beacon

12歳でユニフォームを着てから26年…柏の“象徴”大谷秀和が引退、「将来のビジョンはまず指導者」

このエントリーをはてなブックマークに追加

38歳の誕生日の前日が柏MF大谷秀和のラストマッチとなった

[11.5 J1第34節 柏 1-2 湘南 三協F柏]

 MF大谷秀和のJ1通算384試合目であり、20年におよぶプロサッカー選手としての最後の試合が終わった。「あくまでいつもどおり」と大谷らしい気持ちで試合に臨んでいたというが、「現役ラストの試合を、日立台でプレーすることで終えられたのは本当に幸せでした」と感慨深く語った。

 ラストマッチは1点リードを許した中での途中出場に。定位置であるボランチで16分間プレーした。それは来年のプレーもイメージさせるものだったが、大谷自身にとっての引き際のラインは越えているのだという。

「足首はボロボロなんですけど、体がボロボロになるまでサッカー選手を続けたいと思っていなくて、『まだやれるんじゃないか』と思ってもらえるうちにやめたいと思っていた」。

 2022年限りでの引退は「ここ1か月」で決断した。

 384試合はすべて柏レイソルでの出場。柏におけるJ1出場ランキングは、2位の渡辺毅(現・アカデミー ダイレクター兼スカウト)の281試合に大差をつける不滅の記録となっている。

 2003年にはじまったプロキャリアは、2008年に23歳の若さでキャプテンに就任、J1(2011年)をはじめ、天皇杯(2012年)、ナビスコ杯(2013年、現ルヴァン杯)という国内主要タイトルの獲得、クラブW杯とACLで4強という華々しい記録に彩られた。その栄光の一方で、3度のJ2降格(2005年、2009年、2018年)という苦難も経験。これだけの経歴を誇りながら、日本代表の招集歴がないのは不可思議でもあるが、それがまた勲章にも思える。

 生まれた地域のクラブで下部組織から引退まで長くプレーし、J1優勝まで経験した選手となると、元鹿島のGK曽ヶ端準の名前が想起されるが、フィールドプレイヤーに限れば大谷をおいてほかにはいないだろう。柏市に隣接する流山市出身の大谷が小学3年生だった1993年にJリーグが開幕、翌年には柏が当時のJFLからJリーグへの昇格を決めた。

「井原さん(井原正巳柏ヘッドコーチ)とかを見て育って、近くに柏レイソルというチームがあることを知って。ファン感みたいのも行きました」。家から「電車で10分」の距離にあったプロクラブに心を揺さぶられたサッカー少年は、中学入学と同時に柏U-15への入団を果たす。

「12歳のときに最初に試合に出てユニフォームを着たときの喜びは今でも覚えてますし、それを着続けられたっていうのはありがたかった」。

 アカデミーから通算すると、26年間袖を通したのが、黄色いユニフォームだった。

シャーレを掲げる大谷。J2降格から1年でJ1に帰還、昇格1年目で優勝という快挙だった


 観客席から見ていた2011年のJ1優勝の瞬間はもちろん感慨深いが、2015年と2017年の大谷のプレーが個人的には印象深い。

 2015年の柏は吉田達磨新体制になり、相手の長所を消して自分たちのよさを出すサッカーから、ボールを握って自ら長所を打ち出すサッカーへとチームは舵を切った。「守」のイメージが強かった大谷が4-1-2-3のアンカーを務めると予想していたが、主戦場は1列前のインサイドハーフだった。判断力やポジショニングに加え、ボールを扱う技術はこんなに上手かったんだと舌を巻くほど際立っていた。

 また、下平隆宏監督が指揮をとった2017年は柏が前半戦を首位でターン。好調のチームにあって、32歳を迎えていた大谷のプレーはさらなる進化を遂げた。アカデミーの後輩であるMF手塚康平とダブルボランチを組んでいた中で、手塚がビルドアップをする分、大谷がゴール前へ飛び出していくシーンが多く見られた。実際、この年にキャリアハイの5ゴールをマークしている。

「2年か3年でやめると思っていた」と大谷はプロのキャリアを冗談めかして回想したが、「勝ちたいという思いと、上手くなりたいという子どものときと変わらない気持ち」という言葉に選手としての矜持が集約されているのだろう。かつての大谷の口から聞いた「サッカーにすべてを懸ける」ことを体現してみせたサッカー選手人生だった。

 現役中にB級コーチライセンスまで取得済みだという大谷は、「100%監督を目指したいという思いに至っているわけではない」という前提ながら指導者の道へ進むつもりだという。

「次のライセンスをとりに行くのを最優先」と今後の目標を明かした大谷は、「来年は柏レイソルにまたお世話になるので、将来のビジョンとしてはまず指導者を目指したい」と、第二のサッカー人生を見据えていた。

(取材・文 奥山典幸)
★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!
●2022シーズンJリーグ特集ページ
●DAZNならJ1、J2、J3全試合をライブ配信!!

TOP