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完全復活への62分間…横浜FM宮市亮がJ初先発で持ち味発揮「ようやく一員になれた」酒井高徳とも“ドイツ以来”マッチアップ

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[3.2 J1第10節 横浜FM 2-0 神戸 日産ス]

 横浜F・マリノスFW宮市亮が2日、前倒し開催されたJ1第10節ヴィッセル神戸戦で、加入後初先発を果たした。対面の選手を振り切った右サイドを駆け上がる場面を何度もつくるなど、爆発的なスピードは29歳となったいまも健在。完全復活を予感させる62分間となった。

 宮市は昨夏、ドイツ・ザンクトパウリから横浜FMに加入。中京大中京高を卒業後にイングランド・アーセナルに渡り、度重なる膝の怪我に泣かされながらもオランダやドイツでプレーしてきたウインガーのJリーグ初参戦は大きな話題となった。ところが前田大然、エウベル、仲川輝人らがひしめく横浜FMの前線で出場機会はわずか。昨季はJ1リーグ2試合、合計41分間の出場にとどまっていた。

 それでも宮市は「マリノスは本当にレベルが高いので、メンバー外でもしっかりとした練習ができていた」と自身の立場に向き合ってきたという。昨年9月には育成リーグにあたる「エリートリーグ」にも出場し、開始早々に2度の警告で退場処分を下されるという試練も経験。だが、それは“欧州帰りの慢心”ではなく、“出場機会への野心”があったからこそだろう。

 そうして迎えた今季。ACL出場の影響で組まれた過密連戦の3試合目まで一度も出番を得られなかったが、4戦目で待望の先発機会が訪れた。「待っていたチャンスで絶対にモノにしたい思いがあった。自分の良さを絶対に出そうとずっと思っていた。監督からチャンスをいただいたので、良さを見せるだけだと強い気持ちで臨んだ」。準備は万端。自身の揺るがぬ武器を信じ、4-2-3-1の右ウイングでピッチに立った。

 対戦相手は欧州経験豊富なスター選手たちがメンバーに並ぶ神戸。とりわけ対面の相手は、奇しくもともにドイツでプレーしていたDF酒井高徳だった。「ハンブルクにいる時から公私共に仲良くさせてもらっていて、面倒を見てもらっていた選手。こうして日本のピッチで対峙すると思っていなかった」。宮市のいたザンクトパウリと酒井のいたハンブルガーSVは、ともにハンブルクをホームタウンとするチーム。ドイツ時代から日常的な交流があり、ピッチ上でもダービーマッチで対戦した経験のある間柄だった。

 日本での再会は酒井にとっても感慨深いものだったという。「最後に試合をしたのがダービーだったので、すごく懐かしい気持ち。公私ともに仲良くしている後輩なので、スタメン発表を聞いた時は楽しみだった」。試合が始まると、そんな酒井と宮市がたびたびマッチアップ。先に酒井が宮市の背後を取ってチャンスをつくり、次に宮市が酒井の背後を取って決定機を迎えたりと、試合を大きく左右するエリアとなった。

 もっとも、酒井のクロスはゴールにつながらず、宮市のシュートもGKに止められ、両者のマッチアップで試合が動くことはなかった。前半38分、横浜FMの先制点はセットプレーから。後半17分、宮市の途中交代によりマッチアップは終わった。それでも試合後、両選手からは「経験がある選手でやりづらさはあった。対戦できてよかった」(宮市)、「コンディションの良さそうな亮が見えてよかった」(酒井)と喜びの声も聞かれた。

 宮市にとっては大きなターニングポイントとなった初先発の舞台。「ゴールを決められれば最高だった」と苦笑いも浮かんだが、「公式戦での先発もドイツ以来だった。楽しんでやれたと思う」「誰が出てもマリノスは強いんだというところを結果として見せられた」と手応えも明かした。その上で「得点は取りたかったけど、もうしょうがない。次に取れるように準備していきたい」と次への希望も語った。

 この62分間は完全復活への足がかりとなるか——。この日のようなパフォーマンスを続けていけば、再びチャンスは訪れるはずだ。「スタメン争いもそうだけど、試合数も多くなるし、チーム一丸となって戦うことが大事。誰が出ても結果を残せるのがマリノスなので、ようやくその一員になれた」。手応えと課題の見えた一戦を経て、宮市亮「どんな状況でもひたむきに自分のできることをやっていくだけ」と力強く前を見据えた。

(取材・文 竹内達也)
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