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試合勘の大切さを力説するU-23代表MF矢島、岡山移籍に「間違いはなかった」

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[7.10 J2第22節 東京V2-1岡山 味スタ]

 不完全燃焼で終わってしまった。ファジアーノ岡山のU-23日本代表MF矢島慎也は東京V戦で先発。3-4-2-1のボランチを務め、攻守に駆け回ったが、この日は見せ場をつくることはできず。チームは1-2の敗戦で7戦ぶりの黒星を喫した。

 試合後、10番を背負う矢島は0-1から一時は追いついての敗戦に、「相手は決めて、自分たちは決め切れなかったところで差が出たかな」と悔やんだ。長短織り交ぜたパスをみせたが、なかなかシュートでは終われず。味方につながらなかったシーンを反省しては「あそこは自分はパスを通さないといけないし、チームが上手くいかない時、自分はもっといいプレーをしないといけない」と表情を引き締めた。

 リオ五輪を間近に控えるU-23日本代表では、おもに4-4-2の2列目でプレーしているが、岡山ではボランチ。代表とクラブでのポジションの違いに苦心している部分があるのかと思いきや、本人は気丈に語る。

「代表で前めのポジションをやっているときは、よりゴールが近くなるので良さを出せる部分もある。ボランチでも自分の良さを出せる部分もあるし、ボランチの方がボールを触る回数が多いので、そこは個人的には好きです」。与えられたポジションを素直に受け入れ、そこで結果を出そうと奮闘している。

 出場機会を求め、2015年に浦和レッズから岡山へ期限付き移籍。加入当初は思うように出場時間を伸ばすこともできずにいた。当時を振り返った矢島は「最初は試合に出ていなくて、ここに来たのを後悔するときもありました」と正直な思いを明かす。

 それでもリーグ中盤では完全に主力に定着。今季からは10番を背負い、トゥーロン国際大会で不在だった2試合を除き、残る20試合は全てに先発。周囲も認める岡山の10番に君臨している。

「次第に試合に出続け始めたら、良くなってきてるし、さらに良くなっていけると自分にも期待しているので、周りも期待してくれていると思うし、まだまだここでできることは多いと思っています」

 リオ五輪を見据えるなかでの岡山移籍。その決断がリオ行きを後押ししたことは「間違いない」と今では思っている。

「試合に出続けられていますし、“試合勘、試合勘”と言われますけど、本当に大事で。浦和で出ていなかった分、そういうところが落ちていたんですが、ここに来て段々と取り戻せてきているので。ここからまだ成長し続けるためには、試合に出続けないといけないと思っています」

「まだまだ自分は下手ですし、ここに来て向上心や、より上を目指したいという気持ちも強くなった。浦和のときも向上心がなかった訳ではないですけど、試合に出ることで生まれる課題もあるので、試合に出ないと気が付けないところもある。練習でも課題は出ますけど、試合で出る課題のほうが多いので、そういうのは試合に出て課題を見つけて、また競争して試合に出る。そこでサイクルが出来ていくと思います。五輪もありますし、ここからまた上手くなるために自分に厳しく意識高く持ってやりたいです」

 U-23日本代表では故障離脱していたMF中島翔哉の不在時に10番を背負い、6月29日に行われたキリンチャレンジ杯・南アフリカ戦(4-1)でも、10番をつけて得点も挙げた。それでも本大会では9番に決定。10番は再び中島がつけることになった。

 矢島は日本の10番を背負った経験を「着けたいと思ったことはなかったんですが、テグさん(手倉森監督)が10番を託してくれたので、そこで成長しないといけないと思いました。日本代表の10番を背負うプレッシャーはすごくあった。そこで点も取れたり、結果を出すこともできたのは、自分にとっては必要なことだったなと思います」と振り返る。

「翔哉が10番でいいと俺は思います。俺は翔哉がこの世代を10番で引っ張ってきたと思っているので」と素直な思いを口にしたMFは、新たに託された9番について、「小学生以来。小6で9番だったときはボコボコ点を取っていたので、縁起はいいのかなと思います。似合わないですけどね」と笑った。

 リオ五輪への距離を縮めるために新天地での挑戦を選択。試合勘を取り戻すなかで念願の五輪切符を勝ち取った。試合をこなす毎に、向上心は強まり、貪欲さは増していく。まだまだ矢島は満足していない。「より上を目指したい」と強く誓うMFが岡山からリオへ挑む。

(取材・文 片岡涼)

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