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苦渋の手術決断でアジア杯欠場した大迫敬介「自分が入ってもう一度日本を強くしたい」

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GK大迫敬介(広島)

 右手舟状骨骨折の手術でアジアカップを欠場したGK大迫敬介(広島)が、昨年11月以来の日本代表復帰を果たした。合宿初日の18日、正GK奪還に向けての決意を強く語った。

「アジア杯を外から見ることでもう一回、自分が代表に入ってピッチに立ちたいという思いが今まで以上に強くなったし、あのアジア杯で日本が負けてしまったところを外から見て、自分が入ってもう一度日本を強くしたいという思いを今までよりも強く感じた。そういった色んな思いを背負って、強い思いで戦っている。自分のプレーを評価してもらったことを嬉しく思うけど、ここからさらに競争に入って自分がピッチに立ちたい思いが強い」

 大迫は昨年9月、ドイツ・ボルフスブルクで行われた国際親善試合・ドイツ戦で先発に抜擢され、敵地での快勝に大きく貢献。10月の親善試合・カナダ戦、11月のW杯予選・ミャンマー戦でも先発のチャンスを掴み取り、正GK争いを一歩リードする存在となっていた。

 その一方、パリ五輪世代で高いポテンシャルを誇るGK鈴木彩艶(シントトロイデン)もやや遅れて台頭。10月の親善試合チュニジア戦、11月のW杯予選・シリア戦に出場した。その後、大迫がシーズンオフに右手舟状骨骨折の手術を決断したことで、アジア杯のゴールマウスは鈴木に託される形となった。

 大迫によると、昨年10月ごろから右手に痛みを感じながらプレーしていたという。「代表にも呼んでいただけていたし、チームとしても上位争いをしている中だったのでそこに対する強い思いはあって、簡単に離脱したくない思いもあった」。当初は骨折に至っている自覚はなかったが、シーズンオフの検査の結果、症状は想定以上に重かった。

「いろんな医師に相談して、そのまま保存で治すという選択もあったけど、治る確率を高めることと、痛みを押してやることで骨が悪化するリスクもあって、完治させるには手術した方がいいとどの医師にも言われた。オフシーズンだったのと、開幕に間に合うとも言われたので手術をすることを決断した」

 手術の決断はすなわち、アジア杯欠場を決断することでもあった。「そこが一番手術をする時に引っかかっていた部分。でも痛みながらやって6割、7割しかパフォーマンスを出せないくらいなら一回離れてでも100%でできたほうがいいと思った」。その結果、今季の開幕には間に合い、チームの好調を牽引するパフォーマンスを発揮。再び代表に返り咲いた。

 術後の経過は順調で「痛みがなくプレーできる幸せをすごく感じている。まだまだ自分としては課題も多くあるけど、昨年の故障を抱えながらやっていた時期に比べると思い切りプレーできている」と大迫。再び正GK奪取を果たすべく、「決断が間違っていなかったことを証明するにはプレーで証明していくしかない」と覚悟を持って代表に帰ってきた。

 そして目指すは、ただ自らが代表のピッチに立つということだけでなく、自らの存在によって日本のGKのレベルをより高い水準に導いていくことだ。

「前回のW杯、今回のアジア杯と外から見る形になったけど、もっとGKのレベルを上げないと上には行けないと見ていて感じた。それは自分自身もそう。フィールドプレーヤーに海外で活躍する選手が増えている中で、自分自身はJリーグでやっているけど、そこの環境は関係なく、上に行くためにはGKの力が間違いなく必要だし、上げないといけないなと強く感じた。競争しながらレベルをさらに上げていかないといけない」

 GKのパフォーマンスに大きな注目が集まったアジア杯を外から見つめた経験も胸に、24歳の若き守護神は自らに高い基準を突きつけながらさらなる高みを目指す。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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