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聖和学園がこだわる技術、今年も全国沸かす

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 全国高校サッカー選手権に3度出場し、いずれも初戦突破しているが、3回戦へ進出したことは一度もない。全国舞台でインパクトある結果を残している訳ではない。だが、高校サッカーファンの多くは聖和学園高の名を聞けば、共通のものを思い浮かべるはずだ。「めちゃくちゃ巧い」「格好良い」“東北のドリブル軍団”。03年創部の新鋭校はその磨き抜いた技術、独自色の強いサッカースタイルによって全国で注目される存在となった。

 昨年度の全国高校サッカー選手権は聖和学園のサッカーが大きくクローズアップされる大会になった。“セクシー対決”と期待された野洲高との1回戦はニッパツ三ツ沢球技場の入場チケットが完売するほどの注目度。その中で聖和学園は自陣からドリブルでボールを運び、コンビネーションで局面を打開し、ゴールを量産していった。結果は7-1という衝撃的な勝利。CB小倉滉太主将(3年)は「反響がありました。『見に行ったよ』、と地元の友だちからもメールが来ていた。今年は去年以上のインパクトを逃したいですね」。今年は三ツ沢ではなく、全国大会準決勝、決勝が行われる予定の埼玉スタジアム2002に集まった観衆をそのテクニックで沸かせる。壮大な目標を持って“ドリブル小僧”たちは日々のトレーニングを重ねている。

 今や、九州からもそのサッカーに憧れて東北・宮城県の同校に入学してくる選手がいるほど。周囲からは一線級のドリブラーたちが集まっていると思われているようだが、現実は違う。中学時代に注目されていた選手や高い身体能力を持っている選手はいない。チーム方針として県外選手のスカウティングまではしておらず、基本的には「中学時代もドリブル中心のチーム、カナリーニョFCでやっていて。よりいっそうドリブル極めたいと思って聖和学園に来ました」と語るFW西堀駿太(3年)のように、挑戦心を持って集まった選手ばかりだ。

その選手たちが3年間かけて地道に技術トレーニング。試合で失敗もしながら技術を極めていく。加見成司監督は「能力がないから足元を徹底しなければいけない。大化けする年代じゃないですか、この年代って。気持ちとか、意識とか変わってくればいくらでも変わってくると思っている」。全国大会で観衆が息を呑むほどの技術を身に付けるには、並大抵の努力では到達しない。「技術って努力しなかったら絶対に身につかないんで。(能力を言い訳にしている)その人達よりも数倍努力してその技術を身につけてサッカーをやっている」(加見監督)。どこよりもこだわってボールを蹴り続けることで変わる瞬間が来る。MF片岡潤也(3年)は「ボールを触った分だけ上手くなれる。朝から晩までずっとボール触っていて。中学校よりもいっぱい触っているんで、だんだん上手くなっている」。相手が警戒していてもドリブルで剥がし、逆を取り、ワンツー、スルーパスで崩してゴールを奪う華麗なサッカーは努力の数によってもたらされている。 

 聖和学園は創部3、4年目の頃からアスレタ社のユニフォームを着用するようになった。加見監督は「アスレタを使わせてもらうには、それなりの覚悟をもってやらないといけないとボクは思っている。身に付けるものってプライドもってもらいたいし、アスレタ着ているならこだわりをもってほしい」という。かつて、ブラジル代表チームのオフィシャルブランドだったアスレタは58、62、70年と3度世界の頂点に立った。アスレタロゴの頭上に輝く3つの星は、セレソンがアスレタを身にまとい、世界を制した回数だ。アスレタのユニフォームをまとったカナリア軍団が圧倒的な技術でボールを支配し、ゲームをコントロールして大差で勝利した。「歩いてやるサッカーがいいですね。ゆっくり歩いてやるサッカーをやりたいですね」(加見監督) 。最強時代のブラジルのように、聖和学園も技術でパワーやスピードを制す志がある。

 現在はまだまだ課題が多い。今年の全国高校総体宮城県予選では準決勝敗退。ゴール前で守りを固める相手に対し、それでも崩して得点を奪い取るようなレベルに達していなかった。下位に位置しているプリンスリーグ東北でもリードされ、急いで攻めたところでボールを失ってしまっている。結果が出ないから自信がない。自信を持ってプレーするまでの技術レベルに達していないからミスも起きる。ミスを怖れてという悪循環の中にいる。

 片岡は「技術レベルが足りなかったりするんでもっと練習して結果がついて来るように」と指摘する。また加見監督は「今まで勝ってきているときの代はみんな練習しています。もっと夏はボールを触らなければいけない」と口にした。もっともっと練習し全国で観衆を沸かすチームに。理想はどこからでも点が取れるチームだ。小倉は「今はズバ抜けた選手はいないですけど、みんなとまとまっていけば先輩と違うサッカーができる。去年の(10番)谷田光さんとか個で行ける選手はいない。でもチーム全員でという面ではいい。自分らのペースに持ち込んで、最後侵入とかしていきたい」と語り、西堀は「先輩たちが残してくれたことは大きい。自分たちも下に残していかないといけない。先輩たちを越えていかないという思いがある」と意気込んだ。聖和のプライドを持って練習し、こだわり抜いた成果を秋、冬に披露する。

(取材・文 吉田太郎)
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