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主軸離脱も「次」の力の台頭と伝統の我慢強さ。佐野日大がPK制し、宿敵との栃木決勝へ

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PK戦を制した佐野日大高が栃木決勝へ支出

[6.14 インターハイ栃木県予選準決勝 佐野日大高 0-0(PK3-0)宇都宮短大附高 栃木グ]

 令和4年度全国高校総体(インターハイ) 「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技栃木県予選準決勝が14日に行われた。第2試合は0-0のまま延長戦でも勝敗が決せず、PK戦へ突入。佐野日大高が交代出場GK平岡倖輝(2年)の活躍によって、3-0で宇都宮短大附高との激闘を制した。
 
 5月の関東大会予選決勝の再戦で佐野日大がリベンジを果たした。佐野日大は各都県2位チームが出場した関東大会Bグループ(5月末)で日大藤沢高(神奈川)、駒澤大高(東京)を破って決勝進出。延長戦の末、前橋育英高(群馬)に敗戦したものの、強豪相手の3試合で自信を得てきた。

 その関東大会で存在感を示していた司令塔・MF向井俊貴(3年)とMF江沢匠映主将(3年)が、ともに負傷離脱するアクシデント。だが、海老沼秀樹監督が「次入ってきた子たちがしっかり繋いでくれました」と頷いたように、関東大会期間中含めて練習試合を重ねるなど緊急事態を想定して準備、強化してきた成果が発揮されている。

 佐野日大は3-4-2-1システム。GKがゲーム主将の槙田海里(3年)で3バックは右から緒形一真(2年)、青木柾(3年)、高根澤賢(3年)。右WB小竹翔真(3年)、左SB原朝哉(2年)、ダブルボランチが福田一樹(2年)と高橋篤生(3年)、2シャドーがヒアゴンフランシス琉生(3年)と熊田勇気(3年)、そして最前線に大久保昇真(3年)が入った。

 一方の宇短附も、関東大会で埼玉王者の正智深谷高から1勝。岩崎陸監督は「一人ひとり個性があって、面白いチームになってきた。栃木県の選手たちだけでできるところ見せられるには勝って行くしか無い」と野心も持つ集団は、初のインターハイへ向けて状態を上げてきていた。

 同じく3-4-2-1のGKは増田吏玖(3年)、右から冨永成柊(3年)、北村朔也主将(3年)、塚原崇人(3年)の3バック、右WB根岸元気(3年)、左WB鈴木亮佑(3年)、ダブルボランチが樋口凜斗(2年)と五十嵐達也(2年)、2シャドーが土谷歩夢(3年)と田上羅以伽(3年)、1トップを高橋凪翔(3年)が務めた。

 序盤はともに守備に重きを置きながらの戦い。試合が落ち着くと、佐野日大は前からプレッシャーを掛けて相手のミスを狙い、宇短附はDFラインから長短のパスを繋いで相手の背後を突こうとする。

 宇短附は、抜群のリーダーシップを見せる北村が判断を変えながらビルドアップ。塚原の左足フィードや樋口のスルーパスをゴール前のシーンに結びつけていた。そして、いずれもキープ力高いエース田上や土谷、高橋が高い位置からの崩しを狙う。

 だが、佐野日大は185cmの高さとスピードを兼ね備える高根澤、184cmの緒形、176cmの青木の3バック中心に強固。槙田が「自分たちは後ろに競り合いの強い選手が多い。宇短附は結構繋ぐチームだったので、切り替えのところで相手よりも速くポジションを取って繋がせないことを徹底して、それで蹴ってきたボールは自分たちの方が有利なので」と説明したように、切り替え速い守備と高さを活かした守りで相手の攻撃を食い止める。

 そして、福田らがセカンドボールを拾って最前線の大久保やヒアゴンにボールを入れる。29分には奪い返しから大久保が右足を振り抜き、34分にはロングスローのこぼれからヒアゴンがシュートへ持ち込んだ。

 宇短附は後半開始から俊足右WB小森心翔(3年)を投入。中央、サイドからエリアへ近づく回数を増やしていく。14分に縦パスから田上がPAへ切れ込み、16分には相手DFのキックをチャージした田上が独走。だが、左足シュートはわずかにゴール右へ外れた。

 佐野日大は、怪我からこの試合で復帰した槙田が安定感の高い動き。ボールを握られる時間が増えていたが、厚みのある守備でゴールを許さない。逆に前線の強さを活かした攻撃で大久保がシュートやクロスへ持ち込むシーンも。その佐野日大は10分にFW中埜信吾(3年)、25分にはFW滝口悠映政(3年)を投入する。一方、北村や増田を中心に守りの隙を見せない宇短附も、33分にFW星野慶人(2年)をピッチへ送り出す。

 互いに譲らず、0-0のまま突入した延長戦は宇短附がより攻勢に。延長前半6分、8分と正確なパスを繋いで左サイドからのラストパスへ持ち込んだ。アディショナルタイムのセットプレーでは選手権で話題となった高川学園高(山口)の“トルメンタ”も披露。だが、佐野日大の堅い守りをこじ開けることができない。

 佐野日大は延長前半開始からFW福島夢叶(3年)、同後半開始からMF今井楓翔(3年)とFW籾山陽紀(3年)を加え、運動量を維持。延長後半も我慢強く無失点を続けると、同9分に槙田を“PK戦要員”のGK平岡倖輝(2年)と入れ替えた。一方の宇短附は10+1分にDF 土岐聖也(2年)をピッチへ。だがスコアは動かず、勝敗はPK戦に委ねられた。

 そのPK戦は先攻・佐野日大の青木と小竹が連続で成功したのに対し、後攻・宇短附は1人目のシュートがクロスバーをヒット。さらに2人目のシュートは佐野日大GK平岡が読み切り、ストップする。佐野日大は3人目のシュートが枠上。だが、直後にGK平岡が連続セーブの大仕事をしてのける。最後は緒形が右足で決めて3-0。関東大会予選決勝の雪辱を果たした。

 佐野日大は我慢を強いられる時間帯も長かったが、ピッチに立った17人が佐野日大らしさを表現した。海老沼監督が「先輩たちのウリを引き継いでくれている」と評価する戦い。槙田も「去年、ベンチから苦しい試合を耐え切って勝つところを自分は見ていた。佐野日大の良さだと思っているので、そこは受け継がれているかなと思っています」と胸を張る粘り、我慢強さを示し、15年以来となる全国大会出場へ王手をかけた。

 佐野日大は、決勝で宿敵・矢板中央高と対戦する。相手は17年度選手権以降の全国大会予選で無敗。また、県リーグの佐野日大に対し、矢板中央はAチームに加えてBチームもプリンスリーグ関東に参戦中だ。海老沼監督は「全然上のリーグにいるから矢板さんとやる機会がないので、こういった時に戦って、肌で感じることが大事なので、ただ戦うだけでなく力が身につくように」と期待する。準優勝が続いているチームの目標はもちろん、勝利。槙田は「まずは自分中心に絶対に失点をしないこと。今日みたいに苦しい試合になっても慌てずにチャンスは絶対に来るので、まずは守り切って最後しっかり勝ち切れるようにしたい」と誓った。主軸不在の中でも伝統の力や強化してきた力を発揮する佐野日大が、今回こそ矢板中央を上回る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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