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苦戦強いられた日本高校選抜、渡邊凌V弾で静岡県ユース選抜振り切る

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[3.8 ヤングサッカーフェスティバルU-18の部 静岡県ユース選抜 0-1 日本高校選抜 エコパ]

 次世代を担う若者の育成を目的に行われている「第30回静岡県ヤングサッカーフェスティバル」が8日、エコパスタジアムで開催され、U-18の部では高校1、2年生で構成された静岡県ユース選抜が、3年生中心の日本高校選抜を迎え撃った。試合は後半34分に日本高校選抜MF渡邊凌磨(前橋育英高)が決勝点。日本高校選抜が1-0で勝った。

 欧州遠征メンバー選考の最終段階に入っている日本高校選抜はこの日、登録21選手全員を起用。4-4-2システムの先発はGK吉田舜(前橋育英高)、4バックは右から久保和己(流通経済大柏高)、渡辺剛(山梨学院高)、大野佑哉(山梨学院高)、澤田篤樹(流通経済大柏高)。中盤は鈴木徳真(前橋育英高)と森島司(四日市中央工高)のダブルボランチで右MFが田場ディエゴ(日大藤沢高)、左MFが旗手怜央(静岡学園高)、2トップには一美和成(大津高)と青柳燎汰(前橋育英高)が入った。

 一方の静岡県ユース選抜はGKが市川泰成(東海大翔洋高)。全て清水ユースの選手で構成された4バックは右から梅村豪村松航太立田悠悟田口雄太の並び。中盤は大西遼太郎(磐田U-18)と河上将平(東海大翔洋高)のダブルボランチで右MFが白鳥速巳(清水ユース)、左MFが森下龍矢(磐田U-18)、そして最前線の加納澪(静岡学園高)のやや後方に立川嶺(磐田U-18)が位置する布陣をとった。

 試合は静岡県ユース選抜の川口敬則監督(掛川工高)が「(選手たちの)気合は入っていたと思うし、『足元救ってやるぜ』というのはありましたね。引かないで前からプレッシングしていけ、ということは常々言っていたので、孤立させることができたかなと思います」と語り、日本高校選抜の大野聖吾監督(大垣工高)は「きょうのゲームが一番入り方も難しいかなという気がしていたんですけれども、午前中のミーティングで言った通りの(悪い)形になってしまった(苦笑)。ノッキングを起こしていましたね。1対11で試合をやらされるような雰囲気でなかなか連動して、チームにならなかった。後半もどちらかというとしっかりと運べなかったので、相手の思っているところにしかボールがいかない状況だった。どこで変化をつけるかというところで、なかなか変化をつけられなかった」と首をひねる展開となった。

 格上相手にモチベーションの高い静岡は、攻め切られる前にボールを奪ってカウンターへと持ち込む。立川や河上が良くボールに絡んでボールを前に運ぶと12分には左サイドから繋いで河上が右足でフィニッシュ。19分には敵陣でインターセプトした大西がそのまま持ち上がり、右前方へラストパスを送る。そして右中間を抜け出した加納が決定的な右足シュートを放った。これは日本高校選抜GK吉田が反応してCKへ逃げたが、静岡県ユース選抜は28分にも立川の突破からDFを切り返しで外した森下が決定機を迎え、アディショナルタイムにも森下のループシュートがゴールを襲うなど4,138人が入った会場を沸かせてみせる。

 一方、渡辺剛と大野が高さを発揮し、GKが好守を見せた日本高校選抜も鈴木中心にボールを動かし、SBの攻め上がりを活かしてチャンスをつくっていた。9分に久保の右クロスを一美が頭で合わせ、14分には森島が一美とのワンツーから左サイドへはたき、旗手が左足を振りぬく。さらに16分には澤田のインターセプトから青柳の放った右足シュートがクロスバーを叩いた。そして36分には左サイドで2人の間を強引に突破した旗手が右足シュート。ワンツーでマークを外すシーンもあった日本高校選抜だが、1日前に集合したチームの連動性はまだまだ。静岡県ユース選抜守備陣が待ち構えているところを強引に攻めてボールを失うなど、いい形で攻撃することができない。

 0-0で折り返した後半、日本高校選抜は前半30分に投入されていたGK脇野敦至(東福岡高)と澤田、一美を除く8選手をチェンジ。4バックは右から小川明(履正社高)、菊池流帆(青森山田高)、熊本の特別指定選手である野田裕喜(大津高)、そして澤田の並びとなり、中盤は前川優太(星稜高)と平田健人(星稜高)のダブルボランチ、右に岩崎悠人(京都橘高)、左に末吉塁(初芝橋本高)、前線は一美のやや後方に渡邊が構える陣容となった。

 静岡県ユース選抜は後半、ショートパスを繋いでグラウンダーで攻める時間を増やす。そして白鳥をDF森岡陸(磐田U-18)へスイッチした直後の後半13分、河上の右FKを上手くDF間へ飛び込んだ加納が決定的なヘディングシュート。だが、日本高校選抜はGK脇野が素晴らしいセーブで失点の危機を阻止する。静岡県ユース選抜は、日本高校選抜のGKが脇野から志村滉(市立船橋高→磐田)へ代わった後の22分にも加納が左足シュート。それでもメンバーを入れ替えても野田、菊池中心に守りの堅い日本高校選抜から1点を奪うことができない。日本高校選抜も岩崎や渡邊凌がボールを引き出し、末吉のスピードを活かしてスペースを突くが決定機をつくることができなかった。

 静岡県ユース選抜は18分に市川を山ノ井拓己(静岡学園高)、23分には加納をMF佐藤諒(藤枝明誠高)、30分には大西と立川をMF鈴木健太郎(清水ユース)とFW加藤衛司嘉(浜松開誠館高)へ入れ替えた。終盤にかけて1点をもぎ取りに行ったが、先制点を奪ったのは日本高校選抜の方。34分、最終ラインの背後を突いた岩崎が「前を見たら凌磨君がいい位置にいた。自分が行くよりも凌磨君に出した方が確実かなと思った」と左サイドの渡邊凌へラストパス。これを渡邊凌がゴールへ流し込んだ。

 日本高校選抜は1-0で勝ったものの、内容的には納得の行くようなゲームではなかった。唯一のプロ選手である志村は「良かった点よりも改善点とか、悪かった点の方が多かったと思う」と首を振る。「ただ去年の経験からすると、今のうちに日本で悪いプレーをして悪いところを分かっていた方が改善できる時間がまだある。去年は日本でいいプレーしていて(課題があまり出ずに)ヨーロッパで壁に当たってしまった。(今回海外遠征へ行くメンバーは)日本である程度通用している選手ばかりだと思う。日本のチームの技術は去年も通用していた。各選手の長所を合わせていけたらいい」。

 大野監督は欧州遠征へ向けて「向こうで本気で戦ってきたいなと思っている。自分たちがいかにチームになって、一人ひとりの良さをチームで引き出してあげられるようにしたい。みんなでどうサポートしながら、一人ひとりの特長を出せるのかやっていきたいと思っています」。この日、いろいろな組み合わせをテストする中で出た課題。残りの準備期間でそれを修正し、個人として、グループとしての良さを出せるようなチームになって世界と戦う。

(取材・文 吉田太郎)

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