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[MOM732]関西福祉大GK水井龍也(4年)_亡き母への思い…得意のPK戦を制し、創部初の全国切符

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関西福祉大GK水井龍也(4年)

[7.18 第50回関西学生サッカー選手権準々決勝 京都産業大0-0(PK3-4)関西福祉大 J-GREEN堺メインフィールド]

 創部7年目で初の全国大会出場権を獲得。関西福祉大にとって、チームの新たな歴史を刻む試合となった。

「京都産業大は巧い選手が多いので、ファーストDFをしっかりやろうということと、ボールを持たれたくない選手のケアを共有しよう」という中田洋平監督の意図どおり、前半は相手の攻撃をうまく封じられた。だが、後半になると前からのプレッシャーがかからなくなり、引いて守る時間帯が続いた。

 そんな苦しい状況でも、格上相手に一歩も引かずに跳ね返した。試合前の円陣での「全国大会に出られるチャンスは、4回生にとってはこれが最後かもしれない」という言葉にいっそう気持ちが入り、最上級生を中心に粘り強く110分を闘いぬいた。

 2回戦の大阪大戦に続いて、今大会2度目のPK戦となったが、GK水井龍也(4年=富山U-18)は、「大阪大のときも負ける気はしなかった。今日もPKまで行ったらなんかおこるという自信があった」と力強く話す。

 大阪大戦では先制されたあとに、PKを与えてしまうピンチを水井のセーブで凌いでいる。中田監督が「あそこで水井が止めてなければ、終わっていた」と称える活躍で、準々決勝へとつなげた。

 2年前に1部で戦ったときは、水井は三番手のGKで、リーグ戦の出場機会はなかった。唯一、チャンスを得た関西選手権4回戦で、びわこ成蹊スポーツ大に3-10と大敗。「自分の力量と、1部の選手はこんなに差があるのかと心が折れた」と振り返る。それだけに、関西選手権で活躍したいという思いも強い。

 京産大戦の前日は「また、ボコボコにされたらどうしようと思っていた」と打ち明けたが、「大丈夫、いろんな人が支えてくれる」と試合に臨み、仲間たちの必死のプレーに「俺もやったらな。PKになったら任せとけ」とポジティブに切り替え、PK戦では相手との駆け引きに勝利した。

 奮起する理由はもうひとつある。サッカーを始めた頃からずっと応援してくれていた母が、昨春に亡くなった。「試合中、『母さん、見とってくれ』という気持ちで闘っている」という水井の姿は、見守ってくれている人のもとに届いているに違いない。

「目の前の試合のことしか考えてなかったけど、総理大臣杯が現実になったので、夢が広がりました」と水井が話すように、この試合はチームにも水井にも大きなターニングポイントとなった。夢を叶えるために、全国でどれだけ自分たちがやれるのか。まずは、決勝の舞台で、チーム全員で頂点を狙う。

(取材・文 蟹江恭代)

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