beacon

[総体]青森山田が「プレミアの意地」で粘る米子北を振り切り、4強入り

このエントリーをはてなブックマークに追加

[7.31 全国高校総体準々決勝 青森山田高 2-1 米子北高 広島広域公園第一球技場]

 プレミアリーグ勢の意地がある。全国高校総体サッカー競技の準々決勝が31日に行われ、青森山田高(青森)は2-1で米子北高(鳥取)を下して4強入りを決めた。

 ほかにベスト4に残ったのは、流通経済大柏高、市立船橋高(ともに千葉)、昌平高(埼玉)の3校。昌平以外は、ユース年代最高峰の高円宮杯U-18プレミアリーグEASTで切磋琢磨しているチームだ。青森山田の黒田剛監督は「選手には、プレミアのプライドを絶対に忘れるなと言っている。4つのうち3つがプレミア勢ということには意味があると思う。もちろん、マークもされるし、研究もされる。それでも(他リーグより高いレベルで高め合っているという)プライドを持ってやってほしいと思っていた」と、アップセットの起こりやすいトーナメント戦でも高い実力を発揮して4強まで進んで来た自負をのぞかせた。実際に、試合では米子北に苦しめられたが、それでも勝ち切るという強さを示した。

 試合の前半は、米子北が得意とする蹴り合いに持ち込んだ。3トップで前線から激しくプレッシャーをかけると、相手にロングボールを蹴らせ、競り合った後のセカンドボールを回収。そこから速攻につなげた。大型FW伊藤龍生を頂点に据え、その周囲を小柄な石田大成倉本峻汰が動き回るのだが、この小兵が守備にとっては面倒なことこの上ない。追っても無駄、寄せても無駄と思われる場面でもいちいち競り合ってくるため、守備側は気を抜けない。その上、青森山田の黒田監督が「相手は小さい選手もヘディングが強かった」と認めたように、いずれも空中戦が強く、容易には跳ね返せないため、青森山田はじりじりと攻め込まれた。しかし、PA内は、青森山田の守備意識も高く崩せなかった。結局、米子北ペースの中でシュート数1対1という地味な展開で前半を終えた。

 米子北は、後半から本来はレギュラー格ながら負傷明けのためにベンチ要員となっているFW崎山誉斗を前線に投入し、3トップから2トップに変更。青森山田は、前半は相手ペースに付き合ったが、後半からはポゼッションスタイルの攻撃でじりじりと相手を追い込んでペースを握った。

 試合は、青森山田が押し込み、米子北がカウンターを狙う展開へと変化した。米子北は後半4分に伊藤のサイドチェンジを受けた小橋亮介が右サイドをえぐり、折り返しを伊藤が狙ったが、ゴールの枠を外れた。6分には右からのクロスを伊藤がヘディングで合わせたが、これも枠を捉えられなかった。青森山田はペースを引き寄せながら決定機を作れずにいたが、9分、右サイドからのパスを受けたFW鳴海彰人がパワーショットをゴール右に突き刺して先制。さらに同じような展開から鳴海がポストプレーのような形でつなぎ、ジェフユナイテッド千葉入団が内定しているMF高橋壱晟がシュートを放つ決定機を作った。

 そして15分、またも右サイドから攻め込み、中央で鳴海がボールを持つと、左から走り込んだ嵯峨理久に絶好のラストパスを送り、嵯峨が楽々と決めて追加点を奪った。鳴海が「ファーストタッチをしたときに、自分に付いていたマークが(置き去りにされる形で)後ろに行ったので、ドリブルでもう1人の相手を引き付けて、MF郷家友太が中に入って来たところで、左にいた嵯峨が空いたのが分かったので、決めやすいボールを出した」と話したとおりの完ぺきな流れだった。

 苦しくなった米子北は、ダイレクトクリアをゴール方向に飛ばして反撃すると、18分に左サイドでボールを奪ったMF山室昂輝が中央へパスを流し込み、伊藤が崎山とのパス交換から思い切ったシュートを決めて1点差に詰め寄った。その後も26分にロングパスから崎山がシュートを放つシーンや、後半終了間際に右MF小橋の思い切ったダイレクトロングシュートを放った場面があったが、FC東京への入団が内定している青森山田のGK廣末陸の牙城は崩せず、試合は2-1で青森山田が制した。

 青森山田は、翌8月1日の準決勝で流経大柏高と対戦する。プレミアリーグEASTの開幕戦では圧勝しているが、黒田監督は「相手が良くなって来ている印象がある。リーグ戦と同じようにはいかないと思う」と警戒心を強めた。それでも、FW鳴海が得点ランクトップの通算7発と好調で、勢いがあることは間違いない。目指すは、2005年の初優勝以来11年ぶり2度目の優勝だ。

[写真]後半9分、青森山田は鳴海のゴールで先制(写真協力=高校サッカー年鑑)

(取材・文 平野貴也)
▼関連リンク
【特設ページ】高校総体2016

TOP