beacon

イラクに阻まれたサイド攻撃、中央で葛藤抱えた久保建英「僕の責任も今日はある」

このエントリーをはてなブックマークに追加

日本代表MF久保建英(ソシエダ)

[1.19 アジア杯グループD第2節 日本 1-2 イラク エデュケーション]

 不完全燃焼のままベンチで敗戦を迎えた。日本代表MF久保建英(ソシエダ)はトップ下で先発するも、右サイドに移った後半16分に途中交代。チームとして不発に終わった攻撃に「僕の責任も今日はある」とも振り返りつつ、「今日は良い教訓になった。攻め筋とか細かいところはみんなで考えていかないといけない」と改善を誓った。

 この日の日本はサイド主体で攻撃を組み立てる中、ゴール前へのクロス攻撃がことごとく不発に終わった。「間でボールを受けて、タフに受けて前を向けたらいいなと思っていた」という久保だったが、大外を駆け上がるサイドハーフやサイドバックをお膳立てする役目を担った結果、決定的な仕事はできないまま時間が過ぎていった。

「崩せている感覚はなかった。今の代表で特長となっているサイドからのクロスオーバーをかけて、クロスを上げるという展開はあったけど、結局中には背の高い選手がいっぱいいて、ニアの速いボール以外はほぼ弾かれていた。そういったうまくいかない時にはちょっと中に人数をかけるじゃないけど、ちょっと違ったやり方のほうが良かった」

 サイド攻撃が通用しないのであれば、中央の久保を活かす選択もあったはず。だが、チームとしてその決断には至らなかった。久保は「チームとしてサイドから崩していくのがテーマだったのでそれを変更するのは難しい部分がある」と葛藤をにじませつつ、中央から崩せる感覚は持ちながらプレーしていたという。

「特に前半は相手がルーズだったぶん、前半でちょっと違う攻め方をしたほうが良かったのかなと。後半になると試合が終わるにつれて相手も頑張るようになるので、一見相手も固いように見えたけど、前半のうちに中から攻めたほうが良かったのかなと思う」

 そんな久保も自身のプレー選択に反省があった。0-1で迎えた前半14分、久保はペナルティエリア際で巧みにボールを収め、前を向く姿勢を見せながらも左サイドに展開。結果的にはMF南野拓実とのワンツーからDF伊藤洋輝が抜け出し、クロスが味方につながらずに終わったが、久保は「貪欲にゴールを狙っていくべきだったかなと今は反省している」と振り返った。

 その後、チームはほとんど目立ったシュートチャンスも作れず、前半終了間際に再び失点。「前半は攻めているようで攻め切れず、逆に相手の2チャンスで2点を取られて、すごく後味悪いというか、悪い試合じゃないぶんもったいないという前半の終わり方をしてしまった。1失点目はちょっとしょうがないにしても、2失点目取られる前にクロスのところとか、何回か合わないシーンがあったけど、あそこで決め切るべきだったなと」。試合運びにも大きな悔いが残った。

 後半は2列目の布陣が大きく変わり、久保は右サイドに移ったが、ドリブル突破を仕掛けても阻まれるという形が続いていた。

「単純に縦に仕掛けていく狙いが大きかったと思うけど、そんなに甘くなかった。相手はCBが後ろに1枚いたので、縦に仕掛けられる回数は限られていた。シンプルに縦に仕掛ける選手を2人サイドに置いてという展開を監督は望んでいたけど、相手もそれはたぶんわかっていたと思う。CBが出ていくことで裏のスペースをケアしていて、しっかりオーガナイズされたチームだった」

 そうして0-2で迎えた後半16分、MF堂安律の投入に伴って途中交代。「コンディション的にはまだできたけど、メンバーを変えなきゃいけなかったのも事実。律くんが代わるなら右の僕かなと思っていたのでしょうがないと思う」と受け止めつつも、不完全燃焼なままピッチを後にした。

 チームは終盤に1点を返したが、1-2で敗戦。イラクの印象を「非常にタフなチームで、1、2年前のチュニジアみたいな感覚」と述べ、0-3で敗れた22年夏のキリン杯を例に出した久保は「こぼれ球のところが転がってこなかった時に相手はしっかりクリアしていたけど、こっちはクリアし切れなかったり、クロスを弾いたところに相手がいたりとか、アンラッキーなところもあった」と振り返りつつ、高さに屈したという見方には異なる見解も提示した。

「注意していたのはスローインとかロングボールで、特にロングボールに注意していたけど、相手はロングボールではなく、引いた僕たちのポケットを使われて、そこからのクロスだった。特に1失点目はそれで逆を突かれた。そうやって変えてくるチームはたくさんあるので、難しい戦いだったけど、後味の悪い試合だった」。想定外の攻め筋を持っていた相手に対する修正力にも改善点を見出した。

 修正力という点では、攻撃の組み立てにも言えるところ。いまの日本の武器であるウインガーを中心としたサイド攻撃が機能しないのであれば、過去の日本が得意としていた中央突破も有効な選択肢として取るべきで、この日のようにトップ下に久保が起用され、左に南野を置いているのであればなおさらだ。

 久保は「ああやって引かれてサイドが難しくなってきた時は僕が崩すしかない。もっとみんなにコミュニケーションを取れなかった僕の責任も今日はあると思う」と自身の責任も口にしつつ、「試合中に選手がなんとかしていくしかない。やりたいことがうまくいかない時は次に切り替えて、違う道筋を見つけていくしかないのかなと思う」と振り返った。

 そうした攻撃のディテールには葛藤もにじんだ一方、すでに敗戦の受け止めはできていた。2位通過ならラウンド16で韓国代表と対戦する可能性が高いが、「次に韓国とやるとか考えているとインドネシアにも足元をすくわれてしまう。まずはインドネシアの試合にフォーカスしたい」と久保。「まずは次に勝てばという前提で難しい山になると思うけど、結局最後に勝てばいい」と力強く言い切った。

(取材・文 竹内達也)

●AFCアジアカップ2023特集
竹内達也
Text by 竹内達也

TOP