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「チームが崩れずにいてくれた」広島DF佐々木翔は仲間に感謝、ミスから失点も劇的逆転V

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サンフレッチェ広島がルヴァン杯初優勝を飾った

[10.22 ルヴァン杯決勝 C大阪1-2広島 国立]

 キャプテンのミスをチーム全員で取り返した。後半8分、バックパスのミスから先制点を献上したサンフレッチェ広島のDF佐々木翔は劇的な逆転勝利で初優勝を飾った試合後、喜びと安堵が入り混じった表情でチームメイトに感謝した。

「不運でも何でもないし、僕の実力不足。試合中も“試合後に記者さんの前で『僕の力のなさです』って話さないといけないのか”と思うほど、大きな事象だった」

 0-0で折り返した後半8分、最終ラインでパスを受けた佐々木はGK大迫敬介にバックパス。しかし、このパスが短くなったところをFW加藤陸次樹にカットされ、先制のゴールネットを揺らされた。

「チームメイトにとっても間違いなくダメージが大きい。“何してるんだよ”となる形だった」。大一番でのまさかのミス。失点直後、思わず頭を抱えたキャプテンに、しかしチームメイトたちが切り替えるように声をかける姿があった。

「若い選手もベテランの選手も『やることは変わらないよ』『これぐらいじゃ崩れないよ』と声をかけてくれた。チームが崩れずにいてくれた」。決して下を向くことなく、同点ゴールを目指して頭を切り替え、前だけを向いた。それが終盤の劇的な2ゴールにつながった。「自分たちがやってきたサッカーを乱れずに続けられたことが大きかった」。頼もしいチームメイトに佐々木は感謝し切りだった。

 16日の天皇杯決勝でPK戦の末、甲府に惜敗。あと一歩でタイトルを逃した1週間後に、再びタイトルを懸けたビッグマッチがやってきた。「日程的にも今後ないんじゃないかという(スケジュール)。今日(タイトルを)失ったら、みんなメンタル的にもこんな過酷なことはない」。そう率直な思いを吐露しつつ、「何としても今日取りたかったし、先週の思いを晴らせるチャンスがあるということが力になっていた」と、この1週間でチームを立て直してきた。

 前日21日には17、18年に広島でチームメイトだった元日本代表FWの工藤壮人さんが亡くなった。試合当日の朝に訃報に接したという佐々木は「感情の整理は難しいし、言葉で表すのも難しい」とうつむいた。試合前の黙とうでは涙が溢れ出たという。「こうして健康にサッカーができているという当たり前ではない状況に感謝してプレーしないといけないし、失礼なプレーは見せられない」。強い決意で戦い抜いた90分。自身のミスも跳ね除けてのタイトル獲得に「今日は彼の力をもらえたのかなと思う」と神妙な面持ちで言葉を紡いだ。

(取材・文 西山紘平)
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