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プロのスカウトをも唸らせた「THE CHANCE」関西ラウンド、滝川二司令塔ら7名がジャパンファイナルへのチケットつかむ!

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 ナイキジャパンは14日、大阪府堺市のJ-GREEN堺で、世界で戦える若きフットボールプレーヤーを探す世界規模のスカウトプロジェクト「THE CHANCE」のセミファイナル「関西ラウンド」を開催し、7月21日と22日に都内近郊で行われる「ジャパンファイナル」へ進出する7名にGK亀岡秀平(桜宮高)、DF貫井優也(東大阪大柏原高)、MF和田夏紀(枚方FC)、FW山本知伯(県立西宮高)、FW早田晃盛(久御山高)、MF高畑智也(滝川二高)、FW木下稜介(滝川二高)を選出した。

「THE CHANCE」とは世界中から、プロ契約を結んでいない若き有能なフットボールプレーヤーを発掘するビッグプロジェクト。世界55か国で開催される各国内選考会を経て選出された計100名がスペイン・バルセロナで行われるグローバルファイナル(8月)に参加し、そこで実力、ポテンシャルを評価されて最終16名に選ばれれば、マンチェスター・U(イングランド)やユベントス(イタリア)などビッグクラブへのスカウティングツアーでスカウトやコーチたちの前でプレー、アピールすることができる。すでに過去の「THE CHANCE」を経て欧州でプロ契約を結んだ選手もおり、若手にとっては文字通り世界へ飛び出すための「CHANCE」となっているが、今回、国内最終選考会の「ジャパンファイナル」(全国4か所のセミファイナルなどを突破した計50名が参加)へのチケットを懸けたセミファイナル「関西ラウンド」には「海外行きたいし、ジャパンファイナルの3人には残りたいと思った」という名門・滝川二の司令塔・高畑ら関西の高校生と大学生計54名が参加した。

 今回、選考委員を務めたサンフレッチェ広島の足立修スカウトが「正直、ボクが思っていたよりも(レベルが)高かったです。選べなかった選手でもこれは将来的に面白いなという素材はいました」とプロのスカウトをも唸らせた才能たちによる“サバイバル合戦”。跳躍力測定と20m走測定から始まったセレクションは続いて5対5のミニゲーム(10分間)4本を行った。序盤は全体的にやや元気のない印象だったが、ミニゲームでは高畑やMF丸山大(小野高)、DF今野隆平(ウィザーズ)らが正確性やアイディア、スピードなどでアピール。DF森井健太(桜宮高)が深いスライディングタックルで突破しようとする相手を一発で仕留めるなど、徐々に緊迫した空気が広がっていく。

 5人のスカウト陣に一つひとつのプレー全てをチェックされている緊張感。また小雨が降りやや涼しさもあった午前から快晴となり、気温の上がった午後のポジション別テストでは、中盤とSBが3対3のミニゲームを連続して5本行い、FWとCBはハーフコートで3-2の攻守に取り組むなど体力的にも過酷なメニューとなった。ただ「あまり有名じゃないので、ここで一発出て全国に名を連ねたいという思いはありました」という貫井優が1対1で強さを発揮し、「自分はスピードでぶち抜くタイプだと思っています。スピードに乗ってのドリブル突破ができた」という早田が自分の持ち味を出して評価を勝ち取っていく。54名それぞれが、いいパフォーマンスを出そうとどん欲。木下がプレー後も他の選手たちへ厳しい要求を口にし、またゴールを決めた選手が好パスを出した選手の下に駆け寄って感謝の意を示すなど、選手たちは自身のアピールと同時にライバルたちとの連帯感も向上させていた。

 全国大会出場の実績のある選手でも、自身の力を発揮できなければ振るい落とされてしまう厳しい1次選考。この第1関門を突破した33名が11対11のゲームテストで最後の気力を振り絞った。A、B、Cの3チームに分かれて30分3本を戦ったゲームテストではまず亀岡と和田、山本らが所属したAチームと高畑、貫井優、早田のプレーしたBチームとが対戦。Aチームでは中盤で精度の高いダイレクトパスと足技を見せる和田や非常に落ち着いたボール捌きで中盤を支配していたMF佐藤緑平(久御山高)が存在感を発揮する。そしてインパクトを残したのは「(自分の武器は)スピードとフィジカル、縦への突破。ここでやってもそれは通用しました」という山本だった。11分、右SB今村麗(神戸学院大)の縦パスで抜け出すと、GKをかわしながら左足シュートをゴールへ沈める。23分にも左サイドからのパスを受けると、ドリブルで仕掛けて左足シュートをゴール右隅へねじ込んだ。Bチームも展開力を発揮していた高畑やアグレッシブなプレーが目立ったMF片山滋永(エウロパ=スペイン)を中心に反撃したが、Aチームが勝利した。

 Aチームと木下がプレーしたCチームとの一戦では3分、右サイドで2人をかわした木下のラストパスをFW貫井拓也(東大阪大柏原高)が難なく押し込んでCチームが先制する。Cチームは抜群の存在感を発揮した木下と貫井拓が前線で強さを発揮。最終ラインではCB大塚雄太(甲南大)が声でゲームをコントロールし、機動力を備えた今野が思い切った攻撃参加を見せる。一方、これが最後のアピールチャンスとなったAチームは「最後やぞ!」という声がチーム内から出てくる好雰囲気。その中で楔への丁寧な左足パスを入れ、素早い動き出しも見せていたSB山本和也(滝川二高)や個人技で右サイド打開したMF高橋広樹(同志社高)らが積極的にゴールを目指していた。

 最後の対戦カードとなったBチーム対Cチーム戦は8分にスピードでDFを振り切った早田(Bチーム)が左サイドから切れ込んで先制ゴール。対するCチームはMF平井淳也(葺合高)のスルーパスから木下がクロスバー直撃の右足シュートを放つ。BチームもFW細井優希(市立西宮高)がDFのマークを巧みに外して決定的な右足シュートを打ち込んだ。さらに高畑が右サイドを鮮やかな個人技で打開し左足アウトサイドでラストパス。試合終了間際にはその高畑が豪快な左足ミドルとハーフウェーライン付近からの超ロングシュートでゴールを狙った。ただCチームは木下のPKで同点に追いつくと、24分には右クロスをMF吉野博都(京都橘高)が落とし、最後は木下がゴールへ押し込んで逆転した。

 合格発表では「本当に受かって感激です。本当にオレ受かると思っていなかったので。自分の持ち味というところはあまり出せなかったと思うんですけど、楽しもうと思って。必死にボールばっかりに行っていました」という和田ら合格者の半数はそれぞれ驚きの表情。関係者によると、今回も選考は困難を極めたとのことで本当にわずかな差によって明暗が分かれたようだ。敗退した選手たちに「これが最後ではない。我々(スカウト陣)の見落としもあるかもしれない。悔しい思いをあすからぶつけて選考委員を見返してほしい」と声をかけていた足立スカウトは、選考のポイントについて「ストロングポイントは重視しました。オンのところで強烈なパワーを持っている選手がいました。次も、その次も一発セレクションというところがあるので、目立つところがある、オフのところよりもオンのところを重視してみました。オフのところももちろん大事なんですけど、それはチームを作っていく中では必要だと思いますが、(セレクションという)寄せ集めのところでまずは自分のストロングポイントを出さないと目立っていけない。そこを考慮したところはあります」と説明していた。

 今回は東北、九州に続く3回目のセミファイナルで初めてGKの合格者も出た。年代別のメキシコ代表歴を持つジョージ栗山スカウトは合格した亀岡について「GKコーチに教わったことがないようだが、それを考えると凄く良かった。まだできないことがあるが、ジャパンファイナルまでの一週間でできることをやってきてほしい」。セレクションで自分自身の実力を発揮すれば、特殊なポジションであるGKにももちろんチャンスはある。亀岡は「(きょう発揮することのできた)声も必要だと思うし、ここでミスしたことを修正して次回はミスをなくして行って、できるだけ完成形にもっていけるようにしていきたいと思います」とジャパンファイナル突破へ向けて意気込んでいた。
 
 今回合格した選手たちにとっては世界まで壁はあとひとつ。木下は「卒業したらアルゼンチンかどっか、行くつもりでした。普段からプレミアとかも見ている。ジャパンファイナルではしっかり相手を翻弄して遊ぶぐらいの気持ちでやりたいです」と宣言した。セミファイナルは16日の「関東ラウンド」を残すのみ。100名前後の選手が参加する予定となっている「関東ラウンド」で最後の11名が選出され、「THE CHANCE」国内スカウトを統括する川崎フロンターレ・風間八宏監督の目の前でプレーすることになる「ジャパンファイナル」出場メンバー50名がいよいよ出揃う。

(取材・文 吉田太郎)

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