明かした。会見では「皆さんが2次予選というのをどう捉えられているかわからないが、2次予選はそんなに甘くないので」と語気を強め、前回のミャンマー戦も敵地では2-0の勝利にとどまったことに触れながら、「前回は全勝することができたが、そんな簡単ではない。シリア、北朝鮮、ミャンマーと最終予選で戦ってもおかしくない相手がいる中、我々が油断なく、スキなく、しっかり勝っていけるようにという心構えを忘れてはいけないを忘れてはいけない」と力を込めた。

 来年1〜2月にはアジアカップも控える中、ベストメンバーで2次予選に臨むことを決断した森保ジャパン。指揮官は「チームとしては確実に前進して来られていると思うし、確実により幅広く、より高くということについても積み上げはできてきていると思っている。この26人以外にも招集してもなんら問題のない、力を持った選手がいて、カタールW杯から1年が経った状況の中で、戦術的にも幅が広がり、幅広い選手にも経験をしてもらいつつ、チーム作りは確実に前進して来られている」と手応えものぞかせたが、そうした充実度を十分に示すべき2試合になりそうだ。

(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集
竹内達也
Text by 竹内達也

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