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難局で一体となってチーム力向上。明秀日立が水戸商を1-0撃破し、インハイ出場まであと1勝

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前半30分、明秀日立高は2年生MF竹花龍生(左)の直接FK弾で先制

[6.14 インターハイ茨城県予選準決勝 明秀日立高 1-0 水戸商高 ひたちなか市総合運動公園陸上競技場]

 14日、令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技茨城県予選準決勝がひたちなか市総合運動公園陸上競技場で行われ、明秀日立高が1-0で水戸商高に勝利。明秀日立は18年大会以来の全国大会出場をかけ、18日の決勝で霞ヶ浦高と戦う。

 苦しい時期にチームで成長。明秀日立が茨城制覇まであと1勝に迫った。今年、県新人戦4試合を38得点無失点で制した明秀日立は、県1部リーグ戦でも現在首位と好スタート。だが、前回の関東大会優勝校として臨んだ関東大会予選では、怪我人が続出したこともあり、県2回戦敗退に終わった。

 今大会もまだベストの陣容ではないが、県新人戦決勝の再戦となった境高との初戦から激戦ブロックを勝ち上がり、準々決勝では宿敵・鹿島学園高にPK戦で勝利。この日は前日の大雨の影響で難しいピッチコンディションとなったものの、タフな戦いで勝ち切った。

 明秀日立は前半、ロングボール中心の攻撃で相手コートへ押し込んで試合を進めようとする。対する水戸商は、CB山縣修人(2年)がゴール前の局面で好守を続けてボールを弾き返す。強く前へ出るCB持永音和(2年)らとともに耐えながら、チャンスを伺った。

 かつて日本一に輝いた歴史を持つ水戸商はMF檜山龍之介(2年)が懐の深いドリブルを見せていたほか、ピッチコンディションの悪い中でも技術力を発揮していたMF増子英利(2年)らが攻め返す。だが、要所を封じた明秀日立はセットプレーやサイド攻撃からゴール前のシーンを作り出す。そして前半30分、FW熊崎瑛太(3年)が敵陣右中間の位置でFKを獲得。これをキッカーのMF竹花龍生(2年)が右足で直接決め、先制した。

 明秀日立は後半開始から注目FW石橋鞘(3年)を投入。3分にはカウンターから素晴らしい身のこなしで2人をかわしてチャンスを演出する。その後、石橋はロストもあった一方で打開力を発揮するなど相手の脅威になっていた。また、ゲームメーカーのMF吉田裕哉が守備面で貢献するなど攻撃へ結びつけていたが、後半は水戸商ペース。5分、左中間でDF背後を突いたMF矢部太輝(3年)の左足シュートがゴールを捉える。

 これは明秀日立GK重松陽(2年)が好反応で阻止。ショートパス、コンビネーションを軸に反撃する水戸商は増子のラストパスや檜山が切り返しから上げた絶妙なクロス、また右SB萩谷諒真(2年)のロングスローでチャンスを作り出した。

 4バックから3バックへ移行した明秀日立はサイドから攻められるシーンも増えていた。相手の勢いを受ける形となり、特に終盤は強風雨の中での戦いに。それでも、「インターハイ予選からだいぶ(前向きな声がけへ)変えられている。それも良い雰囲気に繋がっている」と分析するDF山本凌主将(3年)やDF飯田朝陽(3年)を中心に我慢強く守り抜いて1-0で80分間を終えた。

 準々決勝の鹿島学園戦は延長後半残り2分に追いつかれ、この日も終盤に苦戦。だが、山本は「何回も相手にはチャンス作られたんですけれども、守り切れたのでそこは自信がつきました」と微笑み、萬場努監督も「最後、失点せずに終わったのはちょっと逞しさが出たかなと。あとベンチも含めてよく声が出ていたので、そういう一体感は応援も含めて良くなっている」と頷く戦いで勝ち切った。

 石橋や熊崎、10番FW根岸隼(3年)という攻撃の中心選手や大型左WB斉藤生樹(3年)、189cmGK小泉凌輔(3年)と怪我人が続出。関東大会予選で敗退し、ピッチ外でも不安定な面があったという。だが、その難局で「(選手、スタッフ)みんなで何とかしようと」(萬場監督)と取り組んできた。

 サッカーと向き合い、試行錯誤しながらチーム力の向上に成功。山本が「怪我した人が今まで出ていたところにサブの人たちが出て良い意味で成長してくれて、怪我した人が復帰して途中交代で良いプレーをしてくれているのがあるので、それはチームとして良いかなと思います」と振り返ったように、底上げできたことも勝ち星に結びつけている。

 インターハイ出場まであと1勝。山本は「ここでチーム全員が油断することなく、一個一個しっかり勝って(インターハイ開催地の)北海道に行けるように頑張りたい。(個人としては) 正直きょうはチームのためになれていない。(強みである)競り合いの部分も返せなかったので。周りに助けられた部分もあったので、それは次に返したいなと思います」。台頭した選手や復帰してきた選手たちが一体となって戦い、全国切符を獲得する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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