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選手権準優勝後、一からチーム作り。「崩れないチーム」になってきた東山が無失点V:京都

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東山高が無失点で京都制覇

[6.11 インターハイ京都府予選決勝 東山高 1-0 立命館宇治高 サンガS]

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技京都府予選決勝が11日に行われ、東山高立命館宇治高が対戦。後半19分に生まれたFW松下凌大(3年)のゴールによって東山が1-0で勝利し、3大会連続5回目のインターハイ出場を掴んだ。

 昨年度の選手権で準優勝した東山だが、当時からスタメンを務めるのはDF志津正剛(3年)のみで、今年は一からのチーム作りを強いられた。MF阪田澪哉(現C大阪)のような一人で試合を決められるタレントもいない。「比べられることもあると思うのですが、自分たちは全員が昨年のチームとは違うと分かっている。チーム一丸になれるのが今年のチームの良さ。全員で守って、全員で攻撃して、全員で喜ぶ。これが高校サッカーなんだと思っています」。主将のDF濱瀬楽維(3年)が口にする通り、昨年の栄光を引っ張ることなく、自分たちらしく歩んでいる。

 スタイルも真田蓮司(現関西大)、松橋啓太(現東海大)のダブルボランチを起点に素早くボールを動かした昨年とは違う。立命館宇治との一戦でも、序盤から奪ったら素早く前線へと展開。併せて、高い位置でのプレッシングも徹底し、立命館宇治に圧力をかけていく。狙いについて濱瀬はこう明かす。「自分たちはあまり繋ぐのが得意ではないけど、大きい選手がいる。セットプレーでも活きるし、前でもおさまる。繋ぐというより、蹴った方が良いという判断をした」。

 前半13分には右サイドに開いたFW上林広翔(3年)を中心としたボール回しから、濱瀬がゴール前にパスを入れたが、味方とは合わず。19分には相手クリアの跳ね返しをFW宇野隼生(3年)がダイレクトで打ち返したが、シュートは枠を捉えられない。MF沖村大也(2年)が「僕たちがセカンドボールを拾おうとやってきたのですが、セカンドがあまり拾えなかった」と反省を口にした通り、相手エリアまでのボールを送っても、セカンドボール以降が上手く行かなかった結果、試合が落ち着かないまま0-0で前半を終えた。

 対する立命館宇治は、「蹴ってしまったら分が悪い。相手を上回るようにボールを握ろうと考えていた」(山下弘樹監督)。主将のDF茗原達希(3年)やMF森内秀太郎(3年)を中心に自陣から落ち着いてボールを動かし、前半も右サイドのMF山本大賀(3年)が鋭い仕掛けを披露した。

 後半に入ると、エースのFW斎藤成峻(3年)を投入し、攻撃のギアを入れたが、東山に隙はない。「斎藤が背負う選手なのは良く分かっていた。でも、1トップなので(1人が)思い切って対応し、3人がカバーに入る練習を前日にしていた」(濱瀬)とDFラインが統率を取って対応し、決定機まで持ち込ませない。

 試合が動いたのは、後半19分。東山の福重良一監督は直前の16分に「70分で勝負を決めるぞ」というメッセージを込めて、MF神崎蒼靖(2年)と松下を同時に投入していた。すると想いを受け取った選手たちが攻勢を強め、相手エリアを前進した宇野からのボールが松下に入って、シュート。この一撃はGKに阻まれたが、こぼれ球が松下の目の前に再び落ちると、ゴール右隅に決めた。試合終盤はシステム変更で同点を狙った立命館宇治に対し、東山が統率の取れた守備でうまく対応。反対に裏にできたスペースを巧みに使って時間を使い、1-0での逃げ切りに成功した。

 東山は4月に開幕したプリンスリーグ関西で1勝5敗と苦戦してきた。「前半で点を獲っても後半に失点する試合が多かった」のが苦戦した理由だが、今大会は最後まで集中力を保ち、5試合全てを無失点に抑えた。福重監督は「去年とは違うと自分たちが割り切りながら、手堅くやってきて、徐々に崩れないチームになっていった」と収穫を口にする。

 楽な試合は1試合もなかった。内容面で見ても修正すべき点はあった。だが、一からのチーム作りを進める今年の東山にとって苦しみながら掴んだタイトルが、自信に繋がるのは間違いない。「今は良い守備をやっているだけなので、良い守備をしてそこから良い攻撃をしていきたい」。福重監督が口にした通り、全国大会までに更なる成長を果たし、再び全国での躍進を狙う。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2023

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