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チーム全員の力を合わせ我慢比べを制した法政大が8強進出!阪南大は特別な地、宮城で勝利を飾れず

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法政大が我慢比べを制した

[9.3 総理大臣杯2回戦 法政大 1-0 阪南大 松島フットボールセンター]

 第47回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントは3日、2回戦8試合が宮城県・岩手県の各会場にて行われた。松島会場第2試合は法政大(関東6)が阪南大(関西2)に1-0で勝利し、3回戦の国士舘大(関東1)戦に駒を進めた。

 前半立ち上がりは互いに決定機をつくったが、途中からJ加入内定選手を多く擁する法政大が多くの決定機をつくり始める。そして前半アディショナルタイムに入ると、法政大のセットプレーが続く状況となっていく。そして前半アディショナルタイム6分、これがラストチャンスとなったコーナーキック。キッカーでこの日キャプテンマークを巻いたMF渡邉綾平(4年=前橋育英高/鳥栖内定)が「前半ラストワンプレーだったので、かなり集中していました」と振り返るコーナーキックを受けたFW小湊絆(1年=青森山田高)がヘディングシュートを決めて法政大が先制した。「良いボールが上がったな、と思いましたが、絆が腰をひねってやってくれて,絆がすごいな、と思いました」と2戦連発となった1年生ストライカーのゴールを渡邉も讃えていた。

 後半は法政大が決定機をつくりつつも、小湊がゴールを決めたかに見えた場面がオフサイドの判定となるなど、追加点をなかなか奪えない。そんな中、後半25分に阪南大はペナルティエリア内でFW中田有祐(1年=仙台ユース)が倒されてPKを獲得。キッカーはFW金本毅騎(1年=C大阪U-18)。しかしこのPKを法政大GK中川真(4年=徳島市立高)がセーブし、阪南大は同点に追いつくチャンスを逸した。その後も互いに得点奪えない拮抗した状況が続き、後半アディショナルタイム5分には阪南大の中田が長身を生かしたヘディングシュートを放つが、これも中川に止められてしまう。試合は1-0で法政大が勝利した。

 後半ずっと追加点が取れない状況が続き、我慢の展開となった法政大の井上平監督は「粘り強く謙虚に戦って、最後はチーム力が出ました。初めてですね、チームで勝ったという試合は」とチーム全員の力で粘り強い戦いができたことを称える。関東大学リーグでも苦戦が続いている状況で「ポキッとどこかで折れて、隙を与えてしまうチームでした。声を掛け合うことで1-0で終えられましたが、こういう試合はなかなか無かったです」とこれまでなかなかできなかった我慢の展開でも最後まで集中を切らさない試合ができたことに井上監督は喜びを感じている様子だった。

 1アシストを決めた渡邉も「ここ最近法政は粘り強いサッカーをやれなかったのに、こういう試合ができたのはチーム全体にとって大きな勝利です。東京に残っている選手からも連絡が来ていました」と部員全員の力を結集して粘り強さを見せられたことを喜んだ。次の対戦相手が国士舘大に決まり、「国士はこういう一発の大会に強くて昨年も優勝しています。こちらもインカレ出場がかかっているので、迷いを出している暇はありません」とこの試合のような粘り強さを見せ、全力で勝利を目指す構えだ。

 一方、阪南大の朴成基監督は「2日前の法政大と関西大の試合を見て、シードチームの難しさを感じました。相手は勢いに乗っていて、前半は我慢比べになって、このまま終われると思ったのですが、魔が差してしまいました」と前半終了間際の失点を悔やんだ。「この後リーグ戦やインカレもあるので、次につなげられれば」とこの経験を今後に生かそうとしていた。

 また、この試合は阪南大は別の意味でも注目を集めていた。阪南大はベガルタ仙台と縁が深く、MF梁勇基、MF松下佳貴、DF真瀬拓海、MF工藤蒼生と4選手を仙台に送り込み、在籍している仙台ユース出身選手も2人先発、1人はベンチ入りした。このため、仙台の多くのクラブ関係者や阪南大卒業生の選手たちが見守る中での試合となった。

 地元宮城県出身MF工藤紫苑(2年=仙台ユース)は高校時代までのFW、サイドハーフから今年になってボランチに転向した選手。朴監督は「入学当初は兄の蒼生と違ってFW、ワイドの方が良いと感じていましたが、運動量の多さやいろんなところに絡んでいけるのでボランチにしました」とコンバートの理由を説明。工藤は「自分の強みはセカンドボールを拾ったり、相手の攻撃の起点をつぶしたりするところです。うまく攻撃につなげるプレーを意識しています。ボランチは小学生からやっていなかったので、最初ポジショニングが分かりませんでしたが、たくさん試合に出やるべきことが少しずつつかめています」と多くの仙台関係者の前で新たな姿を見せることができた。「ベガルタの阪南OBの方も来てくださってユース監督や地元の人の応援があったので良いところを見せたかったです」と多くの人の応援に感謝を語った。

 もう一人フル出場した中田も「自分がメンバーに入ったということは起点にならなければいけなくて、それがストロングだったので、競り合いでもっと勝たなきゃいけませんでした」と反省したが、それでも終盤のヘディングシュートなど長身を生かした大型ストライカーとして活躍は見せた。「予選の時点で宮城県で開催される話を聞いて、何が何でも勝ってこの大会に出たかったです。仙台ユースのチームメイトの保護者まで来てくださって嬉しかったです」と念願叶って宮城県開催の全国大会に出場できた喜びを語っていた。

「MF鈴木梨(3年=仙台ユース)も出したかったのですが、大怪我から復帰したばかりでリードした時のクローザーで使おうと思っていました」という朴監督。勝利は飾れなかったが、阪南大にとっても宮城県開催での公式戦は特別な思いがあったようだ。

(取材・文 小林健志)
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小林健志
Text by 小林健志

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