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「だからこそチームを救ったときが楽しい」強い風当たりも受け止める鈴木彩艶、差別発言には「負けるつもりない」

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日本代表GK鈴木彩艶

 まさかの敗戦となったイラク戦(●1-2)から3日が経ち、修正点や感情も含めて頭の中はクリアになったようだ。21日の全体練習終了後、居残りで攻撃陣のシュートを受けていた日本代表GK鈴木彩艶(シントトロイデン)は、全選手が打ち終わるとすぐに取材エリアに直行。報道陣に「ウッす」と声をかけながら、覇気のある口調で取材対応を始めた。

 試合直後は映像確認できていなかった1失点目のシーンについてはこのように語った。

「あのシーンでは、ファーに相手が見えていたので、出ないという選択肢はまずないという判断と、出た中で体の向きであったりという細かい部分には改善できる点があった。弾く判断も自分では悪いと思っていない。どこに弾くかを修正しないといけないが、そこでも学びが出たので次に活かせればと思う」

 イラク戦では2失点したが、そこに至るまでの一連の流れを見れば、決してGK一人の責任でないことは明らか。それでもGKへの風当たりは強くなる。敗戦ならば失点シーンばかりがクローズアップされ、批判もされる。

「そこは自分でも分かっている」と切り出した彩艶は「日本代表のゴールキーパーである以上、高いレベルを要求される。受け入れながら、次につなげれば問題ないと思う」と言い切った。一方、さまざまな声がある中、SNSを通じて届いたという差別的発言については「控えていただきたい」とキッパリ。「自分としてはそこに負けるつもりはない。結果で見返してやろうと思った」と続けた。

 敗戦という結果にかき消されてはいるが、彩艶ならではの長所からチャンスにつながりそうな場面もあった。前半11分のゴールキックで相手DFの裏のスペースに抜けようとするFW浅野拓磨を狙ったピンポイントのロングキック。AFC公式チャンネルのアナウンサーが「グレートボール!」と称したキックは彩艶の真骨頂で、浅野のトラップがややズレて相手に奪われたが、抜けていればカタールW杯のドイツ戦のようなビッグチャンスだった。

「自分の武器はああいう長いボール。相手の間延びと飛距離を計算してあそこのスペースに落とそうかなと思った。代表選手は自分がロングキックで長い距離を蹴れることは把握してくれている。相手の隙を突くというところではアンダー世代でもチャンスをつくっていた。得点にはつながらなかったけど、自分の武器から得点シーンにつなげるチャンスメイクはこれからも継続していきたい」

 ビルドアップでも高い足元の技術を活かし、しっかりとボールをつないでいた彩艶。24日のインドネシア戦に向けては「前回のイラクと同様にロングボールが起点になるので、セカンドボールの回収や押し上げは修正していきたい。(相手の)ロングスローも自分のところでアタックして弾くなりすればチームとしての脅威にはならない」と言い、「キーパーである以上、失点とは隣り合わせ。だからこそチームを救ったときが一番楽しい。そういうところを出していきたい」と力強く抱負を述べた。

(取材・文 矢内由美子)

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矢内由美子
Text by 矢内由美子

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