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俊輔が思いを激白。マリノスでのこと、スペインでの最後の夜のこと・・・

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 エスパニョールから横浜F・マリノスへの復帰が決まった日本代表MF中村俊輔。夢だったスペインリーグの移籍も、出場機会が得られずシーズン半ばで失意の帰国となったが、本人も明かしているように、俊輔は挫折のたびに強くなっている。

 今後は日本代表の飛躍、そしてマリノスの黄金期復活に向け尽力し、サッカー界を盛り上げるつもりだが、すでにマリノスでのプレーはイメージできている。会見、お披露目イベント後、俊輔は記者の囲み取材に応じて激白した。

―マリノスに帰ってきた実感は?
「あしたから練習が始まればあれだけど、また、代表だからね。マリノスのユニホームを来て、いいプレーして、勝利に貢献できて初めて、実感できると思う。それまで、がむしゃらにやる」

―マリノスの印象は?
「去年の試合のDVDをほとんど見たけど、若い選手を使いつつ、外国人選手もいない中、すごくいいサッカーをしていた。ほとんど(試合を)支配するけど、ただ、点が入らなかった。今年は若い選手もいて、松さん(松田)なんかベテランもいて、まあ、外国人は一人しかいないけど、そこで自分がいいプレーすればね」

―どういうプレーを心掛ける?
「できるだけ、僕はサポートしたい。黒子の役をやる。選手のいいプレーを引き出して、歯車になる。いいプレーを引き出して、それから(自分のプレーをする)。たとえば、健太(狩野)なんか、いいボール蹴るから、(FKとか)全部が全部、自分が蹴るのではなく、自分がおとりになったりする。その前からあるチームの流れは壊さないようにする。山瀬なんかもいいものもっているし、代表レベルだしね。カズマも10何点とったし。まあ、もう一人くらい(点取り屋が)いないと強いチームにはなれない。まあ、ほかのチームだと10点以上が3人くらいいる。だけど、他のチームは外国人だからね、そこが日本人でできると大きいよね。そうなれば強いチームになる。そうなるようにしたい」

―なるほど、黒子になると。
「最初は、その方がうまくいく。こんだけ、チームができあがってるからね。海外だと毎年、三分の二くらい入れ替わってて、そして冬にもまた移籍して入れ替わるから自分の色だけだせばいいけど、そういう状況じゃない。それがいまの自分のやること」

―会見で、悔しい思いをしたと言っていた。
「やっぱり、事実、活躍して帰ってきたわけじゃないから。でも、ま、(スペイン)最後の夜かな、代理人や(元スペイン代表でチームメートの)イバン・デ・ラ・ペーニャとご飯食べて話してたけど、(デラペーニャは)タイミングが悪かったと。その前の監督だと、イキイキできただろうって。4-3-3で、すごいつないでつないで(というサッカー)。それが今はそういう感じではない。ポジションのことが言いたいわけではなくて、海外ではちょっとしたずれで、選手は使われたり、活躍できなかったりするもんだからと。だからナカの力の問題じゃないと言ってくれた。でもおれ自身はもちろん、どんなところでも力があれば、どんな戦術でも、どんな監督でもプレーできると思っている。やっぱり、スペインリーグという高い舞台で、ちょっとでも歯車がずれたら、修正がきかなかった。修正がきくくらいのモノをもってないといけない。(これから)ちゃんと把握して、自分で反省して、トップレベルのプレーにしないと。何ができて、何ができないか、日本でやってるうちに、忘れないようにというか、ごちゃごちゃにしないようにしないといけない。日本はまた特殊(なサッカー)だから。Jリーグは」

―チャンスがあればまた海外へ?
「いまのところは、マリノスで骨をうずめるつもりでやる。けど、半年前は帰ってこなくて、今はこうやって帰ってきてる。(人生は)何が起こるか分からないから」

―会見で、夢は変わらないといっていたが? またスペイン?
「スペインに行くことだけじゃない。夢はうまくなることも? そうですね。まあ、(スペイン再挑戦と)そうとられてもしかたないけど」

―マリノスへの恩は感じる?
「すごい短い期間で社長も動いてくれたし、僕の代理人も頑張って交渉してくれた。いろんな人の協力があって実現した。その辺はわきまえて。早くマリノスでいいプレーする。そしてそれ以外のことでも何か貢献したい。大きくというか、役立てる何かがあればね」

―たとえば?
「ヨーロッパは日本と違って、社会貢献みたいなことがあまりない。病院にいって、子供に何かあげたりとかくらい。練習が非公開だから、サインをすることもない。日本はすごいそういうのがあるし、(サインで)並んでくれる。どんどんというか、貢献できることがあればやりたい。ヨーロッパがこうだったから、とかではなく、日本は日本の良さがあるから、やっていきたい。マリノスというクラブが大きくじゃないけど、そういう風になるよう役立てれば」

―木村監督から言われたことは?
「楽しくと。ファンを楽しませて、自分たちも楽しむ。楽しく、楽しくって。その意味がまた、深いわけだからね。楽しむためには人以上の努力をしないといけないし、それがあって、はじめて楽しめる。奥深いでしょ」

―監督からチームの話は?
「こういう選手がいて、こうこうこうで、フォーメーションはこうでと。あとはどこがやりたい? と聞かれたから、どこでもと。ほんとに(そう言ったよ)。中盤にいい選手がいるんでね。まあ、監督が決めたり、選手が自分たちでバランスを考えたりね」

―イタリアを皮切りに海外8年。ひとつ、区切りがついた感じ?
「そういうのはあんまないですね。ヨーロッパ行くときは、日本にいるときと生活が変わってとか思ってたけど、ないね。まあ、半年くらいたってかな。結局、毎日、気を張りつめて、サッカーのために時間を費やしてというのは、どこの国でも一緒。基本的に変わらないね。ただ環境が変わるだけ」

―なるほど・・・
「日本に帰ってきて、練習が始まって、若い選手から吸収することもあると思う。学ぶという姿勢があれば、(意識は)あまり変わらないかな。そりゃあ娯楽というのは、日本のほうがいっぱいあるけどね。俺でいえば、温泉とかスパとかあって、ぱっといってぱっと帰ってくるだけでも、数段、違う。外国のホテルなんて、お風呂もついてないしね」

―ところでコンディションは?
「足痛いとか? 特にないですよ。大丈夫です」

 俊輔は、自らの言葉で、スペインでの半年間、そしてマリノスでのプレーについて語った。干渉に浸るわけでもなく、かといって、大見えを切るわけでもなく、今の“俊輔の思い”を語り明かした。もちろん、悔しさや無念さはしばらく消えないだろう。それを消すためにも、マリノスで日本代表で、結果を出すことに飢えている。

<写真>お披露目イベントでサポーターにプレゼント用のボールを蹴り込む俊輔

(取材・文 近藤安弘)

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