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14年ぶり1部復帰の日体大、V候補・明治大追い詰めドロー:関東1部

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[4.7 関東大学1部第1節 明治大3-3日本体育大 西が丘]

 JR東日本カップ2012 第86回関東大学サッカーリーグ戦1部開幕試合で昨年準優勝の明治大と14年ぶりに1部復帰を果たした日本体育大が対戦し、3-3で引き分けた。

 ピッチに立った全選手が1部デビュー戦の古豪が、優勝候補を追い詰めた。だが、先制したのは徹底したポゼッションを展開する明大だった。正確なパスワークに加え、PA、サイドでも難なくボールを収めてしまうJ注目FW阪野豊史(4年=浦和ユース)や、同じくJ注目の司令塔・三田啓貴(4年=F東京U-18)とFW岩渕良太(4年=F東京U-18)のアイディア、MF矢島倫太郎(2年=浦和ユース)の突破力など個も光る明大は前半9分、左スローインからボールを受けた阪野が左中間を縦に前進。PAへ出されたラストパスをMF梅内和磨(3年=F東京U-18)が右足でゴールへと押し込んでリードを奪う。

 日体大は監督としてジュビロ磐田をJ1年間王者(02年)へ導いた経歴を持つ鈴木政一監督が「何もできない前半だった」と振り返ったように、オープンスペースへ走るFW渡辺亮太(4年=調布北高)が強引にディフェンスラインに穴をこじ開けて放った36分の右足シュートを除くと、ゴールへ近づくことができない。逆に明治大は30分に岩渕のスルーパスで抜け出した阪野がGKをかわしてゴール左ポスト直撃の左足シュート。35分にはカウンターから右SB小川大貴(3年=磐田ユース)の上げた右クロスのこぼれ球を矢島が詰めたものの、シュートは再びゴール左ポストを叩いた。明大は37分にも左SB松藤正伸(2年=F東京U-18)の左クロスから胸トラップでDFをかわした阪野の決定的な一撃がゴールを襲う。

 ただ、再三決定機をつくりながら2点目を奪えなかった明大に対し、日体大は主将の一撃がムードをがらりと変える。前半ロスタイム、ゴール正面右寄りの位置でFKを獲得した日体大はMF新井純平主将(4年=つくば開成高)が右足でゴール左隅へ鮮やかなFK弾。このゴールで俄然盛り上がった日体大は後半、球際で1人、2人と立て続けのスライディングタックルを見せるなどボールへの強い執着心を発揮する。明大はチャンスをつくる一方で日体大に距離を詰められてボールを失う回数が急増。流れを引き寄せた日体大は昨年2部で優勝しながらも課題となっていたゴールで勝利へと前進する。

 最前線で躍動する190cmFW渡辺をはじめ、新井とMF平野又三(4年=F東京U-18)の展開力や絶妙なコントロールでマークを外すMF梅村徹(3年=野洲高)のドリブルなど1部で戦える武器を持っていた日体大は6分、平野の左FKから渡辺が豪快なヘディングシュートを決めて勝ち越した。その3分後に阪野のアシストから梅内に再びゴールを破られたが24分、日体大は渡辺が鋭い反転でDFを破ってPAへ侵入。右足シュートのこぼれ球を梅村がダイビングヘッドで身体ごとゴールへ押し込んで3-2とした。

 V候補・明大を2度突き放す力強い戦いぶり。後半40分に渡辺が2枚目のイエローカードを受けて退場したが、44分にはPA内でのハンドでPKを献上しながらも阪野の右足シュートをGK小川駿(4年=伊奈学園総合高)が左へ跳んでストップ。勝利を確信したスタンドからは伝統の「エッサッサ」の掛け声が鳴り響く。ただ1部復帰戦でインパクトを残した日体大だが、勝利することはできなかった。ロスタイム突入後の48分、明大は小川のスルーパスで右サイドをえぐったMF石原幸治(2年=市立船橋高)の折り返しを交代出場のMF矢田旭(3年=名古屋U18)が右足ダイレクトでゴール右隅へ押し込んで同点。土壇場での千金弾で明大が勝ち点1を獲得した。

 日体大の渡辺は「最初はスピードで押されたけれど、自分たちのサッカーができた。ディフェンスはまだ足りないけれど、オフェンスはまだ全然できる」と手ごたえを口にする。一方で鈴木監督は「オンはいいけれど、オフの時のポジショニングが悪すぎる」と課題を指摘し、試合後に選手と1対1で対話していた。オフ・ザ・ボール時の動きは指揮官が最も重視している部分。勝つために当たり前のことを全員でやっていく。目標の関東制覇、古豪復活へ鈴木監督は「個を変えていってあげないといけない」。指揮官は先へつなげるために結果以上に内容にこだわることを明言。開幕戦で自信をつけたチームは注目集まる今シーズン、さらなるインパクトを残す。

[写真]前半ロスタイム、日本体育大MF新井が同点FK
(取材・文 吉田太郎)

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