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[選手権予選]「腹くくって」勝利に徹した帝京安積、第2シード撃破して初の4強進出!:福島

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[10.11 全国高校選手権福島県予選準々決勝 帝京安積高 0-0(PK4-3)学法石川高 鳥見山陸]

 11日、第93回全国高校サッカー選手権福島県予選は準々決勝を行い、第2シードの学法石川高と初の4強進出を狙う帝京安積高が激突。0-0で突入したPK戦を4-3で制した帝京安積が初の準決勝進出を決めた。

 0-0で突入したPK戦はともに2人目が外し、3-3で5人目へ突入。ここで帝京安積のGK鈴木貴俊(3年)が、学法石川を引っ張ってきたMF安部友稀主将(3年)のキックを左へ跳んで完ぺきにストップする。直後、「緊張しましたね。ここで決めないとキャプテンじゃないと思って。今まで何回もPK練習をしてきた。思い切って蹴ろうと思いました」という帝京安積のMF鈴木順一朗主将(3年)が右足シュートをゴールへ叩き込んで熱戦に決着をつけた。右手を突き上げて喜ぶ主将の下へチームメートが一斉に駆け寄り、ピッチ上にできた歓喜の紫の輪。そして帝京安積イレブンは指を高く突き上げて死闘を制した喜びを分かち合っていた。

 本来は相手を見て、全員でショートパスを繋ぎながらゲームを組み立て行くサッカーが帝京安積のスタイル。だが、この日は勝負に徹するサッカーを貫いた。学法石川には1月の対戦こそ3-0で勝っていたものの、3月には0-5で大敗。その後全国高校総体予選で準優勝している学法石川と真っ向勝負して勝つことは難しい。一週間前、10月6日のミーティングで小田晃監督はその戦略を選手たちに伝えたという。「今年の学石さんとウチを比べると厳しいと。相手見ること関係なしに前に送って、競ってと。そうすればゲームが崩れてくる。そっちの方が頑張れるかどうかという勝負になる。下手したら延長戦、PK戦になるかもしれない。みんなが腹をくくってやってくれました」
 
 帝京安積はまずは失点しないことに集中しつつ、最前線に構えるFW鈴木真也(3年)へのロングボールを軸とした攻撃。そしてサポートするFW橘慎之祐やMF楠瀬駿雅(ともに3年)らがゴールへ迫ろうとする。学法石川も安部やMF降矢祐輔(3年)のパスから10番MF渡辺伸(2年)やFW安部光留(1年)、FW木村涼(3年)らがシュートまでもちこんでくる。だが鈴木貴が「ディフェンスラインが良く頑張ってくれた」と讃えたように帝京安積はCB富樫晴己(3年)やCB鈴木大輝(2年)を中心とした守備陣がゴールを許さない。そして想定通りに0-0のままPK戦まで持ち込むと、「PKはやりました。インターハイ終わってから選手権は絶対にあると言って毎朝朝練でやりました。PK戦の前には(選手たちに)『福島県で一番PK練習してきた』と話しました」と小田監督が語ったように、選手たちは自信を持って蹴り込み、準決勝への切符を掴んだ。

 この一週間、2年生と小田監督は九州へ修学旅行。ただメンバーの2年生は修学旅行をキャンセルして、3年生たちとともにこの試合に懸けてきた。主力組は勝つための最高の準備をしてきたが、メンバー外の2年生も修学旅行先で早朝5時30分からトレーニングを行うなど、常に頭の片隅に学法石川戦のことを考えてこの一週間を送ってきたという。そしてこの日は決して得意ではなかった勝利に徹するサッカーを全員で貫徹。主将の鈴木順は「修学旅行行ったメンバーも、こっちに残ったメンバーも同じ方向向いて、いろいろな思いがある中でチームがひとつの方向向いてやったと思います」と勝因にチーム全員が勝つことにこだわってやってきた成果を挙げていた。

 準決勝の対戦相手は昨年の準々決勝で0-6で大敗している富岡高。昨年は初の8強進出を果たし、どこか浮かれた雰囲気のまま準々決勝を戦ってしまい、大敗を喫した。福島制覇を掲げてスタートした新チームは新人戦でまさかの地区大会敗退。その後もなかなか結果を残すことができなかった。自分本位なプレーをする選手もいて、甘さのあったチームはスタッフから「子どものサッカー」と厳しく指摘を受けてきたという。ただそこから個々が意識を変え、まとまりのあるチームになったという実感がある。鈴木順は「自分たちのやりたいことやっていたのに比べたら、ちょっとずつ大人のサッカーに近づいてきた。(準決勝では)スタートで出る人、ベンチにいる人、応援してくれる人、OB、保護者といろいろな人がいる中で感謝の気持ちを忘れてはいけない。勝って頂点を目指したいです」と誓った。

 小田監督は「4つに入ったらトップも見えてくる。それをどれだけウチの選手が本気で考えられるか。それが一番のポイントじゃないかと思います。口では言っているかもしれないけれど、内心満足しているヤツがいたら難しい。みんながそうなれるか」。昨年の反省も活かして全員が本気で勝つための努力をして、準決勝で富岡にリベンジする。

(取材・文 吉田太郎)

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