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[プレミアリーグEAST]“北の名門”に新たな歴史!細部にこだわり、年々強さ増してきた青森山田が初優勝!

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初優勝を喜ぶ青森山田高イレブン

[12.11 高円宮杯プレミアリーグEAST第18節 FC東京U-18 0-1 青森山田高 FC東京小平グラウンド]

 高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯U-18サッカーリーグ2016 プレミアリーグEASTは11日、最終節を行い、首位・青森山田高(青森)と勝ち点1差の2位・FC東京U-18(東京)との優勝を懸けた直接対決は、千葉内定MF高橋壱晟(3年)の決勝点によってアウェーの青森山田が1-0で勝った。首位を守った青森山田は、初優勝。高体連のチームとしては13年の流通経済大柏高(千葉)に続いて2校目となるプレミアリーグEAST優勝を果たした青森山田は、今月17日に埼玉スタジアム2002で開催されるチャンピオンシップでプレミアリーグWEST優勝のサンフレッチェ広島ユース(広島)と戦う。

 Jクラブユース勢や高体連の強豪校とのホーム&アウェー計18試合の過酷なリーグ戦。関東でのアウェー戦では本州最北端の青森から9時間、10時間かけてバスで移動し、戦いを終えるとまた同じ時間をかけて地元へと帰っていく。来季、流経大柏がプリンスリーグ関東へ降格することで、11年発足時の10チームから残留し続けているチームは青森山田と清水ユースだけ(FC東京U-18は一度降格して復帰)というプレミアリーグEASTで成長を続けてきた“北の名門”が、ついに頂点に立った。

 青森山田の黒田剛監督は「サッカーはチーム力であったり、みんなのモチベーションであったり、24時間365日をどのように過ごしてきたか、どのように取り組んできたかということによっても、ピッチ外の勝負に勝つことによっても、ピッチの勝負の明暗は左右すると思っている。雪国の辛い思いも持ちながら、それがピッチで表現される。そんな思いのあるチームにして、高体連のチームをリードしていかないといけないという責任がある。(今回の優勝は)全国の高体連にとっても励みになると思う」。そして主将のMF住永翔(3年)は「ここに来れていない部員に、『俺たちにも埼スタ行かせてくれよ』と言われてきたので勝てて良かったです」と語り、深夜に帰還する予定の青森で待つチームメートたちの期待に応えられたことを心から喜んでいた。

 優勝をかけた直接対決の大一番。引き分けでも優勝の決まる青森山田だが、引き分け狙いなど頭の中にはなかった。「『過去最高のモチベーションで行け』と言っていたし、ここでやれなかったら何のためにやってきたのか。過去17節やってきた積み上げの上に、こんな素晴らしいステージでできる。これを無にすることがないように、絶対に後悔することのないようにと送り出しました」と指揮官からピッチへ送り出された選手たちは、勝って優勝を決めるために、立ち上がりから気迫溢れる戦いを見せる。

 前線からプレスを掛けてFC東京に自由なパスワークを許さない。それでもセカンドボールを収めて攻撃するFC東京は少しでもプレスが甘ければチャンスをつくり出す。12分にはMF生地慶充(3年)の右クロスからFW内田宅哉(3年)が右足ダイレクトボレー。27分、44分にはいずれも右サイドのパス交換から斜めに切れ込んだ内田が決定的なラストパスをPAに入れた。

 だが、青森山田は来季FC東京へ加入するU-19日本代表GK廣末陸(3年)やCB橋本恭輔(3年)、CB小山内慎一郎(2年)が中央の攻防で決して譲らない。また、逆サイドから入ってくるラストパスを右SB小山新(3年)と右SH嵯峨理久(3年)、左SB三国スティビアエブス(3年)と左SH檀崎竜孔(1年)がしっかりケアして決定打を打たせずに阻止し続ける。加えて1トップのFW鳴海彰人(3年)や嵯峨がカウンターから一気にFC東京DFラインを強襲する怖さも見せていた青森山田は、前半を0-0で折り返した。

 後半、FC東京は執拗にサイドから仕掛けてその局面を破る回数を増加。だが、黒田監督から「2、3m距離を離されてしまうと色々なことをされてしまうので、1.5mくらい。相手のすねを蹴れるくらいの距離でついていけと」いう指示を受けていた青森山田は、個々が強度の高い守りを徹底し、1人かわされても非常に献身的に走り続けていた住永ら誰かが即座にカバーして枠にシュートを打たせない。

 逆に青森山田は苦しい展開の中でも、最前線の鳴海を軸に1チャンスを狙い続ける。14分には檀崎が鮮やかな切り返しから左サイドを破ってクロス。こぼれに反応したMF郷家友太(2年)のシュートがポストをかすめた。一方、1点を奪うことができれば、形勢逆転して優勝へ近づくFC東京は、徹底したサイド攻撃。そして後半24分にFW松岡瑠夢(3年)、31分には前日U-19日本代表のアルゼンチン遠征から帰国したばかりというMF久保建英(中学3年)をピッチへ送り出して1点をもぎ取りにいった。だが、立ちはだかった青森山田の厚い壁。FC東京の佐藤一樹監督は「しっかり要求したことはやっていたと思いますし、そんなに想定外のことが起こったかというと起こっていない。もっとチャンスをつくれないといけない」。互いに待望していた1点は我慢強く戦い続けた青森山田が奪い取った。

 後半40分、青森山田はPAやや外側でこぼれ球を拾った交代出場FW佐々木快(3年)が強引にPAへ切れ込んで相手DFのファウルを誘い、PKを獲得。大仕事をしてのけた佐々木快がガッツポーズを何度も繰り返す。そして、重圧のかかるPKをエース高橋が右足で決めると、雄叫びを上げながらベンチの控え選手たちの下へ駆け寄った10番高橋を中心に歓喜の輪ができた。優勝するためには2点が必要となったFC東京はここからもう一段階ギアを上げることができない。一方、各選手が声を出し続け、全く集中力が途切れない緑のユニフォーム。4分間のアディショナルタイムを含めて戦い抜いた青森山田が1-0で勝ち、1,100人の観衆の前で初優勝を決めた。

 選手権青森県予選で20連覇中、同県での公式戦連勝は300を越える歴史を持つ伝統校・青森山田にとって初のプレミアタイトル。住永は「青森山田にとって初というのも驚きですし、それを自分たちが達成できたのも今後の自信になりますし、こういう経験があるからこそ、様々なことに対して前向きに捉えることができると思うので、これから選手権でも辛い試合が絶対あると思うけれど、その中でもプレミアの数々のJ下部組織の中でも勝ってきたんだという誇りを胸に戦える」と胸を張っていた。

 昨年、首位で迎えた終盤戦での鹿島ユースとの直接対決に敗れて2位に終わっていただけにその悔しさも晴らす優勝だ。選手たちは悲願のタイトルを奪取した喜びを噛み締めつつ、リーグ戦日本一を懸けたチャンピオンシップへ視線を向けていた。高橋は「一人ひとりサボらずにチームのために戦えたことが勝因かなと思います。凄い最後まで接戦だったんですけど、頂点に立てたのは嬉しかったですし、他の9チームの代表として戦いたいです」と語り、廣末は「まだ東で優勝しただけなんで、次勝たないと意味が無いと思っているので、次勝てるように頑張っていきたい。次勝ったからこそEASTで優勝した意味が出てくると思うので、EASTで勝ったチームの分までしっかり埼玉スタジアムで戦っていきたいと思います」。

 プレミアリーグを戦いながら、年々チーム力を高めている印象の青森山田。「毎年春先言われるのは、自分たちがプレミアの舞台に立てるのも、歴史の中で数々の先輩たちが培ってきてくれたからであって、自分たちが達成してきた訳ではない。伝統を崩してはいけないということを言われてきましたし、その中でも歴史をどんどんいい方向に塗り替えていってほしいと言われていた」(住永)という中で、毎年、24時間365日、細部にこだわって強くなることを目指してきた青森山田。「行きたいと思うだけで行ける所じゃない」(住永)チャンピオンシップを戦う権利を得た“北の名門”が次は埼玉スタジアムで日本一を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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