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[adidas UEFA Young Champions 2014世界大会]優勝候補ポルトガル撃破も・・・若き“日本代表”は得失点差に泣き決勝進出ならず

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 “日本代表”はファイナル進出ならず――。5対5のミニゲーム形式で優勝を争う「adidas UEFA Young Champions 2014世界大会」に出場した日本は、優勝候補筆頭と見られた地元・ポルトガルに2-1で勝ったものの、1勝1分1敗で並んだポルトガルに得失点差で1点下回ってリーグ戦3位に終わり、上位2チームが進出した決勝へ進むことができなかった。大会は決勝でポルトガルを3-1で下したブラジルが優勝した。

 GK津村和希(ヴィテス福岡FC)、野寄和哉(CAグランロッサ)、薮井大和(Jフィールド岡山FC)、梅津克貴(アスペガス生駒FC)、水野裕太(駒沢サッカークラブ)、天野悠貴(FC東京U-15むさし)の中学生6人による世界挑戦は悔いの残る形で終わった。「UEFA チャンピオンズリーグ(CL)2014」決勝開催地であるポルトガル・リスボン市街地で行われているチャンピオンズ・フェスティバル会場内に設置された特設ピッチ。CL決勝前日ということもあり、チャンピオンズ・フェスティバル会場には非常に多くの人々が訪れ、「adidas UEFA Young Champions 2014世界大会」も400~500人ほどの観衆がスタンドからピッチへ熱視線を送っていた。試合会場裏側の大モニターにも試合映像が流されるという盛り上がり、独特の雰囲気の中、“日本代表”は元日本代表DF宮本恒靖氏の指揮の下で世界へ挑戦した。

 1試合10分間のリーグ戦で日本はブラジル、アメリカ、ポルトガルの順に対戦。開幕戦へ向けて集中力を高めた後に他国チームの不備によって試合順が二転三転する不運があり、国内の「日本代表選抜大会」よりもゴールが大きく戸惑った部分もあったという。加えてポルトガルがベンフィカ、ブラジルがコリンチャンスという名門クラブの単独チームだったのに対し、日本は「日本代表選抜大会」の優秀選手による即席チームという不利もあった。そして主将の津村が「優勝するつもりでやったのでめっちゃ悔しい。気持ちの面が一番大事だった。みんな硬くてリズムがつくれなかったし、自分自身も日本を代表してゴールを守っているという意識が全然足りなかった」と悔やんだように、初戦、2戦目は気持ちの面で隙があったことが、力を出し切れなかったことが、チームを決勝から遠ざけた。

 ブラジル戦で先に決定機をつくり出したのは日本だった。開始20秒で右中間から天野が放った強烈な一撃がゴールを捉え、野寄が直接FKでゴールを狙う。運動量の多い日本がブラジルを押し込む形となったが、立ち上がりを凌いだブラジルが徐々に前へ出てくる。日本は前線が深い位置でボールを収めることができず、また攻撃から守備への切り替えも遅かったために、相手のカウンターで簡単に数的不利、ピンチに陥った。そして6分、正面右寄りの位置でFKを与えると、壁が不十分で空いていた左隅へシュートを決められて先制点を献上。そして直後にもミスからカウンターを食らい、0-2で敗れてしまった。 

 負けられない状況になった日本は開幕戦の20分後に同じく1敗のアメリカと対戦。立ち上がりに勢いがあった日本は開始15秒、右サイドでボールを受けた梅津が右足シュートをゴールへ突き刺して幸先良くリードを奪う。だが、直後に同点に追いつかれると、3分には左サイドを薮井が抜け出すも決めきることができず、そのカウンターから失点して逆転されてしまう。さらに6分には再びカウンターから失点して1-3。残り4分で2点差となった。だが、これでようやくスイッチが入ったか、集中力、そしてボール、ゴールへの執念が増した日本はここから猛攻を繰り出す。

 7分、左キックインからDFを背負って受けた梅津が鋭いターンでDFを外し、右足シュートを決めて1点差。さらに8分には交代出場の野寄がDF2人をかわして左足シュートへ持ち込むと、9分にも細かいパス回しからチャンスをつくる。そして試合終了間際の10分、右サイドでボールを受けた水野が絶妙な切り返しで1対1を制すと、ゴールライン際まで切れ込んで出したラストパスをファーサイドの野寄が押し込んで同点に追いついた。大会通じて冷静な守りを見せていた天野中心に守備が安定していた日本はさらに終了間際、抜け出した野寄が倒されてFKを獲得。だが野寄が自ら放った右足シュートは相手の厚い守りに阻まれ、3-3で試合終了を迎えた。

 勝ち切ることはできなかったものの、2点差を追いつき、続くポルトガルとの最終戦の結果次第では決勝進出の可能性があった。その大一番を前に「1つくらいは勝たせてあげたい。技術論よりもこういう方がいいと思った」という宮本監督は「どれだけ上手くても気持ちがないと勝てないぞ! 日本を代表する自覚、誇りを持って最後勝とうぜ!」とゲキ。この言葉で選手たちは奮い立った。薮井の右足ボレーや縦へ仕掛けた水野の右足シュートなどで攻める日本に対し、ポルトガルは3分に鮮やかな崩しから先制点を奪う。それでも日本は4分、梅津の右足FKがGKの横を抜く。これはDFのスーパークリアによって阻まれたが、宮本監督から「ラインを上げ過ぎず、1対1では中を開けないで、バランスを見て守備をコントロールしよう」と個人的に指示を受けていた天野が上手く相手を外側へ追いやってボールを奪うと、これまでの試合に比べて守備意識が高まった各選手が献身的に自陣へ戻り、好守から一気に前線へ駆け上がる。

 そして7分、左サイドの梅津からのパスを受けた野寄がカットインから左足シュートを決めて同点。直後にはカウンターから「咄嗟に出た。無意識でやっていた」という“裏街道”で抜け出した薮井がゴール正面左寄りの位置でFKを獲得する。そして「壁に隙があったので、空いているところへ思い切り打った」と薮井が右足を振りぬくと、ボールは豪快にゴールへ突き刺さった。終盤、チームを救ったのは主将の津村だ。9分、中央でフリーとなった相手の決定的な一撃をワンハンドでストップするなどビッグセーブを連発。日本はカウンターから迎えた3点目のチャンスを決めきることのできなかったものの、2-1でポルトガルを撃破した。

 CLであれば、得失点差ではなく、勝ち点で並んだポルトガルとの直接対決に勝利している日本が2位となるところ。ただ、今大会のレギュレーションは勝ち点が並んだ場合、得失点差で順位を決めたため、日本は1点差で決勝進出を逃した。梅津は「宮本監督の言葉でみんな気合入りました。あと1試合やりたかった」と唇を噛み、野寄は「課題は気持ちの部分が多かった。(優勝した)ブラジルとも全然やれる」と悔しがった。大会終了後、宿舎へ戻った選手たちは「悔しいです」「吹っ切ってきたい」と自主的にボールを持って近くの公園へ。日本の同世代で彼ら6人だけが経験した今大会を糧に成長し、いつか掴むであろう「次」の世界へ挑む機会でこの悔しさをぶつける。

[写真]ポルトガル戦の7分、日本は薮井が決勝ゴールを決める

(取材・文 吉田太郎)

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