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[プレミアリーグEAST]強敵・市船の強さ上回った首位攻防戦、「目標は残留」の鹿島ユースが無敗で首位ターン!

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[7.12 高円宮杯プレミアリーグEAST第9節 鹿島ユース 2-1 市立船橋高 カシマ]

 高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯U-18サッカーリーグ2015 プレミアリーグEASTは12日に第9節を行い、5勝3分で首位の鹿島アントラーズユース(茨城)と勝ち点1差の2位・市立船橋高(千葉)が激突。ホームの鹿島ユースが2-1で勝ち、無敗と首位を守った。

 全18試合の折り返し地点となる第9節で実現した首位攻防戦。鹿島ユースの熊谷浩二監督が「市船は力のあるチームなので、我慢比べと言うか、1点勝負の形になるんじゃないかとは伝えてはいた」と振り返ったように、前半から緊張感の高い、1点を争う攻防戦となった。最前線の186cmFW垣田裕暉(3年)をターゲットにして攻める鹿島ユースに対し、市立船橋も前半は意図的に相手の戦い方に合わせる形でやや長めのボールを使いながら試合を進め、相手以上に獲得していたCK、FKからゴールを脅かす。最終ラインではU-17日本代表のCB杉岡大暉(2年)が前線へ放り込まれてくるボールを良く跳ね返し、セカンドボールも拾っていた市立船橋はMF椎橋慧也主将(3年)が高い位置でインターセプトすることにも成功。16分には、左サイドゴールライン付近で粘ったSB古屋誠志郎(3年)の落としから椎橋が左足クロスを入れ、これをファーサイドのMF高宇洋(2年)が右足ダイレクトで合わせた。

 だが前半半ばを過ぎると鹿島ユースがセカンドボールやボール支配で上回ってペースを握る。MF松浦航洋(2年)やFW吉岡樹利也(3年)が強引に持ち込んでドリブルシュート。そして一回一回入念に時間をかけたセットプレーからあわやのシーンをつくり出した。市立船橋が上手くゲーム運びをすることができなかった前半終了間際にはFK、クロスにU-18日本代表CB町田浩樹(3年)やCB中野純(3年)、垣田が飛び込んで立て続けに決定的なシュート。こぼれ球への反応も相手を上回り、次々とフィニッシュにまで結びつける。だが市立船橋はGK岩佐大輝(3年)のファインセーブやDFの必死のクリアによって得点を許さない。

 それでも、後半立ち上がりにかけてセットプレーからゴール前で相手に合わせられるシーンが続いた市立船橋は後半3分に先制点を奪われてしまった。鹿島ユースは吉岡が獲得した左FKをMF平戸太貴(3年)が右足で入れ、これに垣田らが飛び込むと市立船橋守備陣にミスが出て先制点。ボール保持の時間を伸ばして反撃しようとした市立船橋はワンツーから高が放った右足シュートや古屋の左クロスに右SB真瀬拓海(2年)が決定的な形で飛び込むなどチャンスをつくるが、鹿島ユースは町田ら個の強さを活かした守備と、連動した守備がともに利いていて相手に良さを出させない。

 熊谷監督も「相手のストロングポイントのところを少しケアしながら、やることができたかなと思います。市船は今年、守備だけではなくて攻撃の方もタレントがいますし、非常にいい攻撃のチームですので、まずそこをケアしながらウチの強み(セットプレー)を出していければと。(守備面では)ゾーンで守る所と少し人を見ていくというところの使いわけをはっきりしなければ、市船さんはその辺を上手く突いてくるやり方なので、戸惑いを持たないように守備のところは確認して入ったつもりです」と振り返ったように、鹿島ユースは思惑通りの守備。MF千葉健太主将(3年)も「去年はずっと前から行くことをやっていたんですけど、今年はスカウティングとかもされて研究されてくるのでチームとして幅広くいろいろなことができるようにしていこうと話していて、それが少しずつですけれど、できてきている。守備のところは去年からの積み重ねが大きいと思う。去年から重点的にやっていたので、守備の連係は凄くとれていてボール取るということに関しては良くなってきていると思う」と語っていたが、SBの大里優斗(3年)がポジショニング良く中央でインターセプトし、トップ下の位置で幅広く動く平戸がバイタルエリアでの危険を消すなどスムーズな守りでボールを奪い、リードを守っていた。

 加えて鹿島ユースには、市立船橋の椎橋主将が「サッカーの根本的な戦うというところでは絶対に負けないというシナリオで、そこの強さが『市船の強さ』って言われたけれど、結果負けたので、また改めてそこが足りないと気づかされました。勝負にこだわるアントラーズの気迫とか、ゴール前の攻防とか、自分たちの強みとしてもやっているけれど、負けているんで上には上がいるんだなと。球際とか自分らよりも相手(鹿島ユース)の方が頑張っていたし、勝ちたいという気持ちが自分らよりもあったと思う」と認める戦う姿勢と勝利への意欲があった。熊谷監督も「(サッカーやシステムは状況によって変えたり、合わせないといけない部分があるが)変わらない部分は積み重ねていこうと子供とたちと話しているので、戦うところだったり、勝ちを追及してというところはどんな試合であっても、どんな相手であっても積み重ねていこうと伝えています」と説明したが、チームの軸として積み重ねてきた気持ちの強さがこの日は名門校のそれを上回った。

 そして後半25分、鹿島ユースは大きな2点目を奪う。中央の平戸が絶妙な配球で右サイドへ浮き球のボールで展開すると、SB戸田拓海(3年)がゴールライン際を突破。その折り返しを、中央で構えていた大里がコントロールから左足でゴールへ突き刺して2-0とした。この後はしっかりとセットして守る鹿島ユースに対して、MF原輝綺(2年)や椎橋中心にボールを動かす市立船橋が仕掛ける回数を増やしたが、千葉中心に集中力を切らさない相手の壁は厚い。市立船橋は後半アディショナルタイム突入後の48分にU-18日本代表FW永藤歩(3年)が右サイドを突破し、折り返したボールをファーサイドでフリーだったMF工藤友暉(3年)が左足ダイレクトで押し込んで1点差。だが、再開のキックオフと同時に試合終了を告げるホイッスルが鳴った。鹿島ユースの町田は「1試合通して自分たちが前から行くときとか、後ろでセットして守る時とか使い分けがみんなで上手くできたと思うし、こういう天候の中で上手くできたのは良かった。最後の失点は自分たちの甘さが出てしまったんですけど、それ以外は自分たちの試合ができたと思います。(首位攻防戦で)主導権を握ってできたのは良かった」と納得の表情で勝利を喜んだ。

 鹿島ユースは首位攻防戦を制し、首位と無敗をキープ。2位との勝ち点差を4とした。6勝3分、勝ち点21と堂々の結果で前半戦を折り返した鹿島ユースだが、第一目標は8位以内に入り、プレミアリーグに残留することだ。だがそれはクリアすることが決定的。熊谷監督は「目標は残留なので。『残留したところから、次行きましょう』と言っている。勝ち点20が僕が伝えているラインということを考えれば、ここから少し目標の設定を少し変えていきたいと思っています」と語った。千葉は「きょうで自分も残留のラインはある程度見えたと思う。(後期も)前期やってきたように苦しい試合でも勝ち点を積み重ねることを1試合1試合やっていくことが重要だと思う。1試合1試合やっていくことがチームの良さだと思うので、一戦一戦100パーセントでぶつかっていって勝ち点を積み重ねていきたい」と誓った。

 鹿島ユースは昨年の3位がプレミアリーグでの最高成績だが、“常勝軍団”鹿島の育成組織としての意地もある。平戸は「トップチームはずっと“常勝軍団”と言われてきて優勝してきている。それでも下部組織は日本一になったり、優勝というのはあまり掴めてきていない。昨年Jユースカップで優勝できましたけれど、ノーマークだったので勢いで行けたと思う。今年はJユースで優勝したことで他のチームからも少しは対策立てられたりとかしてきていると思うんですけど、その中で勝っていかないとトップチームみたいに“常勝軍団”にはなっていけない」。まずは自分たちらしく一戦一戦を大事に戦っていくこと。それをやり続けて結果を残し、“常勝軍団”鹿島ユースの礎を築く。

[写真]後半25分、鹿島ユースは大里(左)が追加点。千葉主将が殊勲のDFを祝福する

(取材・文 吉田太郎)
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