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ユース取材ライター陣が推薦する「インターハイ注目の11傑」vol.2

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土屋氏が注目するDF矢端虎聖(関東一高3年)

 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技が24日に開幕する。ゲキサカでは「インターハイ注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター陣に選手権注目の11選手を紹介してもらいます。第2回は(株)ジェイ・スポーツで『Foot!』ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任し、現在はフリーランスとして東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史氏による11名です。

 土屋氏「今年は徳島で開催される夏の祭典、インターハイ!今から楽しみ過ぎるこの大会で、是非注目してほしい11人をピックアップしました。今回も設けている選考基準は 「1チーム1名」と「過去に11傑ではご紹介したことのない選手」です。インターハイは真夏の暑さとともに、大人になってから仲間と楽しく振り返ることのできる一生の思い出になるはず!どのチームも徳島で素敵な時間を過ごしてくれることを願っています」

以下、土屋氏が推薦する11名
GK上林真斗(昌平高3年)
例年以上に守備力に定評のある昌平ディフェンスを、DF津久井佳祐(3年)とDF石川穂高(2年)のCBコンビとともに支える絶対的な守護神だ。FC LAVIDA時代にはU-15日本代表にも選ばれていたものの、高校入学後はなかなか出場機会を得られない日々が続く中、「自分の与えられている立場で頑張ろうという想いで」県リーグで研鑽を積み、新チームからレギュラーを獲得。試合の前日にはプロ入りを果たした1つ上の先輩、西村遥己(アルビレックス新潟)のプレー集を見て、「いいイメージで試合に向かう」ルーティンを欠かさない。得意だというパントキックは、そのままチャンスに直結する高精度の武器。「西村くんみたいなセービングももっと向上させて、『最後にアイツがいれば大丈夫だ』と思ってもらえるようなキーパーになりたいです」とさらなる成長を期す。

DF桑原航太(帝京長岡高3年)
プロ注目のMF廣井蘭人(3年)やGK佐藤安悟(3年)同様に、新潟の強豪で1年時からレギュラーポジションを掴んできたクレバーな守備者は、3年生になってキャプテンに就任。「まだ全然自覚が足りないです」とは本人だが、最後方からチームメイトを鼓舞する姿は闘将そのもの。基本的にはCBを託されながらも、守備的なポジションであればどこでも水準以上でこなせるこの男の安定感が、そのままチームが誇る守備の安定感に直結している。もともとは東京ヴェルディジュニアユース出身であり、今大会には当時のチームメイトも複数人が出場。「日大藤沢の森重(陽介)も、帝京の押川(優希)も伊藤聡太もそうですけど、みんなそれぞれの場所で頑張っているので、自分も負けてられないなというのはあります」と全国での“再会”を楽しみにしている。

DF多久島良紀(青森山田高3年)
戦線離脱は昨年の11月。そこから7か月近いリハビリの時間を経て、ようやく頼れる男が帰ってきた。高校年代三冠を達成した昨シーズンのチームで、唯一2年生レギュラーを張り続けた実力は伊達ではない。粘り強い守備対応に加え、圧倒的な飛距離と鋭い弾道を誇るロングスローは、何度も“三冠王者”に歓喜をもたらしてきた。今季はキャプテンを務めているが、新チーム始動から自身はプレーできない時期も「下級生の頃から結構試合に出てきたので、外から見る景色や想いも感じることができましたし、それがあったからこそ今は責任感も強く感じることができているので、今までの時間は無駄ではなかったと思います」とポジティブに捉え、雑用も含めてチームのためにできることに黙々と取り組んできた。1年前の日本一を知る男の経験値は、連覇を狙う前回チャンピオンにとっても何より大きなアドバンテージだ。

DF平井佑亮(履正社高3年)
とにかく高くて、強い。指揮官の平野直樹監督から受けている厳命は『制空権は絶対に握れ』。192cmの長身を生かした空中戦には揺るぎない自信を持ち、プレミアリーグの大津高戦で、ほぼ同身長のFW小林俊瑛とも互角にやり合ったことで、成長も感じることができたという。3バックから4バックにチームのシステムが変わったことで、一時はスタメンを外れていたものの、インターハイ予選から再びポジションを奪取。「頭を使うプレーは相方の加藤が上手いので、カバーもアイツに任せて、僕は弾く方の“頭”を使おうと思っています(笑)」とは本人だが、CBを組むDF加藤日向(3年)との連携も日を追うごとに高まってきている。憧れている選手は神戸の菊池流帆とチェルシーのチアゴ・シウバ。熱さとクレバーさのハイブリッドを真剣に目指す大阪のハイタワー、要注目。

DF懸樋開(市立船橋高3年)
自分の中で掲げているモットーは『エンジョイサッカー』。まずはサッカーを楽しむことは忘れたくないという18歳は、今年に入って急成長。一気にレギュラーポジションを手繰り寄せた。170cmとCBとしては決して大柄ではないものの、最後まで身体を張れるディフェンス面に加え、「増嶋(竜也)コーチにやり方を教わって、少し得意になりました」と明かすビルドアップや、機を見た鋭い縦パスにも特徴が。インターハイ予選決勝では延長後半にダイビングヘッドで決勝ゴールを記録し、チームを全国へと導いてみせた。前所属は鳥取市立東中学校。中学の部活の監督と市立船橋のスタッフが大学で一緒にプレーしていた縁から、千葉の強豪校で勝負することを決意。入学時はボランチ、昨年は右SBにトライしながら、今では「センターバック、楽しいです」と言い切るメンタルも頼もしい。

DF矢端虎聖(関東一高3年)
全国ベスト4へと躍進した昨年度の高校選手権でも、国立競技場での開幕戦も含めた全4試合にスタメンフル出場。貴重な経験を積み重ねた。迎えた今シーズンはキャプテンに指名され、「自分がダメだったらチームも絶対にダメになるし、自分が良ければチームは絶対にブレない」という強い覚悟を、チームの先頭に立って示し続けている。的確な指示と対人の強さを生かしたディフェンスは全国レベルだが、本人は「僕はそんな目立つタイプじゃないので、『ああ、この選手いいところにいるな』みたいな感じで見られていればいいかなと思っています」と謙虚な発言。それでも、インターハイでの目標を尋ねると「僕たちは全国でトップトップではないですけど、“下克上”というか、下から突き上げていくというイメージで、先輩たちの結果を超えるべきだと思っています」と確かな自信も携えている。

MF真田蓮司(東山高3年)
大会有数の好ボランチであることに疑いの余地はない。2月にはU-17日本高校選抜にも選出され、同世代のライバルたちと共闘。「自分と同じポジションの選手を見ていても、自分1人で剥がせたりするところはまだまだですし、守備の部分でボールを奪えそうなシーンでもまだまだ奪えなかったり、というのが多かったですね」と新たな気付きも収穫してきた。春先には前線でもプレーし、トレーニングマッチながら青森山田高相手にスーパーミドルでゴールも記録。攻撃面でも確かな進化を遂げつつある。中学時代を過ごしたセレッソ大阪U-15時代のチームメイトでもある北野颯太の活躍には「J1の舞台でやれているのを見て、素直に凄いと思いますし、自分も良い刺激を持って日頃からやっています。負けたくないですね」とも。目標の全国制覇は、この男の舵取りが間違いなくカギを握る。

MF竹田天馬(長崎総合科学大附高3年)
「中学の時は走れないことが自分の課題だったので、総附に来れば走れるようになるんじゃないかなと思いました」という言葉はにわかに信じがたい。走力に定評のあるチームの中でも、この男の運動量は際立っているからだ。加えて基本技術も十分に高い。昨年度の高校選手権でも3試合にフル出場。「個人としてはボールロストが少なかったことが収穫でした」と振り返ったように、そのキープ力は全国でも間違いなく通用していた。「ピッチでもオフのところでも素晴らしいですね。授業態度も素晴らしいですし、テストもずっと見直ししています」と人間性を高く評価するのは定方敏和監督。「『小嶺先生がいなくなったから総附が弱くなった』とは言われたくないので、またプラスアルファの違う魅力を持った良いチームにしていきたいと思います」と言い切る竹田のキャプテンシーがチームを力強く牽引する。

FW伊藤聡太(帝京高3年)
2年生だった昨年からカナリア軍団の10番を託されたアタッカーは、「1年生の頃は『あの黄色いユニフォームをいつか着たい』と思っていたのに、2年生になって初めてもらったのがこの10番で、『こんなありがたいことはない』と思っています」とそのエースナンバーの重みを十分に噛み締めている。「キャラ的にも明るい人だと思います(笑)」と自己分析する性格も、個性派揃いのチームをまとめるキャプテン向き。「強く言うのは得意ではないですけど、状況を変える人がいないといけないので頑張ってやっていますし、そういうところでも存在感を示していかないと二流かなと」と覚悟を決めた。なお、伊藤も東京ヴェルディジュニアユース出身。「帝京長岡の桑原はたまに泊まりに来たりもするんですけど、僕にとって憧れの選手なので(笑)」と仲の良さをアピールしていたことは付け加えておこう。

FW小林俊瑛(大津高3年)
言わずと知れた高体連最高峰のストライカーは、昨年度の高校選手権でも2得点をマークしたが、特筆すべきはアシストも2つ記録していること。周囲にゴールを獲らせることもできるのは、大きな魅力だと言っていい。今シーズンのプレミアリーグはストライカーの活躍が目立つが、「いろいろな選手が点を獲っているので、そのゴールシーンを見て自分も勉強していますし、凄くライバル心が出てきています」と話しつつ、一番意識している選手を尋ねると、「(神村学園高のFW)福田師王は代表や選抜でよく一緒にやっているので、ずっと意識していますね。アイツを追い付いて、追い抜く所までしっかりやりたいと思っています」ときっぱり言い切った。今大会の目標も明確。「得点王を目指していますし、大津高校初の全国制覇を目指してやっていきます」。悲願の日本一達成には、この9番のゴールが必要不可欠だ。

FW高足善(前橋育英高3年)
小柄な体躯をフル稼働させて、切れ味鋭いドリブルで相手ディフェンダーをきりきり舞いさせる痛快な姿は、さながらタイガー軍団の牛若丸か。そのプレーは本人も憧れの存在だという、同校OBの飯島陸(ヴァンフォーレ甲府)を彷彿とさせる。周囲のマークも厳しさを増しているが、「それはありがたいことです。マークに付かれても、個で剥がしたり、自分で打開できる力をもっと伸ばしていきたいなと思っています」とそれすらも成長の糧にしてしまうあたりも逞しい。本人が感じている使命は「大きい選手に立ち向かっていって、負けてもまたどんどんチャレンジして、転んでもまたすぐ立ち上がっていくようなイメージを持って、小さい子供たちに『自分のように小さくてもできるんだぞ』ということは見せたいと思っています」とのこと。前橋育英の10番は、常にフルスロットルでゴールを目指し続ける。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。Jリーグ中継担当プロディーサーを経て、『デイリーサッカーニュース Foot!』を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。ゲキサカでコラム、『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』を連載中。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
●【特設】高校総体2022

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