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決勝戦は辛勝の旭川実、北海道制覇も指揮官は不満顔「全国で勝つことが目標ならもっと」

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優勝した旭川実高は利尻島出身のDF鎌田颯太(右)らが躍動したが、定位置争いに課題も

[6.17 インターハイ北海道予選決勝 旭川実高 3-2 札幌光星高]

 メンタルの状態が、如実に反映された試合だった。全国高校総体(インターハイ)の北海道大会は17日に最終日を迎え、決勝戦は旭川実高が延長戦の末に3-2で札幌光星高を破って優勝を飾った。北海道の全国出場枠は2。両チームともに準決勝を勝った時点で全国出場が決定。なおかつ、同日のダブルヘッダーのため、ともに準決勝から多くの選手を入れ替えて決勝に臨んだ。

 勢いが出ていたのは、札幌光星の方だった。キックオフ前の円陣から気合い十分。開始早々に左クロスでチャンスを作り出すと、前半4分にはMF石田翔哉(3年)が積極的にミドルシュート。そして前半15分、左CKから飛び出した相手GKが触れずにファーへ流れたボールを1トップで先発したFW青木結道(2年)がゴールへ蹴り込んで先制に成功した。しかし、旭川実はすぐさま反撃。同25分、右MF鈴木健斗(3年)がタイミングよくハーフスペースに侵入してパスを呼び込むと、ゴール前に浮き球のパスを供給。これをFW須見奏詩(3年)が打点の高いヘディングでゴールへ流し込んで同点とした。

 1-1で迎えた後半は、圧倒的な旭川実ペース。左サイドでは、中野伸哉(鳥栖)のプレーを理想としているというDF鎌田颯太(3年)が躍動し、攻撃参加を繰り返した。最北端の稚内の西側に位置する離島、利尻島の出身。中学時代は平日に部活動でプレーしたが、島内にいる選手は全学年を通じて20名程度。週末は船で北海道本土に渡って最北端の宗谷郡付近を拠点とするクラブチームVALIENTE(バリエンテ)に参加するなど精力的にプレー環境を求めてきた鎌田は「応援してくれる人の期待に応えられるように頑張りたい」と奮闘を見せた。旭川実は後半10分、右サイドでパスを受けたFW大澤龍明(3年)が縦、さらに中央へ切り込んで左足のミドルシュートを突き刺して逆転に成功。その後もMF鈴木のカットインシュートなどで襲い掛かった。

 ところが後半28分、札幌光星は途中出場のMF片岡龍音(1年)が前方へパスを送ると、右に流れながらボールを受けたDF佐藤来音(3年)がゴール左へと鋭角シュートをたたき込んで再び同点。勝負を振り出しに戻した。旭川実がFKからDF岡本染太郎(2年)のヘディングでゴールを狙えば、札幌光星も佐藤のクロスにDF杉山寛(2年)が飛び込むなど一歩も退かず。試合は、延長戦にもつれ込んだ。

 延長戦も旭川実業が攻め、札幌光星がカウンターを狙う展開。決勝点が生まれたのは延長後半の4分。旭川実は右MFの位置に移っていたFW須見が縦に突破してクロスを供給。途中出場のMF田中裕元(3年)がゴールへ押し込んだ。試合は、3-2で終了。挑戦者の姿勢を貫いて善戦した札幌光星には手応えが残ったが、地力で勝りながら勢いを欠いた印象が否めない旭川実は、富居徹雄監督が「(3点目より)その前に決めなければいけないところがあったし、2点目も取られちゃいけなかったと思う。この雰囲気では……。全国に行くことが目標ならいいけど、全国で勝つことを目標にしている。それならもっとやれよと。(今後の出番を増やす)チャンスなのに」と不満顔。先発出場の多い主力抜きでコンビネーションの課題があることは承知の上だが、それでも個々の覇気を感じられない時間が長かった試合展開に苦言を呈した。

 3連戦、そして中1日で再び3連戦という過密日程で行われる全国大会で4強入りの目標を達成するためには、先発だけでなく総合力の勝負が必要。そのためには、全国大会までの定位置争いが必要であり、その点では課題が残る試合となった。両チームともに準決勝の先発が現時点の主力と言えるが、決勝戦で好プレーを見せた選手たちも実力は十分。この試合を経て誰が全国の舞台で飛躍するのか、楽しみだ。

(取材・文 平野貴也)
●【特設】高校総体2022

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