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テベスやイグアインに続く逸材と期待されるアルゼンチンの新星ルーカス・アラリオとは何者か

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アルゼンチンの新星ルーカス・アラリオ

 ワールドクラスの点取り屋が次々と輩出される南米アルゼンチン。リオネル・メッシカルロス・テベスゴンサロ・イグアインセルヒオ・アグエロといったスター選手たち比較されるのは酷であるように思えるが、その選手たちに続くと期待される名手がアルゼンチンにいる。リーベル・プレートのスター、ルーカス・アラリオは、この18か月で、前述のスター選手と並び称されるほどの支持を得ている。

 サンタフェ出身のアラリオは、あっという間にスターダムにのし上がった。アルゼンチン代表エドガルド・バウサ監督は彼のことを「アルゼンチン代表の期待の星」として、アルゼンチンが1対0でウルグアイに勝利を収めた9月のワールドカップ南米予選で初キャップを刻んだ。その24歳のポテンシャルがいかに突出しているかは、2016年の『Goal50 Presented by DAZN』に、ヨーロッパのクラブに所属していない選手として唯一、選ばれていることでも明らかだ。

 そのルーカス・アラリオという選手は何者なのか。そしてヨーロッパの強豪クラブが、彼をリーベルから引き抜こうと画策しているのはなぜなのか。

 アラリオは、最初に所属したコロン・デ・サンタフェで頭角を現し、非凡なサッカーセンスと、危地を乗り越えるための強靭なメンタルを持ち合わせていることを証明してきた。2014年にプロデビューを果たしたが、その年のコロンは経済的理由で開幕前に10人の選手が抜けたうえに、移籍金未払い問題で勝ち点6が没収され、アルゼンチンの2部リーグへの降格が濃厚と言われるほど、危機的な状況にいた。

 結果的にコロンはプレーオフでの戦いを余儀なくされたが、アラリオにとってはこれが自身の実力を見せつけることになる運命のシーズンとなった。結局のところコロンは、アルゼンチンのリーグ再編のおかげでプリメーラでの戦いが継続(チーム数が20から30に拡大となり、降格チームなし)となり、アラリオは15試合で6ゴールと4アシストを記録して、コロンのエースであることを証明したのだ。

 彼のゴール前での嗅覚とチャンスメークの才能は、コロンの中で突出していた。2015年7月、リーベル・プレートは、前途有望な若者を100万ユーロ(約1億1000万円)の移籍金で呼び寄せ、アラリオは、リーベルのレジェンドとも言える、フェルナンド・カベナギとの交代出場でリーベルでのデビューを飾った。

 アラリオの最初のゴールはコパ・リベルタドーレスの準決勝、クラブ・グアラニーと1対1で引き分けた試合で記録。この結果、マルセロ・ガジャルド監督率いるリーベルを決勝進出に導くこととなった。さらに、決勝戦のセカンドレグでは先制点を挙げ、ティグレスを3対0で撃破。大舞台での彼の勝負強さを語る例として、日本のサッカーファンにとっては、クラブ・ワールドカップ準決勝でサンフレッチェ広島から奪ったゴール(1-0)が印象深い人も多いだろう。

 それ以降もアラリオは躍進し、リーグ戦出場試合2試合に1ゴールというハイペース(0.50)でコンスタントにゴールを重ねていく。事実、比較のためにカルロス・テベスの若手時代の例を挙げてみると、彼はボカ・ジュニアーズに過去在籍していた2004-05シーズンまで、1試合あたり0.35ゴールという数字を残していた。それでも十分好成績と言えるのに、50試合出場でのアラリオの記録は、リーベル所属時のイグアイン(0.37)に匹敵することは注目に値する。だが、アラリオの素晴らしさは、決してゴールを決めることだけではない。アラリオは、ディディエ・ドログバのようなオールラウンドのストライカーでもあり、ドログバを想起させるような屈強なフィジカルを持つ一方、ボールキープ力にも優れ、空中戦でも強さを見せている。

 すでに南米最高峰のFWとして評価を得ているアラリオが、南米を去るときが来るとしたら、それはいつなのかが問題だろう。パリ・サンジェルマンは、17年1月のメルカートでアラリオを狙っていると報じられており、インテルやリヴァプールも興味を示していたと噂されていた。

 しかしながら、アラリオは安くない買い物になりそうだ。リーベルは8月にアラリオと、リーベルとしては異例の長期契約である4年契約を結び、移籍の契約解除金を1800万ユーロ(約20億円)につり上げた。

 アラリオにどんな未来が待ち受けているにせよ、リーベルのファンは、リーベルが困難な状況に陥っている中、何度となくチームを救ってくれた男への感謝を、永遠に忘れないだろう。アラリオは、リーベルの歴史に名を残す、数々の印象的なゴールを決めてきた名手だ。その勝負度胸と点取り屋としてのセンスは世界のサッカーファンが近い将来、知ることとなるだろう。
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