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ラストプレーのPKを気迫のセーブ、川口「読みも何もない」

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[11.3 ナビスコ杯決勝 磐田5-3(延長)広島 国立]

 最後に最高の見せ場が訪れた。延長後半ロスタイムのラストプレー。5-3と勝利を目前にしながら迎えたPKのピンチ。立ちはだかったのはジュビロ磐田のGK川口能活だ。DF槙野智章のキックを横っ跳びで弾き出す。直後に試合終了のホイッスル。守護神が最後を締めくくった。

 「PKを止めて試合が終わるというのはあまりない。それまでの3失点を帳消しにできたかな」

 意地と誇りのセービングだった。決勝前夜祭で「能活さんからゴールを決めたい」と“挑戦状”を叩きつけてきた槙野に対し「簡単にゴールさせるつもりはない」と堂々と受けて立った。ところが、4-2とリードを広げた延長前半ロスタイム、槙野に直接FKを叩き込まれ、1点差に詰め寄られた。

 「(PKは)読みも何もない。FKをあいつに決められていたから。絶対に止めてやろうと思っていた」。優勝は確実な状況だったが、槙野に2点目を許すわけにはいかない。川口の気迫勝ちだった。

 「最後に決められて終わったら、4点取られての優勝だったら、悔しさが残る。あそこを止めないと俺がいる意味がないから。止めて終われたのはよかった」

 名門復活を告げる優勝は、川口自身にとっても完全復活を印象付けるタイトル獲得となった。昨年9月に右すねを骨折。全治5~6ヵ月の重傷を負った。今季も公式戦出場のないまま、南アフリカW杯には第3GKとして参加したが、公式戦復帰は8月7日の山形戦。約11ヵ月間、実戦から遠ざかっていた。しかし、少しずつ試合勘を取り戻していくと、チームも調子を上げ、この日の決勝までリーグ戦は7試合負けなし(4勝3分)。守護神の復帰が追い風となった。

 ナビスコ杯は復帰後の準々決勝と準決勝第1戦の計3試合に出場したとはいえ、チームが厳しいグループリーグを勝ち抜けたのは、自身が離脱中にゴールを守ってきたGK八田直樹の存在があったからに他ならない。

 「ハチ(八田)が頑張ってくれて決勝まで来たのに、自分がおいしいところだけ持っていっちゃって。最後あそこで止めないと自分がいる意味がない。止められてよかった」

 若返りを図るチームが手にしたタイトルの意味は大きい。「今年は終了間際とかに粘り強さが出ている。その象徴的な試合ができたと思う。タフさが付いてきたし、そこは自信を持っていい」と、チームの成長に手応えを感じている。

 「チームが成長する、飛躍する上できっかけになれば。でも、このあとの試合が大事。どこか達成感に浸ると、足元をすくわれるし、せっかくつかんだタイトルが台無しになる。しっかり休んで、気持ちを切り替えたい」。6日には中2日で新潟戦が控える。今回の優勝を名門復活の足掛かりにするためにも、残り6試合となったリーグ戦につなげていくつもりだ。

[写真]優勝杯を掲げる磐田GK川口(右)
(取材・文 西山紘平)

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