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[MOM895]富士大FW菅原新(4年)_電光石火の逆転劇で初の全国ベスト8、地元岩手から中心選手を

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見事な逆転勝利を飾った

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.3 総理大臣杯2回戦 総理大臣杯2回戦 富士大3-2日本経済大 セイホクパーク石巻フットボール場]

「正直、先に点を取られても負ける気がしなかった。それは予選からずっとあって、今日も応援の人たちとか、サポートの人たちの力が大きかったと思います」。後半11分に決勝点になった逆転ゴールを決めたMF菅原新(4年=専大北上高)は、そう言って充実の汗をぬぐった。

 富士大(東北)が初のベスト8に勝ち上がった。前半で2失点した富士大だったが、後半に入ると一気に反撃を開始。4分にMF寺崎朋範(3年=佐賀東高)の左足弾で1点を返すと、同8分に寺崎の蹴った左CKのこぼれ球をDF本宮周東(2年=明秀日立高)が蹴り込んで同点。そして同11分にはまたも寺崎の左CKから、ニアで合わせた菅原のヘッドで大逆転に成功した。

 実は0-2ビハインドは地域予選で経験していた展開だった。東北地区予選準決勝の八戸学院大戦と決勝の仙台大戦は、いずれも前半を0-2で折り返しとなり、準決勝は後半に3得点を決めて延長戦の末に勝利。同じく延長に持ち込んだ決勝は惜しくも競り負ける結果となったが、ここでも「必ず追いつく」粘りをみせていた。

 そして本戦1回戦の周南公立大(中国2)戦でも、前半7分に先制を許す展開を逆転でものにし、大学生の全国大会では学校史上初の勝利を手にしていた。

 ただいくら経験があるとはいえ、決して好ましくはない展開。「まずは表情を変えろ」「立ち上がりと同じように入れ」と、ハーフタイムはあえて声を張り上げないようにして選手を鼓舞したという高鷹雅也監督も、「変に自信を持っている選手がいる。次は中京大学さんなので、(このままだと)5-0、6-0のような試合になってしまう」と危機感を強め、イレブンにさらなる奮起を促した。

 全国区では野球の強豪校として知られる富士大だが、サッカー部も2001年より本格強化を開始。全国レベルではなかなか勝てない時期が続いたが、昨年出場した天皇杯では2回戦に進出。FC東京と対戦する機会を得ると、主将を務めたDF志村滉は卒業後に松本山雅FCに入団した。

 最近は九州にスカウト網を広げており、この日1ゴール1アシストの寺崎は佐賀東出身。今年の1年生には鹿児島県の強豪である神村学園高から5人の選手が入部するなど、さらなる強化が進んでいる。

 しかし学校は岩手県花巻市に所在。岩手県出身でもある高鷹監督は、選手のメンバー表の前所属の欄に岩手のチームの名前が多く並ぶことが理想だと語る。「岩手の高校生は(サッカーを)1チームで2、3人続ければいい方。ゼロなんてチームもいっぱいありますから」。その意味でも10番を託される専大北上高出身の菅原には、より大きな期待が寄せられている。

 菅原も「入学当初から監督には、地元の選手が活躍することでチームを引っ張ってほしいと言われてきた」と自覚する。だからこそ、10番を背負う中心選手として、学校史に名を残せたことに安堵する。ただまだ戦いは続く。「うれしいけど、まだ終わりたくない」。言葉に力を込めた背番号10は、「“全国2勝以上”がチームの目標。まだここで終われないという気持ちです」と次戦の勝利を約束した。

(取材・文 児玉幸洋)
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児玉幸洋
Text by 児玉幸洋

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