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[大学]「WASEDA THE 1ST」復権目指す早大が王者から勝ち点3奪取!(早稲田大vs流通経済大)

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[5.3 関東大学1部第5節 流通経済大 1-2 早稲田大 駒沢]

 3日、第84回関東大学サッカーリーグ1部第5節で3連覇を目指す流通経済大と最多25回の優勝を誇る早稲田大が激突。早大が07年・08年ベガルタ仙台特別指定選手のFW富山貴光(2年=矢板中央高)の決勝ゴールにより、2-1で勝った。早大は暫定2位浮上。一方の流経大は暫定6位へ順位を落とした。

 今季のチームスローガンは「WASEDA THE 1ST」。07年度の大学日本一から08年はリーグ10位で09年は7位と低迷した早大だが、J注目のCB小川諒(4年=柏U=18)が「『早稲田は日本一』だということを目標としてやっている」と復権を誓う名門が、現王者・流経大を撃破した。

 幕開けは“スーパーゴール”だった。前半15分、早大は左CKを得ると、ゲーム主将のDF野田明弘(4年=広島ユース)のキックをファーサイドで構えていたCB菅井順平(2年=浦和ユース)が右足を一閃。ダイレクトで放たれた一撃は弾丸ライナーでゴール左隅へと突き刺さった。古賀聡監督をはじめ、早大はベンチから一斉に控え選手たちが前方へ飛び出し、ゴールを絶賛する声を上げる。

 だが、「45分間だけ見ると今年一番よかった」と中野雄二監督が振り返った流経大は、“スーパーゴール”の余韻を一瞬にして消し去る。17分、右FKを得ると、相手のクリアボールをMF関戸健二(3年=旭高)がヘディングシュート。これがGKの頭上を越えてゆっくりとゴールへと吸い込まれ、同点弾となった。

 流経大はさらに32分、左サイドからのラストパスがファーサイドへ流れたところを、日本代表DF山村和也(3年=国見高)がポスト直撃の強烈な右足シュート。さらに35分には狙い通りに相手の裏を取るとFW武藤雄樹(4年=武相高)のラストパスからMFベロカル・フランク(4年=青森山田高)が左足を振りぬく。ただ、このシュートが右ポストのわずかに外側へ外れると、ロスタイムに速攻から抜け出した武藤の決定的なシュートも早大GK菅野一弘(4年=早稲田実高)にはじき出されてしまう。

 勝ち越すことのできなかった流経大。対して押し込まれていた早大は後半に流れを取り戻すと富山や小井土翔(3年=千葉U-18)が決定的なシュートを打ち込む。これは流経大GK増田卓也(3年=広島皆実高)の好守などに阻まれたが15分、右スローインからマッチアップのズレを突いた富山がPAでボールを受けると、そのまま右足でゴールを陥れた。

 ここまで4戦3発の早大エースストライカーが決めた勝ち越しゴール。一方、リードを奪われた流経大は直後から山村を前線へと上げてシフトチェンジを図り、早大の強固な砦の攻略を図る。18分には中里崇宏(3年=流通経済大柏高)からの右クロスをファーサイドで受けたベロカルが決定的なシュート。そして27分には山村からのラストパスをフリーで受けたMF高野隆三(4年=流通経済大柏高)が狙うが、ともに早大GK菅野のビッグセーブに阻まれてしまう。
 一方的に攻める流経大は立て続けにロングボールを放り込むが、早大は圧倒的な高さを誇る小川が次々と跳ね返し、その壁を越えたボールは菅野がカバー。MF中野遼太郎(4年=F東京U-18)ら中盤の選手も献身的にセカンドボールに絡むなど全く乱れない。

 流経大は40分、空中戦やアシスト役など獅子奮迅の動きを見せる山村にボールが入り、ゴール正面の位置から左足シュート。だが、これもGK正面を突くと、ロスタイムの猛攻もかわした早大が歓喜の雄たけびを上げた。

 王者からもぎ取った勝ち点3。スタンドの応援団とともに凱歌を歌う選手たちを頼もしげに見つめていた早大の古賀監督は「選手にも自信になったと思うし、私にとっても自信になった」。過去2年の低迷で自信を失っていたチームに対して、OBで今季から指揮を執る古賀監督は「早稲田は伝統的に学生主体で作り上げていくチーム」と選手たちを尊重。チーム作りを託されて、自覚と自信を持つことができるようになったという選手たちは変わった。
 元々高校時代に実績を残しているものや現在関東選抜に名を連ねる選手を多数擁するだけに実力に疑いの余地はない。そのチームは慶應義塾大との早慶戦こそ試合終了間際の失点で敗れたが、ここまで3勝1分1敗。昨年2位の中央大と引き分け、王者・流経大に勝ったことで復権への狼煙を上げた。

 清水エスパルス加入内定のCB岡根直哉主将(4年=初芝橋本高)を負傷で欠きながらの戦いが続いているが「守備にはすごく手ごたえを感じている。ただ押し込まれる展開が多いので、もっと主導権を握った戦いができるようにトレーニングしていきたい」と指揮官。この日、勝利の立役者となった小川は「今年は狙える。日本一になって、そのときピッチに立っていたい」と3年ぶりの日本一奪取を改めて誓っていた。
 
(取材・文 吉田太郎)

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