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[プリンスリーグ関東]ともに日本一狙う桐光学園vs山梨学院は互いに隙見せずスコアレスドロー

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[5.11 高円宮杯プリンスリーグ関東第5節 桐光学園高 0-0 山梨学院高 保土ヶ谷]
 
 高円宮杯U-18サッカーリーグ2014 プリンスリーグ関東は11日、第5節2日目の4試合を行い、前節まで首位の桐光学園高(神奈川)と山梨学院高(山梨)との強豪校対決は、0-0で引き分けた。桐光学園は3勝2分の2位、山梨学院は2勝1分2敗の5位で約1か月半の中断期間に入った。
 
 部員50名ほどと強豪校としては少数精鋭でトレーニングを積んでいる桐光学園はプレミアリーグから降格したものの、前線に個性のあるタレントを擁し、例年同様の高い組織力含めて今年も実力は全国上位。また09年度の全国高校選手権優勝校である山梨学院は1年生ながら関西の強豪・阪南大でレギュラーとして活躍するFW山口一真ら実力派の主力が抜けたものの、「全員攻撃全員守備」をモットーとする今年も守備意識の高い、まとまりのある好チームになってきている。互いに視線を全国の頂点へ定める両チームによる強豪校対決は、レベルの高い、互いに隙のない90分間だった。

「きょう少し動かされてしまいましたけれど、Jレベル相手に囲い込んで回収できる力をとやっている」と元福岡MFの鈴木勝大監督が説明するように、ボールを持った相手が僅かでも考えてしまうとすぐさま2人、3人で取り囲んでしまう桐光学園に対し、元清水ヘッドコーチの吉永一明監督が「言い方は悪いけど本当に慌ててという場面はあまり見たことない。ボランチの大場なんかを含めても、真ん中をやられるシーンはほとんどないので、そこは自信を持っています」と語る山梨学院も注目DF渡辺剛とDF大野佑哉(ともに3年)という全国クラスのCBコンビを中心に強固な中央の守備が相手の攻撃を跳ね返した。その中で、注目FWイサカ・ゼイン(2年)が躍動した桐光学園がブロックをつくって守る山梨学院をサイドから攻略するなど押し込み、山梨学院も好守から一刺しするチャンスを何度かつくり出すという、互いに勝機のあった試合はスコアレスドローに終わった。

 昨年、1年生の大型FWとして注目された小川航基(2年)やFW武井駿(3年)を怪我で欠く桐光学園はイサカを中央に置いた2年生3トップ。12分にイサカが個で左サイドを破って抜け出すと、15分にはFW桑原孝太郎(2年)が右サイドでのドリブルで距離を稼ぎ、そこからのワンツーでラストパスまで持ち込む。対する山梨学院は188cmの大型FW原拓人(3年)が制空権を握るなど押し返すと、右サイドのスペースを突く俊足アタッカー、MF伊藤大祐や右SB山中登士郎主将(ともに3年)がクロスを放った。互いに速いプレッシャーの中でのプレーを強いられ、なかなかボールが落ち着かないまま時間が進んだ試合で先にビッグチャンスをつくったのは山梨学院だった。前半18分に左サイド、エンドライン際でのスライディングタックルでボールを奪ったMF福森勇太(3年)がすかさずクロス。これに決定的な形で飛び込んだ伊藤が右足に当てたが、ボールはクロスバーの上方へ消えた。一方の桐光学園も31分に10番MF大谷晃平(3年)のスルーパスで右サイドを抜け出した桑原が右足を振りぬき、34分には大谷の右CKをファーサイドのCB井上瑠寧(3年)が頭で合わせる。

 後半は互いにセットプレーのチャンスを掴むが、決定打は生まれない。その中で鈴木監督が「まだまだですけど良くはなってきている。前半はちょっとやられていたんですけど、後半ちょっとカツを入れたら制空権は取れたのかなと」と微笑んだように、井上、CB東海林隼介(3年)が空中戦を制した桐光学園はラインが上がり、高い位置でのボール回しも繋がり出す。15分には大谷のスルーパスで左サイドを突いたイサカの折り返しを受けたFW曽木友樹(2年)が、PAでDFを一人かわして決定的な左足シュート。28分には、人数をかけた崩しから後半危険な存在となっていたイサカが左サイドを切れ込んでラストパスを入れる。これに走りこんだ右SB池田友樹(3年)が左足を振りぬいたが、このビッグチャンスも山梨学院の分厚い守りに跳ね返されてしまう。

 一方の山梨学院は後半開始から投入されていたFW宇佐美佑樹(3年)が活動量の多さで相手の守備をかき乱す。33分には右サイドで上手くDF間を抜けたMF多田倫浩(3年)のラストパスをニアサイドで宇佐美が合わせ、35分には多田からのパスを受けた原の柔らかい左足シュートがゴールマウスをかすめる。また37分には左サイドから個人で持ち込んだ宇佐美がそのまま強烈な左足シュート。そして後半アディショナルタイムに試合を決めるようなチャンスが生まれた。MF大場祐樹(3年)が左サイドのスペースへボールを落とすと、振り向きざまに上げた宇佐美のクロスを交代出場の10番FW池添勘太郎が頭で合わせた。だが、ボールはゴール左へ外れて得点することができない。最後までスコアは動かないまま、試合終了の笛が鳴り響いた。

 無敗を守ったとは言え、2位へ後退した桐光学園の大谷は「きょうは前線でのポゼッションができていなかった。守備も全然。2割も出せていない。監督もハーフタイムに『2割も出ていない』と話されていたし、自分たちも全然力を出せていないと思う」と唇を噛んだ。鈴木監督も「ブロックをつくられるのは初めてなんですよ。どこで2対1つくるとか、スペースないときの動かし方がまだ。県内の(全国高校総体)予選でもこれくらいやってくることはあると思う、それをいかに出していくか」と6月に初戦を迎える全国高校総体神奈川県予選へ向けた課題を口にした。

 一方、山梨学院の渡辺は「守備としてはゼロで終われたことは良かったと思います。一人ひとり、きょうはゼロで行こうということでやっていた。1対1の球際とか負けないことを意識して中盤、FWとかもやれていた」と話しつつも、「(得点を)取れるところが結構あったんですけど、取り切れなくて・・・。(桐光学園は)1位なんで、ここで勝って自分たちも勢い乗って総体予選に行ければと思っていたんですけど・・・悔しかったです」と地元開催の全国高校総体出場権を懸けた山梨県予選へ勢いをつけられなかったことを悔しがっていた。吉永監督も「首位のチームにどれだけできるかのチャレンジ含めて勝つつもりで来た。終わってみれば(白星を)取れなかったという思いの方が強いです。1点を取る力をつけないといけないし、トーナメントではゼロで行かなければいけない。次に課題も残ったし、次につながるゲームとしても捉えたいと思います」。全国の頂点を狙う両チームにとっては実力の高さを示した一方で、地区予選を突破し、全国で勝つための課題を学ぶ戦いにもなった。

(取材・文 吉田太郎)

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