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小倉会長、最後のFIFA理事会&総会を振り返る

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 日本サッカー協会は9日、公式HPで連載されている小倉純二会長のコラム「今日もサッカー日和」を更新した。第17回は「最後のFIFA理事、総会に出席して」という題で寄稿されている。

以下、公式HPよりコラム全文

 今年のキリンカップは、大会史上初めて3チームが優勝を分け合うという結果に終わりました。
 今回、ザッケローニ監督は、1-3-4-3のシステムに挑戦しました。ペルー戦はFIFAA総会でチューリッヒに出張していたため見ていないんですが、一昨日のチェコ戦は、非常に面白い試合でした。日本は63.2%ものボール支配率をマークしながらなかなかチェコの牙城を崩せず、スコアレスドローに。相手GKにやられたという感じですね。素晴らしいセービングでした。
 TVの平均視聴率も23.3%と高く、仙台でも高視聴率がマークされたそうです。今回、キリンさんと一緒に被災地の5会場でパブリックビューイング(チェコ戦)を実施したのですが、皆さんが楽しんでくださったので、今後も取り組んでいきたいと考えています。

▽FIFA理事退任

 6月1日のFIFA総会をもって私は、2002年から9年間務めたFIFA理事を退任しました。
 日本人のFIFA理事は、1958(昭和33)年に就任した市田左右一常務理事(当時)と1969(昭和42)年就任の野津謙会長(当時)に続き、私で3人目。実に33年ぶりの就任でした。
 FIFAの理事であることは、世界のサッカーの動向を決める企画に参画でき、FIFAの各種委員会の動きをいち早く把握することができる。この情報量の差は、理事とそうでないのとはかなりの違いがあります。
 また、各国で起こっている問題や様々な課題を早く入手できることによって、JFAはもちろん、アジア各協会に対しても早い段階から起こりうる問題について警鐘を鳴らすことができます。
 先日の総会で各国の関係者から「日本はアジアでナンバー1なんだからFIFA理事のポジションを保持すべきだ」とか、「なぜアジアには定年制があるんだ?」などと言われましたが、日本サッカーの実力と存在感はサッカーの国際舞台でもしっかり認知されつつあります。
 それだけに、AFCの理事選で田嶋幸三JFA副会長兼専務理事がFIFA理事の座を引き継げなかったのは残念ですが、「タシマはまだ若いのだから、AFCでしっかり経験してからFIFA理事を目指すのも遅くない」というのが一致した意見で、今は、AFCテクニカルコミティーの委員長として、また、FIFAではタスクフォースブットボール2014とクラブワールドカップ組織委員会の委員として経験を積んでいます。
  私が就任した頃と異なり、今ではAFCに何人もの日本人スタッフを派遣し、また、アジアの各国に指導者を派遣するなど、JFAは積極的にアジア貢献活動を推し進めています。選挙となるとそういった貢献度とは別の作用が働きますので一筋縄ではいきませんが、今後も世界の至る所に出ていって日本の存在感を示し続けていきたいと考えています。

▽日本のクリーンさを生かして

 FIFAの理事会・総会で2007~
2010年の収支と2012年の予算が承認されました。この4年間のFIFAの総収入は約42億ドル(約3,400億円)にも上ります。それだけにワールドカップを巡って様々な疑惑や憶測が取りざたされます。昨年の2018/2022年のFIFAワールドカップ開催地決定にしてもアフリカ連盟と北中米・カリブ海連盟の理事が賄賂をもらったと嫌疑をかけられるなど、不穏な動きがありました。
 今回の総会でブラッター会長が4期目の当選を果たしましたが、この会長選においても不正疑惑でAFCのハマム会長とFIFAのジャック・ワーナー副会長(CONCACAF会長)が1カ月間の職務停止となっており、今後、FIFAの倫理委員会がどういう判断を下すのか注目されています。
 FIFAの倫理委員会は独立した組織で、ブラッター会長は今後こういった不正がないよう、「サッカー界を脅かす危機との戦いに透明性およびいかなる妥協をも許さない必要がある」と訴え、倫理委員会を強化し、不正や疑惑を根絶したいという強い意向を示しました。
 また、倫理委員会のメンバーも総会で選出し、ワールドカップの開催地の決定についても現行の、24人の理事の投票で決める方法から208の加盟国の投票で決めたいと訴えていました。
 メディアでも論じられている通り、208カ国の投票となると逆に新たな不正を生む可能性があり、なかなか難しい問題だとは思います。クリーンさで高く評価されている日本としては、FIFA理事だろうが理事でなかろうが、これまでに築いた、FIFAや各国との人脈を生かし、ことあるごとに世界に対して公正さを訴えていきたいと考えています。
 4年後には再びFIFA理事選が行われます。日本は何度でもその座の獲得に挑戦していきますが、JFAの公明正大さと真摯な仕事ぶり、地道に続けているアジア貢献活動などで実力を示していきたい。その方が長く続きますし、厚い信頼を受けることで発言力も増すはずですから。

▽ドイツサッカー連盟とパートナーシップ協定を締結
 
 昨日、ドイツサッカー連盟とパートナーシップ協定を締結しました。2005年のフランス連盟、2010年のスペイン連盟、今年4月のシンガポール協会に続き、4協定目となります。
 ドイツサッカー協会(DFB)との交流は、1960年にデッドマール・クラマー氏を日本代表のコーチに迎えたのが始まりですから、実に50年のつながりがあります。日本代表はクラマーコーチに薫陶を受け、64年の東京オリンピックでベスト8に、68年のメキシコオリンピックで銅メダル獲得という快挙を成し遂げました。
 クラマーさんを招聘して50年、しかも今年は日独交流150周年という記念すべき年であり、またFIFA女子ワールドカップが開催される年でもある。そういう年にDFBからパートナーシップ協定の申し入れをいただいたのは本当に喜ぶべきことですし、アジアでは日本だけといいますから光栄なことだと考えています。
 もちろん、ドイツとはこれまでも選手育成や指導者養成などサッカーの技術的な部分での交流はありましたが、今回はマーケティングやリーガルの部分で教えを請うということで、『JFA2005年宣言』で組織、チームともにトップ10に入るという目標を掲げている日本にとって、非常に意義あることだと思っています。
 サッカーを通じて世界の国々と交流できるというのは、本当にありがたいこと。こういった協定によって、日本はよりインターナショナルになり、サッカーも組織も成熟していくはず。また、こういった交流が、各国との文化交流や国際平和を促進するものになると思っています。

財団法人 日本サッカー協会
会長 小倉純二

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