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[関西U-16~Groeien~]「小手先の技術だけでは野洲と名乗れへん」最終節10発の野洲は戦う姿勢、堅守も磨いて驚きを

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[8.26 関西U-16~Groeien(育てる)~2016第9節 野洲高 10-3 奈良育英高 伊勢ヴィレッジA]

 関西地域の強豪10校が長期にわたるリーグ戦を通して、U-16選手の育成および指導者のレベルアップを図る「関西U-16~Groeien(育てる)~2016」は26日に最終節を行い、野洲高(滋賀)対奈良育英高(奈良)戦は野洲がFW片岡海斗の5ゴールなどによって10-3で大勝した。

 1勝7敗で迎えた最終節。野洲の長谷川敬亮コーチは「小手先の技術だけでは野洲と名乗れへん、と。ミスを怖れずに最後やり切らせよう」と選手たちを送り出したという。その野洲は「最終節っていうことで、自分たち負けも多かったので立ち上がりからみんなで点を取りに行こうと思っていた。自分はゴールを意識してパスを受けることを意識していました」という片岡が5得点。互いに守備の軽さや判断を欠いたようなシーンも多い展開となったが、野洲は2桁得点を挙げて16年の「関西U-16~Groeien(育てる)~」を終えた。

 前半6分、野洲は左SB木村皓介のスルーパスで抜け出した片岡が右足で先制ゴール。9分には1タッチパスでの崩しから最後はMF浦谷僚志が鮮やかにゴールを破る。奈良育英も15分に司令塔のMF北中臣良のスルーパスで右中間を抜け出したFW山川智也が右足シュートを決めて反撃する。

 だが野洲は24分、俊足MF濱田樹のパスを左中間深い位置で受けた浦谷が上手く角度をつけた左足シュートで決めて3点目。33分、35分にはこの日駆け引きの上手さや1本のパスで局面を変えるなど最も“野洲らしさ”を見せていたMF石井立人のアシストから、「自分の中では相手が来ていても自分で前向いたり、両足でシュート打てるのは結構武器かなと思っています」という片岡が鋭い抜け出しや切り返しから連続ゴールを奪う。石井や浦谷が攻撃を組み立て、再三濱田が左サイドから仕掛けるなど攻める野洲は40分にも相手の連係ミスを突いた片岡がこの日4点目。奈良育英は佐藤幸三コーチが「全くダメ。相手の状況を見ていない。ボールばかり見るから判断できていない」。ゴール前で相手の切り返しに不用意に飛び込んでかわされ、距離を離したところで自由を与えてしまうなど、後手後手のプレーが続いてしまう。攻撃面でもチャンスをつくっていたが、慌てて放ったシュートを阻止されてしまうなど噛み合わなかった。

 後半開始から5人を入れ替えた野洲は19分に片岡が切り返しでDFを外して出したラストパスをFW若子内祐吾が決めて7-1。後半、攻守おいてに前への勢いが出た奈良育英もMF塩貝泰盛のミドルシュートで1点を返したが、野洲は22分にも若子内のスピードに乗ったドリブルから片岡がゴールを破る。30分にはMF鈴村健志朗がDFを振りきってそのまま左足で9点目を奪った。奈良育英はMF藤田爽太朗の右クロスをFW松本祥が頭で叩き込んで3-9。奈良育英はさらに得点を重ねるチャンスがあったが、活かせず。一方の野洲は43分にも片岡のパスを受けた若子内が左足ループシュートを決めて大台に乗せた。

 野洲の長谷川コーチは「10年前に優勝しましたけれど、あの時よりも全国のレベルは凄まじく上がっているので、そこで一石を投じられる野洲サッカーというか、現代のサッカーのニーズに合わせて、そこに野洲らしさを肉付けしていけるか」。全国的に技術力の高い選手は間違いなく増えていると感じている。その中で野洲の選手たちは野洲に入学し、そのサッカーに接していることで満足するのではなく、もっと高い意識を持って成長して試合で表現しなければならない。「いいところばかり見て、頑張らない」。OBの日本代表MF乾貴士からも指摘されている部分だというが、恵まれた環境の中で考え、悩みながら成長することができるか。

 今回の「関西U-16~Groeien(育てる)~」9試合の総失点は45で1試合平均5点。奪われてはいけない展開でボールを簡単にロストしてしまう。切り替えも遅い。野洲らしさを出すことはもちろんだが、戦う部分などでの課題、危機感を長谷川コーチは感じたという。ゴールを目指すという部分では結果を残した最終節だったが、戦う部分、またサッカー理解の部分はまだまだ。片岡は「一人ひとりが最初の頃よりも試合に臨む気持ちとか、点取りに行く気持ちとかゴールに向かう姿勢が強くなったと思います。でもまだまだ」。野洲はこれまで通りにテクニック、駆け引き、オフ・ザ・ボールの部分にこだわるが、それだけでは差がつきにくい時代。現代のニーズに合わせてやるべきこともある。石井が「まだみんながちゃんと分かっていないと思うので、そこはそういうプレーをしないといけないとか、もっとみんなが理解しないといけない」と話したように、「上手いだけじゃない部分」を磨いて、全国トップを目指す。

[写真]前半6分、野洲は片岡が右足で先制ゴール

(取材・文 吉田太郎)
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