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[総体]選手権日本一の星稜、新鋭の挑戦、重圧跳ね除けて「成長するために大事」な全国へ:石川

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[6.8 全国高校総体石川県予選決勝 星稜高 1-0 鵬学園高 金沢市民サッカー場]

 平成27年度全国高校総体「2015 君が創る 近畿総体」サッカー競技石川県予選は8日に決勝を行い、昨年度の全国高校選手権優勝校である星稜高がMF片山浩(2年)の決勝ゴールによって初優勝を狙った鵬学園高に1-0で勝ち、4年連続24回目となる全国総体出場を決めた。

 12年度は選手権で全国4強。13年度は選手権全国準優勝、そして昨年度は悲願の日本一に輝いた。星稜は近年、夏から冬にかけて非常に上手くチームを仕上げてきている印象があるが、河崎護監督は全国総体について「成長するために大事な大会。大会に出ることは大事」と口にする。また、この日指揮を執った木原力斗コーチが「夏の時に自分たちがどれくらいのレベルかということも分かりますし、全国の厳しい環境の中で試合できるということも彼らをひとつふたつ成長させる。(予選で)試合に出れない子も目標ができますし、チームにとって成長できるきっかけなのかなと思います」というように、夏の全国舞台で厳しい試合を経験し、自分たちの力を知り、何が必要なのか実感することが、秋、冬へ成長する力になる。星稜はその全国総体への出場権を苦しみながらも、“狙い通り”に獲得した。

 能登半島の七尾市から現れた新鋭・鵬学園もカバーリングに優れたCB弥村光広主将(3年)、左利きの10番FW弥村信幸(3年)の「弥村ツインズ」や負けん気の強いプレーを見せるMF千葉東泰供(2年)、安定感光るGK西本時誉(3年)ら好選手揃うチーム。就任4年目の赤地信彦監督が「もちろん、(星稜を)食うつもりでやってきました」と口にしたように、打倒・星稜を目指すチームは堂々とした戦いぶりで渡り合う。一方、星稜はロッカールームでのミーティングにだけ参加してベンチには入らなかった河崎監督が「ウチの良さも少し消えるかもしれないけれど、システムをちょっと変えて、まず完璧に相手のいいところを消す」と説明したように、普段の4バックから東方智紀(3年)、六田邦宏(2年)、岡田勇斗(3年)の3バックへ変更。相手を圧倒するような戦いではなかったものの、相手に流れを与えなかった。

 立ち上がり、星稜はU-17日本代表MF阿部雅志主将(3年)、10番FW大倉尚勲(3年)がPAで突破を図ると、9分にはFKから東方がヘディングシュート。サイドの高い位置でMF村中龍仁(3年)やMF大橋滉平(3年)がボールに関わるが、全体的にクロスの精度を欠き、鵬学園GK西本に次々とキャッチされてしまう。一方、鵬学園はボールを奪ってから、MF小坂祐心(3年)や千葉東を軸とした攻撃でしっかりとボールをつなぎ、またセカンドボールもよく拾ってフィニッシュにまで結びつける。17分には千葉東のスルーパスにMF越田瞬(2年)が反応。これは星稜GK高橋謙太郎(2年)が出足の良い守りで阻んだが、こぼれ球を越田が落として千葉東が右足シュートを打ち込む。また33分には右SB宮本和佳(3年)の強烈な左足ミドルがゴールを捉えた。

 星稜も前半終了間際、FKを大倉が頭で繋いでMF川渕陸(2年)が飛び込んだが、無得点で前半を終えた。後半立ち上がりはサイドチェンジを有効に活用した鵬学園のペース。まずは1分、越田が左サイドからPAへ割って入り、5分には右サイドでボールを受けた弥村信のアーリークロスからFW吉野隼平(3年)が決定的なヘディングシュートを放つ。だが、GK高橋のビッグセーブで阻んだ星稜は18分にもピンチを迎えたが、MF川口励二(2年)のシュートをDFがブロックして得点を許さない。鵬学園の赤地監督は「(サイドチェンジに加えて)もうちょっと2対1をつくらなければいけなかった」。星稜はアタックされるシーンはあったが、「星稜は全員攻撃全員守備、というところで全員でハードワークしてよく守備していた」(木原コーチ)。対人に優れた3バックやGK高橋が最後の局面で確実に封じて、絶対にリードを許さない。

 王者には精神面での余裕もあった。阿部は「前半0-0、後半も0-0でいいと言われていたので、『まだ延長戦がある』とオレが声かけて落ち着かせて『頭真っ白になるな』と。安心して見ていました」。後半半ば以降は星稜のプレッシャーの前に鵬学園はボールを繋げなくなり、クリアしたボールを連続攻撃されてしまう。星稜は13分、大倉の決定的なシュートがDFに当たり、クロスバー直撃。21分には村中が右サイドを突破してクロスを放り込む。また左サイドでDFを外してチャンスメークする大橋らが相手を敵陣に押し込んだ星稜は、29分に決勝点を奪った。左サイドを切れ込んだFW根来悠太(3年)の折り返しをMF片山浩(2年)が「最後仲間を信じて走ったら、ちょうどボールがこぼれてきて気持ち入れて押し込むだけでした」と右足で決めて先制。鵬学園も交代出場のMF中村愛暉(1年)が強引に左足シュートを放ってスタンドを沸かせるが、星稜が“狙い通り”の無失点で全国切符を獲得した。

 星稜は13年度の全国選手権5試合中4試合、昨年度も全国選手権5試合中3試合で無失点だった。一発トーナメントを勝ち抜くための術、何が大切かということを“勝者”である先輩たちから学んでいる星稜の選手たちはそれをピッチ上で表現。大橋は「春、新チームが始まったあたりは大量失点が毎試合続いてチームでもどうやったらいいと考えてやってきた中で、プリンス(リーグ)始まってからまず『守備から入って失点をゼロで抑えるということは、絶対』とチームとしてやってきた。その目標があってプラスアルファ、攻守の切り替えがあったり、全員守備することであったり、失点ゼロに抑えるというコンセプトができてからチームが方向に持って来れている」と口にする。そしてこの日は相手の良さもしっかりと消して「ゼロ」をやり遂げた。

 毎年、各校が星稜をターゲットにして戦う石川県予選。阿部は「毎年厳しいゲームになるんですけど、乗り越えられたのは自信になる。スタッフからも『インターハイ出られなかったら、チームとして相当辛いことになる』と言われていた。スタッフ、観客、世間からもいろいろなプレッシャーを与えてもらってその点ではいい経験ができている」と喜び、全国大会でも各校が日本一チームである星稜を倒すために立ち向かってくる環境を歓迎した。目標は日本一。大橋は「優勝が一番の目標ですし、残り時間少ないですけど、それに向けてしっかりとやっていくだけです」と誓った。河崎監督は「格になる選手が、DFのリーダーになれる子とか、ゲームメークでちゃんとボール持てる子とか、ストライカーとか個が伸びて行かないといけないし、それだけの素材があるかと言えば今年はまだない」と厳しいが、夏の全国という目標の下、チーム内の競争も加速させて「打倒・星稜」の重圧を跳ね除けるチームになる。

(取材・文 吉田太郎)
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