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同点弾の起点となった甲府MF水野「このままやっていくべき」

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[9.21 J1第26節 浦和1-1甲府 埼玉]

 ヴァンフォーレ甲府が後半ロスタイム7分に決めた劇的な同点ゴール。そのきっかけとなったのは、途中出場していたMF水野晃樹のロングボールだった。浦和レッズのDFがクリアーしたボールを回収した水野は、素早く前を向きPA内にスピードのあるロングボールを入れる。FWパトリックがヘディングでボールをFW平本一樹に託す。平本のシュートは右ポストを叩いたが、はね返ったところに詰めていたDF青山直晃がゴールに流し込んだ。

 二次攻撃の起点をつぶせなかったことを、再三の好セーブを見せた浦和のGK山岸範宏は「最後の失点の場面は、クリアーボールをフリーで拾われた。映像を見て確認しないといけないが、また同じことが起こさないようにしないといけない」と悔やむ。一方、「久しぶりに得点に絡めた」と、水野は安堵の表情を見せる。

「(試合に)出た限り、動かさないといけないというのはありました。ロスタイムに入って、どうにか動かしたいなと思っていました。青山(直晃)が上がっていたので、シンプルに蹴ろうかなと思っていたのですが、その前のプレーで普通にゴール前にクロスを入れたときもGKが前に出て、パトリックと交錯していたので、球質を変えようと思いました。ちょうど、パト(パトリック)が一人浮いているのが見えたので、速いボールをつけようかなと。その賭けですよね。質にこだわって蹴るか、シンプルに安牌に蹴るか。一瞬、悩みましたが勝負に出て良かったです」

 表示されていたロスタイムは5分。いつホイッスルが吹かれてもおかしくない状況で、極めて冷静な判断を下した。「冷静って言っても、もう10年、この世界でやっていますからね」と水野は苦笑し、「途中から入っても慌てることはありませんし、いつものペースでできたので、それはそれで良かった」と続けた。

 現在、残留争いを繰り広げる甲府で、水野は途中から試合の流れを変えるスーパーサブの役割を担っている。「納得も満足もしていませんが、与えられている時間をうまく使って結果を出すことが、頭から出ることにつながると思う。今日はそれで結果につながったので。レッズを相手に1点負けている状況で出て、追い付けたことは、チームにとっても良かったと思います」。

 この試合をドローに持ち込み、甲府は5試合連続不敗となった。今は、何よりも結果にこだわることが重要だと、水野は認識する。「見ている人からすると、つまらないサッカーかもしれない。でも、カウンターの迫力はあると思うし。やっぱり順位が順位だから、慎重になっていくのは当たり前のことだと思う。結果として、ここ5戦は負けなしできているし、失点も少ない。うまく結果が出ているから、このままやっていくべきだと思う」。

 城福浩監督も、本来はカウンターサッカーではなく、主導権を握るポゼッションサッカーを志向する指揮官だ。「この順位だからこその、このフォーメーション。こうしてしまった責任が自分たちにはあるし、結果を出してラクにしたい。みんな、自分たちでここまで追い込んだことを分かっている」と水野は言う。J1残留を決めることができれば、城福監督は、再び本来のやりたいスタイルに舵を取るだろう。そうすれば、この日も途中出場だった水野やMF羽生直剛らに与えられる時間も長くなるはず。残留、そして自身の力を示す時間を手にするためにも、水野は結果にこだわりながら、与えられた時間を戦う。

(取材・文 河合拓)

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