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「憲剛システム」で2戦連続4ゴールも憲剛「もっと取りたかった」

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[5.31 キリン杯 日本4-0ベルギー 国立]

 面白いようにパスがつながり、気持ちよくシュートを浴びせた。赤子の手をひねるような4-0快勝。ボール支配率61.5%。シュート数でも24対3の圧勝だった。

 攻撃の中心にいたのはMF中村憲剛(川崎F)だった。4-2-1-3のトップ下に入ると、鮮やかなダイレクトプレーで相手守備陣を切り裂き、積極的にシュートも狙った。下がりながらパスを引き出し、前を向いてボールを持てば、正確なミドルパスでチャンスを演出。決定機のほとんどに背番号14が絡んでいた。

 前半21分、FW岡崎慎司からパスを受けると、背後から追い越してきたDF長友佑都にスルーパスを送り、先制点をアシスト。同23分にはFW大久保嘉人の斜めのパスに反応。鋭い切り返しでDFをかわし、右足でゴール左に流し込んだ。

 「嘉人が持った瞬間、フリーランニングをしたら相手が付いてこなかった。がっつり寄せてきたらシュートは選択しなかったかもしれないけど、当たりも弱かったから。相手はでかいし、切り返してシュートのイメージはきのうから持っていた。それが上手くいった」

 ただ、満足はしていない。前半3分、長友の左クロスに合わせたヘディングシュート、同5分の岡崎のポストプレーから狙ったミドルシュートは決定的だった。「外しましたからね。あれを決めてれば、もっと楽になった。もっと点を取りたかった」と貪欲に語った。

 チーム最多となる6本のシュート。「あの位置(トップ下)ならシュートもどんどん狙っていい。チリ戦はシュートが少なかったから」と積極的にゴールを狙った。「もっと入れば良かったけど、手応えは感じている」と、トップ下という新たな挑戦に充実感も漂わせた。

 27日のチリ戦に続く4-0。チリ戦後、岡田武史監督が「憲剛のためにやった」と語った「憲剛システム」は圧倒的な破壊力を発揮した。ただ、この日のベルギーはプレッシャーが甘く、球際も弱かった。6月6日のW杯アジア最終予選・ウズベキスタン戦、さらには来年のW杯本大会でも同じようにできるとは限らない。

 約1年ぶりに同時先発したMF中村俊輔は「強い相手にならないと分からないよね。憲剛も相手にバンバン来られたとき、どうなるか分からないし」と冷静に分析した。

 憲剛もそのことは頭に入っている。「岡田さんが就任して1年でここまで来た。でも、まだ伸ばせるし、伸ばさないと世界では通用しない」と力を込めた。「足を止めたら日本は終わり。足を止めずに、受けたら出して、出したら走るというのを続ければ、きょうのベルギーみたいに穴は空く。それを信じてやっていきたい」。トップ下に入りながら、そのポジションにとらわれずにピッチを縦横無尽に駆けるダイナモが、岡田ジャパンの命運を握る。

<写真>久々の同時先発を果たした日本MF中村憲(14番)とMF中村俊
(取材・文 西山紘平)

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