「NIKE CHANCE」のジャパンヘッドスカウトを務めた元日本代表DF名良橋晃氏は、関東ラウンドのセレクションで「無難にやっていたところもありましたし、積極性というものはサッカーに一番必要。最初はボールを持ったら自分で全部勝負するくらいの気持ちで行ってほしい」と消極性な選手がやや多かったことを残念がっていた。その中でひとり愚直に前へ、前へ突き進むドリブラーがいた。東海大高輪台高(東京)の2年生MF渡邊夢大だ。ボールを持てば縦へのドリブルからシュート、クロス。フォローの選手が寄ってきた際は、簡単にボールを預けるのではなく、その選手の動きを囮にしてより自分が活きるように試みていた。

　ジャッジを担当したスカウト陣も「スピードもあったし、チームにひとりは欲しいプレーヤー。苦しい時間帯でも淡々とやっていた」と合格したCB楠本卓海(大成高)と同等の高評価。実績のある上級生や全国大会経験者たち以上にそのポテンシャルを讃えられていた。「優勝すれば海外に行けてチャンスがあるというので、チャレンジしてみようと思いました」と「NIKE CHANCE」への参加理由を口にした渡邊はセレクション後、「凄い楽しかったです。自分のプレーで、精一杯やろうと思っていたので、そこは精一杯出しきれたと思います」と充実した笑顔を見せていた。

　東海大高輪台は昨冬の全国大会東京都予選で4強。渡邊は先発でなく、スーパーサブという存在だった。ただ自分の持ち味を「積極的に突破狙ったり、積極的にシュート狙ったりとか、積極性です」というアタッカーはこの日、そのスピードと打開力、そして誰にも負けない積極性で強烈アピール。高い評価で自信を得た渡邊は新チームでの目標を「何とか自分の力で全国までチームを出したい」と誓った。

　将来の目標はプロとして海外でプレーすることだ。小学生時代は東京都トレセンメンバーの一員として、中学生時代には所属していたFCトリプレッタの海外遠征でスペインに行ったことがあるという。海外への意識は以前から高く、そこで活躍できるように努力を続けている。「卒業したら海外でプレーしたいと思っているので、海外で通用する身体づくりに力を入れていきたいと思います。小柄なので、もっと身体の幅とか厚みを出していきたい」。一躍関係者たちの注目を集めたドリブラーが、より輝くために自身を磨く。

(取材・文　吉田太郎)

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