beacon

苦闘も「戦う」大切さを再確認。桐光学園が全試合無失点の国見をPK戦で下し、決勝進出

このエントリーをはてなブックマークに追加

桐光学園高が4年ぶりの決勝進出

[8.3 インハイ準決勝 桐光学園高 0-0(PK5-4)国見高 花咲スポーツ公園陸上競技場]

 桐光学園が2度目の優勝に王手! 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技は3日、準決勝を行い、ともに優勝歴を持つ桐光学園高(神奈川1)と国見高(長崎)が激突。桐光学園が0-0で突入したPK戦を5-4で制した。桐光学園は4年ぶり2度目の優勝をかけ、4日の決勝で明秀日立高(茨城)と戦う。

 雨中の準決勝。3回戦で先制点を決めている国見FW坂東匡(3年)が、試合開始直後のコンタクトプレーで負傷交代するアクシデントが起きた。緊急の修正を強いられた国見はMF野尻慎之助(2年)を右サイドへ投入し、MF門崎健一(2年)を前線へ押し出す。想定外のスタートとなったが、その門崎が前線で起点となるなど、国見は相手の間を取りながら前進することに成功。10分には、10番FW中山葵(3年)が左サイドでボールを奪い返し、ラストパスを送る。

 対する桐光学園は、どこか重い立ち上がり。出足が遅く、激しさを欠いてパスを通されるなど、“らしくない”戦いだった。13分には、左サイドから仕掛けたMF齋藤俊輔(3年)の右足シュートが枠を捉えるが、国見GK松本優星(2年)が好セーブ。21分にもMF松田悠世(3年)が右サイドから仕掛けて左足で狙ったが、これも国見CB中浦優太(3年)にブロックされた。

 桐光学園は今大会無失点の国見ディフェンスをこじ開けることを目指して試合をスタートしたが、前線の動き出しの回数も少なく、距離感良く守る国見DFを攻略することができない。それでも、ボールを保持していた国見にビルドアップでのミスが増加。桐光学園は中盤で奪う回数が増え、鋭くゴールへ迫っていく。

 だが、ここで慌てないのが国見だ。右SB松永大輝(3年)やCB平田大耀主将(3年)が的確なカバーリング。守備でのミスもゼロではなかったが、素早いポジショニングとしつこいディフェンスによって要所を締め、0-0で前半を折り返した

 ハーフタイム、桐光学園は鈴木勝大監督が、ベンチ外まで聞こえてくるような大声で選手たちに猛檄。「魂のないフットボールをするんじゃないよ!!」などの言葉が響き渡る。連戦の疲れがあったのかもしれないが、強度や切り替え、運動量、後方からのコーチングといった原理原則を欠いた前半。鈴木監督は今年、日本高校選抜のコーチとして欧州遠征に参加し、戦うことの重要性を再確認したという。その指揮官の下、強調されてきた戦うこと、ハードワークすることを選手たちは後半に表現した。

 後半立ち上がりは、桐光学園が猛プッシュ。混戦で相手よりも一歩二歩と前に出てボールを刈り取り、前へ、前へと出て行く。そして、3連続でCKを獲得するなど国見に圧力をかける。主将の渡辺は「(魂、戦う姿勢は)大事だと思います。一人ひとりが戦う姿勢を持たなければゲームに勝てないですし、そこは大前提として持っていると思います」。前半は薄れていたその姿勢が高まり、引き寄せた流れ。だが、国見はGK松本やDF陣が落ち着いて守備対応していたほか、中盤、前線の選手たちも献身的な守備を続けて得点を許さない。

 後半21分には、桐光学園にビッグチャンス。左SB加藤竣(3年)のアーリークロスに決定的な形で松田が飛び込む。だが、このヘディングシュートを国見GK松本の正面。桐光学園は後半序盤の勢いを持続できなかったが、それでもMF小西碧波(3年)らが声で引き締める中、集中力の高い守備とゴールへ向かう姿勢を見せ続けるなど前半とは異なる戦いを見せた。

 国見は桐光学園にセカンドボールを拾われ、なかなか前進することができなかった。それでも、幾度か良い形の守備からボールを動かし、敵陣でセットプレーを獲得。また、中山の仕掛けなどからゴールを目指す。終盤には、相手FW宮下拓弥(3年)の決定的なヘッドやパワープレーにゴールを脅かされていたが、この日も目標の無失点。だが、チャンスの数を増やせなかった。

 木藤健太監督は、「(守備はある程度手応えを感じていたが、攻撃では)準々決勝、準決勝と最後のゾーンになかなか入っていけなかった。ボールは持てる時間帯もあって、ビルドアップも相手を剥がしながらライン間を取っている。そこから先の課題が残りましたね」とレベルアップの必要性を口にする。

 アディショナルタイムには、右サイドへの展開から交代出場MF山崎夢麓(3年)がクロスを入れる。GKが触れてこぼれたボールを同じく交代出場の1年生MF原田高虎がダイビングヘッド。ボールはGK不在のゴールへ向かったが、桐光学園CB川村優介(3年)が頭でクリアする。桐光学園の鈴木監督は「ハーフタイムに檄を飛ばしたことで諦めないこととか多少リンクしたのかなと思うので、(厳しい言葉を)言っておいて良かったなと(微笑)」。スコアは動かず、0-0のまま前後半を終了。ファイナルへの切符の行方はPK戦に委ねられた。

 PK戦、先攻の国見は2人目のシュートが枠上へ外れる。対して桐光学園は松田、小西、宮下、MF羽田野紘矢(3年)が成功。最後は5人目のCB川村がGKに反応されながらも右足シュートをねじ込み、決着をつけた。

 桐光学園は対戦相手からも一つ一つ学びながら見事に準決勝突破。決勝で対戦する明秀日立は、大会2週間前の練習試合で先制しながら1-3で逆転負けしている相手だ。明秀日立には、昨年の関東高校大会Aグループ決勝でも1-4で敗戦。鈴木監督は「我々はリベンジとテーマが決まっていますので、最高の舞台でそういう勝負ができることを幸せに思いながら、きょう悪かったですけれども、一つ一つ彼らが階段を上ってきたことも一つ評価しながら明日の決戦に挑みたい」と語った。また、渡辺主将は「何も感じず、プレッシャーも感じず、自分たちのやってきたことを信じて、明日いつも通り自分たちの力を発揮できれば必ず勝てると思うので自信を持って臨みたい」ときっぱり。準決勝で学んだことも力に決勝を戦い、明秀日立にリベンジして日本一を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

TOP