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伝統校対決で会心の勝利も、「古河一らしくない」緩みと失点:茨城新人戦

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[1.24 茨城県新人大会準決勝 水戸商高 1-2 古河一高 鹿島ハイツ3]

 79年全国高校総体優勝の水戸商高と78年度、80年度全国高校選手権優勝の古河一高。高校日本一になった歴史を持つ伝統校同士が対戦した平成26年度茨城県高校サッカー新人大会準決勝は、古河一が2-1で勝ち、決勝へ進出した。

 試合後、新人大会前回王者・水戸商を撃破した古河一イレブンに、OBでもある永岡覚監督から厳しい言葉が投げかけられた。ピッチ上で行われた緊急ミーティング。選手の表情から、試合直後に見せていた笑顔は完全に消えていた。「最後のところは古河一らしくない。私はOBですけれども許せないです。子どもたちに伝えておかないといけない内容。みんなで心ひとつにしてやらないといけないのに。気を抜くというのは私の中では許されない」。2点リードして迎えた後半アディショナルタイム、油断で生じたミスから水戸商FW石塚大輝(1年)に決められて1点差。それまでの80分間は「それしかない。他の武器がない」(永岡監督)という一生懸命なプレーで守り抜き、2ゴールで強敵を突き放したが、指揮官が「(2点リードで)勝ったと思っちゃうこと自体がおかしな話」と指摘した終盤の油断によって決勝進出の喜びは消し去られた。

 古豪・古河一は今大会で8年ぶりとなる新人大会タイトルに近づいた。前日の準々決勝では昨秋の選手権予選準優勝の鹿島高に2-1で逆転勝ち。そしてこの日は昨年度の茨城県内2冠王者・水戸商の攻撃を食い止めた。正確なキックとスピードのあるドリブルを繰り出すMF谷田部晶(1年)や連動した動きで背後を突いてくるFW鈴木陽哉(2年)、FW川上達也(1年)ら水戸商の攻撃に苦しんだが、粘り強い守りで0-0のまま試合を進めていく。

 そして古河一は、俊足MF鈴木大樹(2年)やアグレッシブなプレーが目を惹いたMF中山元稀(1年)、MF中村玲央(2年)の仕掛け、また正確なキックを蹴り込むMF石川恵吾(1年)からのセットプレーで攻め返してビッグチャンスをつくると、後半2分に先制点を奪う。石川のパスで左サイドを抜け出した中山が中央へラストパス。FW宇都木智也(1年)のシュートはブロックされたが、こぼれ球を鈴木大が押し込んだ。

 水戸商は8分に2人を入れ替えて攻撃をペースアップ。16分にはプレスを掻い潜ってボールを動かしてMF岡野将也(2年)が右足ミドルを放ち、19分には右クロスから再び岡野が左足シュートを放った。だが、CB松村航輝主将(2年)を中心に反撃を凌いだ古河一は21分、宇都木のパスで抜け出した中山がGKとの1対1から決めて2-0。最後を除けば内容良く準決勝を突破したが、「気の緩み」から生まれた1失点は古河一の反省材料となった。

「頑張るサッカーというのはね、気を抜いたらダメだと思う」と永岡監督。準決勝終了2時間後に行われた決勝では選手たちも意地を見せた。連戦の疲れもあったか、足が止まり、水戸啓明高に点差を広げられたが、それでも選手同士で言葉をぶつけ合い、ハードワークから反撃し続けるなど古河一は最後まで諦めることなく戦い抜いた。結果は1-5の敗戦だったものの、最後まで“らしさ”を見せたイレブン。どんな状況、展開になっても、この日の反省はもう繰り返さない。

(取材・文 吉田太郎)

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