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プレミアリーグ開幕直前!東福岡・森重監督「プレミアリーグがあったからこそ」全国2冠チームが身につけた守備意識

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 4月9日、高校年代最高峰のリーグ戦である高円宮杯U-18サッカーリーグ2016プレミアリーグが開幕する。高体連、Jリーグクラブユースの計20チームが参加するプレミアリーグは、各10チームのプレミアリーグEASTとプレミアリーグWESTに分かれて4月から12月までホームアンドアウェー方式のリーグ戦で優勝を争い、各優勝チームが12月にリーグ戦日本一を懸けてチャンピオンシップを戦う。

 11年のスタートから6年目のシーズンへ突入するプレミアリーグ。昨年度、全国高校総体と全国高校選手権で全国2冠を達成した東福岡高(福岡)は11年のプレミアリーグ開幕時からの「オリジナル」メンバーで、13年、15年のプレミアリーグWESTで2位に入っている強豪だ。プレミアリーグを戦いながら年々地力を高め、昨年度(15年4月~16年3月)には総体の県、九州、全国大会、選手権の県、全国大会、そして新人戦の県、九州大会とタイトルを総ナメにした。その東福岡を率いる森重潤也監督にプレミアリーグの意義、そして今季の目標などを聞いた。

―昨年は全国2冠という偉業を成し遂げられました。チームはプレミアリーグを戦いながら成長した1年でもあったと思います。
「去年初戦でボロボロにさせられて(セレッソ大阪U-18に1-6で敗戦)、でも本当にボクらはセレッソさんに感謝の気持ちしかないですよ。あれが0-1だとか、『もうちょっと運があれば勝てたよね』というゲームだったならば、あれほど守備に対して緊張感のあるチームに仕上がっていくことはなかったと思います。今までは攻撃の練習にウェイトを置いていたのが、守備にウェイトを置いて1点取って何とか、少なくとも2点取って守り切れるくらいにという守備を意識しました。だからこそ、久我山と戦った選手権の決勝でも、星稜との準決勝でも、あるいは市船戦でも守備に対するストレスはなかったと思います。『こんなに守備をしなくてはいけないの?』ではなく、それが当然になっていましたから。守備の重要性を分からせることができたのは、プレミアリーグの戦いがあったからこそだと思います」

―短期集中型のトーナメント戦と違い、1年間継続して力を発揮することを要求されるプレミアリーグはより難しい大会という印象です。
「難しいですね。昨年に関しては毎熊(晟矢、高校総体優秀選手)というFWをずっと先発で使っていて、後半途中から餅山(大輝、高校選手権得点ランキング2位)を投入するという、チーム力を落とさずに戦うプランができていた。でも高校総体の決勝で毎熊が怪我をして餅山を先発に回しました。でもその次の選手がなかなか定まりませんでした。先発した餅山が疲れてしまうと、交代出場した次の選手がなかなかそのレベルを維持できずにゲームの途中に締まらなくなってしまうことがありました。グランパス戦で3点リードをひっくり返されたとか、サンガ戦で5点入れながら残り10分で3点取られて、4点、5点取られてしまうんじゃないかという展開になったり、1年間チーム力を落とさず、維持することは難しいです」

―それでも昨年はプレミアリーグWESTで2位。オリジナルの10チームのうち、高体連のチームで残っているのは東福岡だけです。各校、強い世代で昇格しても定着し続けられない中、残留し続けています。
「力が少し落ちるなと感じた年に落ちないでいられるかと言うと、これは大変なことですよ。ウチは毎年危ないと思っていましたけれどね(微笑)。昨年も最終的には2位でしたけれど、(初戦を1-6で敗れた影響によって)勝ち点は持っているけれど、ずっとマイナスを抱えていた。失点は少なくなったけれど、なかなか得点も取ることができない。そこで(特に前半戦は)1-0でもいいから勝ち点を重ねる戦いになったと思います」

―プレミアリーグがスタートしてからの5年間についてどのように感じられていますか?
「『全国リーグが新たに立ち上がる』という話を耳にした時点から『出てみたい』という気持ちを強く持ったのを覚えています。九州の枠は当時ふたつでしたが、プリンスリーグ九州で2位に入って何とか滑り込むことができて安堵しましたね。関西勢、グランパス、サンフレッチェという練習試合しかやったことのない相手と公式戦でできる。そういう環境を子どもたちに与えてあげたいというのが一番でした」

―苦戦したシーズンもありました。
「夢膨らませて臨んだわけですが、なかなか上手くいかなかったですね。あの時はレギュレーションも交代5名、登録も16名という中で良く足を攣る選手がいました。要は個の質が違うから、寄せても剥がされ、寄せても剥がされ組織的にも守れない。J下部のトップトップのところに振り回されて自分たちのやりたいサッカーをさせてもらえないですし、ボールを奪って出て行くだけの体力が残っていないし、勇気も持てていませんでした。ウチは本来攻撃的なチームですし、攻撃の練習に多くの時間をかけている。ところが、リーグ戦では守備ばかりの試合が続いて、高体連の大会になると、相手の戦い方も変わって来ますし、難しいものがありました」

―その中で東福岡も変わってきたという印象です。
「サッカーを変えるということではなく、自分たちのサッカーを取り戻すというか、強い相手にも貫けるものを身に付けようという方向性が明確になりました。まず『走れなければ、何もないだろう』という取り組みがスタートしました。その上で、基礎体力だけでなく時間(を使う駆け引き)の部分も磨くことを意識していきました。それはプレミアリーグの経験があったからこそ見えたテーマですね。今の高校年代の中で東福岡高校のサッカーというのを目指し、それがようやくやれるようになったのは2位になった3年前の代からでしょうか。(松田)天馬(現鹿屋体育大)とかもウチに来てくれて、ウチらしいサッカーをプレミアの舞台でも少しずつ出せるようになっていったと思います。東福岡高校というチームのレベルがちょっとずつ上がっていった5年間だったという手ごたえはありました」

―13年には流経大柏高がチャンピオンシップを獲得しました。高体連のチームが狙えない舞台ではない、と。
「Jでなくても高体連でもそういうところが狙えるという意地というか、プライドもあります。でも、本当に厳しいリーグですから。流経大柏さんがチャンピオンシップを獲った時はウチも『この試合勝っていれば』という惜しいところまでは行けていましたからね(最終結果は2位)。ただ、簡単ではないですよ。そのとき、そのチーム、そのコンディション。そういったものがうまくいったときに狙えないことはないとは思っています」

―高体連の代表としてJクラブユースに負けられない部分もあると思います。
「ボクらはそこに負けないようなサッカーをやっているし、やろうとしている。高体連でもこれだけのチームがある。J下部にも負けない、指導者もそうだし、ハード面もそうだし、サッカーの質もというところをウチはアピールしたいですね。高体連にはメンタルの部分が鍛えられる選手権というのもあるので、総合的に学んで次のカテゴリーに送り出すことができているんじゃないかなと思っています」

―プレミアで戦いたいと入学してくる選手も増えているのでは?
「個人的な意見で言うと、もっと浸透してほしいですね。ホームゲームで中学生かな、小学生かなという子も見に来てくれるけれど、子供たちにはまだこのリーグで戦いたいという気持ちは少ないのかなと思います。同じ埼玉スタジアムでチャンピオンシップが1万2000人なのに対して、選手権では5万4000人という観客が埋まるのを見ると、まだまだ知れ渡っていないのかなと思います。サッカーのレベルという意味では高校サッカー選手権よりも上でしょう。また、年間を通しての戦いになると、途中ケガする選手もいる。次、誰だという意味で選手層も厚くしていかなければいけないし、我々はプロではないので、チームをつくり上げても一年後にはなくなってしまう。その繰り返しの中でまず目標としては降格しないこと。このリーグでサッカーを経験することは非常に大きいと思います」

―昨年は優勝したガンバ大阪ユースに2勝して2位。改めて今季の目標については?
「昨年はガンバに2勝した一方でセレッソとトリニータに2敗しています。選手権予選のあとで難しさもありましたが、ここでトリニータに勝ったらというところで勝てなかったり、最後の大一番で勝てなかったのは、昨年のチームの力だったのかなと思います。(優勝ではなく)まず目標としては降格しない。プレミアは絶対維持ですね」

(取材・文 吉田太郎)

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