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絶対的な“ものさし”を手に入れたタイガー軍団の獲物狩り。前橋育英が桐生一とのプレミア対決を制して全国へ!

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前橋育英高は桐生一高とのプレミア対決を制して全国切符!

[6.19 インターハイ群馬県予選決勝 前橋育英高 4-0 桐生一高 正田醬油スタジアム群馬]

 おそらく自分たちの力は、自分たちが一番よくわかっている。プレミアリーグという絶対的な“ものさし”を手に入れた今、掲げた目標が決して大それたものではなかったことも、ここまで辿ってきた結果が証明している。そのためのファーストステップ。夏の日本一は絶対に成し遂げたい“通過点”だ。

「今年の初めから自分たちは三冠という目標を立ててやってきているので、まずインターハイは絶対に優勝という形で終えたいですし、その上でプレミアと選手権を良い形で迎えられるようにしたいなと思います」(前橋育英・齋藤駿)。

 上州のタイガー軍団が醸し出すのは、躍進の予感。令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技群馬県予選決勝が19日に開催。プレミア勢対決となった前橋育英高桐生一高の激突は、MF山田皓生(3年)の2ゴールに、DF齋藤駿(3年)とMF大久保帆人(3年)も追加点を重ねた前橋育英が4-0で快勝。5大会連続18回目の全国へと勝ち上がっている。

 桐生一にとっては、思い通りの立ち上がりだったと言っていいだろう。「向こうがフワッとゲームに入ってくれたので、『いいぞ、いいぞ』と思って、こっちもあまり行かずに、ローテンポのゲームに持っていけましたね」とは中村裕幸監督。可変気味の4バックから、左サイドにDF江原佳汰(3年)を張り出させ、DF石原翼(3年)、DF中野力瑠(2年)、DF松本結都(3年)の3枚でボールを動かしつつ、MF諏訪晃大(3年)の推進力を生かすアタックも一定の効果が。きっちりとゲームに入れていたことは間違いない。

 だが、意外な形で試合は動く。17分。桐生一は中盤での浮き球を後ろに下げると、ボールはディフェンスラインの裏へポトリ。ここにいち早く反応したのは黄色と黒の17番。突如として巡ってきた好機にも冷静に、GKとの1対1を制してゴールネットを揺らす。ここ一番で嗅覚を発揮した山田皓生の先制点。前橋育英が幸運な形で1点のリードを奪う。

 指揮官も「良い形で行けていたところで『ミスで点をあげてしまうのか』という脆さが出ましたね」と口にした桐生一は、それでもとりわけ守備は一定のクオリティを保ち続ける。38分に大久保がエリア内へ侵入し、打ち切ったシュートはMF岡村葵(3年)が身体で気合のブロック。さらに40+2分には、岡村のパスを右サイドで引き出した諏訪がカットインしながら枠の左へ外れるフィニッシュまで。「決勝戦はやっぱり独特の雰囲気もありますし、相手も桐生第一ですから」とは前橋育英を率いる山田耕介監督。前半の40分間は1-0で推移した。

 上州の虎は、後半開始早々に牙を剥く。1分。FW高足善(3年)が左サイドへ展開すると、「自分はドリブルが武器だと思っているので、しっかりそういうところを見せていかないと、この先も試合に出られないですし、ずっと左足のクロスは練習していたので」と話す大久保は切れ味鋭いドリブルから左足でクロス。山田皓生が頭で合わせた軌道は、ゴール左スミへ飛び込んでいく。2-0。次の得点も前橋育英に記録された。

 13分。今度はセットプレーの強さも見せ付ける。左サイドで獲得したCK。今や欠かせない戦力として躍動の続くMF青柳龍次郎(3年)が丁寧なキックをファーへ届けると、「龍次郎から良いボールが入ることはわかっていましたし、ファーサイドで仕留めることも練習からできていたので、それがそのまま試合に繋がったかなと思います」と振り返った齋藤のヘディングが貫いたゴール。3-0。前橋育英が止まらない。

 守備面でも、その安定感は際立つ。「自分たちは得点した後に力んだり、前掛かりになり過ぎて失点という形が過去にあったので、『得点する前と後でも変わらずに行こう』とはチームで話していて、もちろんピンチの時間もありますけど、みんながやることを変えずにやれたのは良かったと思います」とは絶対的なキャプテンのMF徳永涼(3年)。この日はDF山田佳(1年)と公式戦で初めてセンターバックでコンビを組んだ齋藤も「ラインのアップダウンはしっかりできました」ときっぱり。相手に反撃の余地を与えない。

 桐生一は22分に諏訪が右サイドを力強く切り裂き、シュートレンジまで持ち込むも、前橋育英の右SB井上駿也真(3年)は冷静なカバーリングから的確なクリア。失点のリスクをきっちり回避すると、39分には前橋育英がダメ押し弾。途中出場のFW眞玉橋宏亮(3年)が右から中へ付けたパスを、徳永はダイレクトで縦へ。これをFW山本颯太(3年)もダイレクトではたき、走り込んだ大久保が右足で蹴り込んだボールはゴールネットへ到達する。

 ファイナルスコアは4-0。「自分たちの実力を発揮できればこのぐらいの結果も出せると考えていたので、そこは自分たちの実力に自信を持って、この試合にも取り組めたのかなと思います」と徳永も言及した前橋育英が、快勝と言っていいゲーム内容を披露し、ピッチとスタンドの選手たちで歓喜を共有する結果となった。



 5勝2分け2敗。これが前橋育英のプレミアリーグにおける、9試合を終えた時点での成績だ。敗れた相手はFC東京U-18と川崎フロンターレU-18。どちらも上位争いを繰り広げているチームであり、複数の年代別代表選手を揃えているタレント集団だ。

 10番を背負う高足は、このリーグで戦う意義を痛感しているという。「プレミアでダメだったところを、チームとして改善していくこともできますし、良いところをもっと伸ばしていくという面では、プレミアで通用することは全国大会でも通用すると思うので、そういうところはプレミアの良さだと思います。プレミアは繋いでくるチームが多いので、攻守で1つ1つのポジション取りも考えてプレーしないといけないですし、自分もそういうことをメッチャ考えるようになりました。ちょっとだけ賢くなった感じはあります(笑)」。

「やっぱりプレミアは各チームに特徴があって、上手だし、強度もあるし、ライン間でトップ下あたりが狙っているチームとか、サイドチェンジがいいチームとか、やり合いになるんです。それは実際にやらないとわからないですよね」と話したのは山田耕介監督。リーグ戦というフォーマットもあって、お互いにやり合う試合の中で、自分たちのできることとできないこともハッキリと見えてくる。その中で5つの勝ち星を重ね、3位という好位置に付けていることは、間違いなく彼らの大きな自信になっている。

 周囲からの評価も高く、徳島でももちろん上位進出が期待されているが、だからこそキャプテンの徳永はあふれる自信と備えるべき謙虚さを、こう口にする。「今日の試合に勝ったからと言って、ここが目標ではないですし、それは自分だけではなくて、チーム全員が思っていることなので、この勝ちを通過点として、日本一に向かう中で、『このぐらいでいいや』みたいな雰囲気はチームにないですね。自分たちへの手応えがあるからこそ、気の緩みだったり、隙が穴になってくるので、自分たちの自信が過信にならないように、自分が中心になってチームを作っていきたいと思います」。

 掲げている目標は、あくまでも高校年代三冠。まずは1つ目の“通過点”を経験すべく、プレミアのタイガー軍団が夏の日本一という獲物を、虎視眈々と狙っている。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2022

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