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J初ゴールから4日後の憂鬱…湘南19歳FW鈴木章斗のシュート選択と指揮官が怒った真意

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シュートを選択したFW鈴木章斗

[4.9 J1第7節 FC東京 2-2 湘南 味スタ]

 そのシュートが決まれば、劇的な勝利となっていた。FW鈴木章斗は2-2で迎えた後半アディショナルタイムのロングカウンターで、数的優位に立ちながらもミドルシュートを選択。そして、相手GKに阻まれた。山口智監督は試合後、過去にも同様の選択を繰り返していた鈴木を諭したという。

 高卒プロ2年目の19歳は、5日のルヴァン杯第3節・清水エスパルス戦でゴールを記録。阪南大高時代には高校サッカー選手権で得点王に輝いた鈴木だが、その得点は待望のJ初ゴールだった。

 気負いのなくなった鈴木は、初得点から4日後のFC東京戦でも大きなチャンスを作った。後半41分から途中出場し、後半アディショナルタイムには相手のCKから一気にロングカウンター。鈴木が自陣からドリブルでボールを運ぶと、相手3選手が守備を固める一方、湘南は鈴木も含めて5人で敵陣に迫る。「相手がなかなか食いついてこずに、ペナのちょっと外くらいだったので」。鈴木は味方へのパスではなくPA手前からシュートを選択。真芯を捉えた鋭い弾道となったが、名手GKヤクブ・スウォビィクの好セーブにはじかれた。

 終盤で迎えた数的優位での絶好機を逃し、2-2のドローで痛み分け。山口監督はロッカールームで鈴木を叱咤したという。

「同じような状況が3試合くらい続いていた。勝つために選択をできる選手になってほしい。自分が生き残るためにはそういう選択をできる選手にならないといけない」(山口監督)。叱咤の理由はシュートを外したことではなく、過去にも数度繰り返していた同様の選択をしたことによるもの。山口監督は試合後の会見で、鈴木の選択について語気を強める。

「チームを勝たせるためにそういう選択をしないという中でのゲームで、ああいうことが起きました」

「(鈴木に)言ったことは、同じことを何回も繰り返すなと。打ち切ったことを褒めてあげたいとはまったく思わなくて。決断は尊重しますし、打ったことに彼も後悔はないと思う。だけど、起こった結果に向き合ってほしい。もっと確率が高いところを選べなかったのか、というのが3回くらい続いたので。同じことの繰り返しをしたので、ひとつ学びを覚えてほしいと。多少厳しい言い方にはなりましたけど、ひとつポイントとして伝えました」

「もちろん、シュートを打つことが悪いとは思わない。別の選択がある中で、選手の判断が遅れたり早くなったり、見えなかったり、ミスしたりがサッカー。それで彼が何を学んでいるのか。3回目で同じことを繰り返したというのはまだまだだと思います。勝たせる選手になるためには、そういうところを乗り越えてほしい。若いからということではなくて、点を取るストライカーということではなくて、サッカーとして数的優位をどう考えるか。日本の大きなテーマだと思います」

 試合後、鈴木は「何回も同じことをやっている、それが入っていないということなので、言われても当然」と肩を落とす。「入っていれば何もなかったと思うんですけど、前回もそういう場面で入っていない。決め切る力も自分の課題かなと思います」。ゴールを決め切れなかった自身の力不足にも、悔しさをにじませた。

 ストライカーとして生き続ける限り、同様の場面はこれからも起こるだろう。鈴木は「まずゴールは常に狙った中で、その場面によってはパスという判断をしなくてはいけない」と考えを改める。だが、指揮官があくまで伝えたかったことは“パスをしてほしい”ではなく“チームを勝たせる選択をしてほしい”だ。「言われたからパスをする、というのもよくない。それは本当に練習してやっていくしかない」。若きストライカーはこの苦い経験を糧にするつもりだ。

(取材・文 石川祐介)
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